顕微授精での受精卵の成長が悪く、1個も胚盤胞まで育ちません
コラム 不妊治療
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
さくらさん(39歳)からの相談
▶顕微授精で胚盤胞にならず凍結できません
37歳時に主人の閉塞性無精子症がわかり、精索静脈瘤の手術とTESEにて精子を凍結しました。1回目はアンタゴニスト法で6個採卵、顕微授精で2個は変性し、残り4個は分割停止。2回目はショート法で12個採卵し、顕微授精で9個は分割せず、2個は分割停止。1個は不良胚盤胞で凍結できませんでした。先生には子宮の中のほうが受精卵には環境がいいので、分割胚を移植する方法もあると言われました。これまで1個も胚盤胞になっていないので、次は分割胚で凍結するほうがよいのか迷っています。胚盤胞を凍結して移植するのが一番妊娠率が高いと聞いていたのですが、分割胚移植はどうなのでしょうか。今は次の採卵に向けて、毎日40分運動し、メラトニンを摂っています。
Doctor’s advice
●初期胚移植はこの先育っていくかわからない状態で戻すので、妊娠率は下がります。
●排卵誘発を高刺激から低刺激に変えることで、卵子の質が変わることがあります。
凍結融解胚盤胞移植と初期胚移植では、やはり妊娠率は変わってくるのでしょうか。
受精をして、初期の段階では良好胚だと思っていても、そのまま順調に育って胚盤胞まで行くかどうかは、その段階では見分けがつきません。それは子宮の中に戻しても同じことです。良好な初期胚を選んで子宮に戻しても、実際に育つかどうかはわからないのです。胚盤胞というのは着床直前の状態ですから、培養器でそこまで発育した胚を移植すれば着床の成功率は高くなります。
受精した胚の胚盤胞到達率は、通常30~50%です。しかし、何度か試みても胚盤胞まで育たない場合は、初期胚を子宮に戻すことはあります。培養技術、環境は進歩していますが、体内環境とまったく同じかといえばそうともいえませんし、やはり体内のほうが適した環境だという可能性もあります。年齢が高く、採卵数が少ない場合や、何度試みても胚盤胞まで育たないうちにダメになってしまう場合などは、あえて初期胚を戻して結果を待ちます。さくらさんも2回顕微授精をしているものの胚盤胞まで育たず、移植ができないことが続いているので、初期胚を戻すことを提案されたのでしょう。
では初期胚で戻すほうがいいですか?
初期胚での妊娠率は胚盤胞に比べるとやはり下がります。その前に、卵子のつくり方を変えてみるという方法があります。さくらさんはアンタゴニスト法とショート法という高刺激な誘発方法で採卵してきています。これまでのやり方で胚盤胞まで育たなかったのであれば、刺激を少し弱くして、クロミッド®にHMGの注射を加える中刺激、または思い切ってクロミッド®のみの低刺激に変えてみてもいいかもしれません。飲み薬だけで2個から3個の卵子をつくる方法にすれば、卵子の質が変わり胚盤胞まで育つ可能性もあります。試してみる価値はあるのではないでしょうか。
ほかに卵子の質を上げるためにできることはありますか?
さくらさんは、メラトニンを服用しているとのこと。メラトニンは睡眠の質を上げる物質で、抗酸化作用もあるので、生殖細胞が活性化されるのではないかと考えられています。一般的に卵子の質を上げるには、体を冷やさないこと、ストレスをためないことが大切といわれます。食事は高たんぱく、鉄分、ビタミンEがよいとされているので、しっかり摂るように心がけましょう。漢方を処方されることもあると思いますが、漢方自体が直接卵子の質を上げるということはあり得ません。多くの漢方は血行をよくしたり、代謝をよくするという間接的な効果で使われます。
また、最近話題になっているのは、ミトコンドリアを活性化すると卵子の質が上がるということです。早寝早起きをして、栄養バランスのよい食事をとり、適度な運動をすると活性化するそうです。月並みですが、規則正しい生活が大切ということですね。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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