同じ結果を繰り返さないようチームでミーティングを重ねオーダーメードの培養法を追究。
コラム 不妊治療
同じ結果を繰り返さないようチームでミーティングを重ねオーダーメードの培養法を追究。
チーム医療を支えるプロフェッショナルの一人として、特に体外受精の分野には欠かせない培養士。その活動について聞きました。
チーム医療を支えるプロフェッショナルの一人として、特に体外受精の分野には欠かせない培養士。その活動についてレディースクリニック北浜の奥裕嗣先生と培養士の今井和美さんにお話を聞きました。
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
テーラーメード治療をモットーにしている当院では、医師をはじめ、優秀な培養士、看護師らによるチーム医療が欠かせません。なかでも体外受精における培養士の役割はとても重要です。体外受精の妊娠率には、医師が患者さん一人ひとりにカスタマイズする排卵誘発法、採卵や胚移植の技術のほか、ラボ環境のクオリティー、培養士のテクニックが大きく貢献しています。日本では培養士は裏方の存在ですが、海外では体外受精のパイオニアであるロバート・G・エドワーズ先生など、生殖医療の分野で世界的に有名な方の多くが培養士です。
私は3年間アメリカで培養技術を学んだ経験から、培養士とのフラットなコミュニケーションを大切にしています。たとえば、留学先の施設で行われていた「ブラッドミーティング(体外受精の時に毎日の採血と卵胞データを参考に注射量を決定する会議)」を参考にし、特に体外受精の妊娠判定がマイナスの人については、週1回、培養士の意見を取り入れて治療の見直しを行っています。
また、スキルとキャリア向上のため、ラボの研究にも力を入れ、その成果を学会で発表する機会も設けています。何よりも培養士として大きな仕事をしているという誇りとやりがいをもって活躍してもらうことが、患者さんの妊娠率向上につながっていくと考えています。
Q1 培養士になったきっかけを教えてください。
Q2 お仕事の中で心がけていることなどありますか?
特に体外受精を繰り返している患者さんに対しては、スタッフが意見を出し合って方法の見直しを行い、同じ結果を繰り返さないように心がけています。たとえば、当院では3種類の培養液を使い分けています。そこでそれぞれの受精卵にもっとも相性のいい培養液を探し出すことも重要な役割です。
さらに近年、ラボ全体で力を入れているのがタイムラプスによる独自データの収集・研究です。タイムラプススコアをもとに胚移植あたりの妊娠率や妊娠継続率、流産率を検討していくなかで、妊娠継続が可能な胚のセレクションにつながる新しい発見があります。さらにこれを深く掘りさげて妊娠率の向上につなげたいと思います。
胚培養にやさしい「タイムラプスインキュベーター」や、高速振動で卵子への負担が少ない「ピエゾイクシー法」など、最先端の技術を導入したラボ環境で業務を行っています。
Q3 培養士さんは受精卵で男の子と女の子を見分けられるのですか?
私たちにもまったくわかりません(笑)。卵子はもともと女の子になるX染色体でできていますが、精子には女の子になる「X精子」と男の子になる「Y精子」があり、どちらの精子が入るかによって性別が決まります。顕微授精の時は、一番いい精子を優先しますので、もちろん精子を選ぶことはできませんし、今のところ確実に見分ける方法もありません。ちなみに受精を行う時が一番緊張します。絶対に失敗できませんから、全神経を集中して実施しています。
培養士の今井和美さんからメッセージ
患者さんからお預かりした大切な精子、卵子の受精・成長をサポートしています。
生命のはじまりに立ち会える、やりがいのある仕事ですが、その分プレッシャーも大きく難しさを感じることも。一人でも多くの患者さんが赤ちゃんを授かれるよう、スタッフで力を合わせ、日々研鑽しながら全力を尽くしています。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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