ホルモン補充周期に抵抗が…。自然周期でも移植できる?
コラム 不妊治療
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
続さん(32歳)からの相談
▶ホルモン補充周期と自然周期
初めて凍結融解胚移植をするのですが、卵子が17個採卵できたので、新鮮胚移植はせず、おそらくピルを使って生理を早めて移植をするようです。採卵の時にたくさん注射を打って効きすぎたので、正直ホルモン補充するのには抵抗があります。先生は、着床率がいいホルモン補充にしたそうなのですが、自然周期ではダメなのでしょうか?
Doctor’s advice
●ホルモン補充周期は排卵日を調節できるのでスケジュールを立てやすい。
●月経周期が安定していて自然に排卵していれば自然周期での移植もOK。
ホルモン補充周期に抵抗があるそうです。自然周期との違いなど教えてください。
低温期と高温期には約0.3~0.5℃の体温差があります。平熱が36・3℃であれば、36・6~36・8℃くらいが高温期の体温になります。通常、生理開始日から12~16日で排卵が起こり、そして排卵後、2~3日で低温期から高温期に移行していきます。
うまく高温期に移行しない原因は3つほど考えられます。①そもそも卵胞が発育していないため、排卵が起きていない。②卵胞は発育したが、排卵がうまくいかず、高温期に入らない。③卵胞は発育して、排卵もしているが高温期に入らない。このいずれかになります。おまめさんの場合は、クロミッドⓇで卵胞を発育させ、HCG注射で排卵を促し、またクリニックでおそらくエコー検査もされているようですので、原因は③にあたると考えられます。HCG注射が2回から1回になっていますが、これは普通のことなので、注射の回数が減ったこととは関係ないと思います。
高温期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)という、基礎体温を上げ、子宮内膜に厚みをもたせて維持するホルモンが分泌されるのですが、おまめさんの場合、このプロゲステロンの分泌がうまくいっていない可能性が考えられます。これは「黄体機能不全」といって、日常生活でのストレスや生活習慣などによっても左右されるものです。
自然周期での移植は可能でしょうか?アドバイスをお願いします。
月経周期が28〜31日とのことですね。おそらく排卵していると思いますので自然周期でされてもいいと思います。基本的にホルモン補充周期でも自然周期でも、移植ができれば成績は変わりません。ただし、繰り返しになりますが、自然周期は自然に排卵していることが前提で、月経不順の人にはホルモン補充が不可欠です。
移植法についても凍結融解胚移植は適切な選択だと思います。当院は治療を完遂する目的で、体外受精が初回の人に限って新鮮胚移植(採卵時のE2が2500pg/ml以下でOHSSのリスクがなく、移植法に希望がない人が対象)を行うことはあります。日本は凍結技術が進んでおり、新鮮胚移植はほとんど行われなくなっているのが現状です。結果的にホルモン補充周期の凍結融解胚移植の成績が一番いいということも背景にあると思います。
また近年はタイムラプスの自動解析で、これまで以上に精密な妊娠継続可能胚のセレクションができるようになってきています。若くても移植でなかなか結果が出ない人は、このようなオプションを利用して妊娠率を高める可能性もあります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
≫ 掲載記事一覧はこちら