27歳で採卵を繰り返すも、結果が出ずに悩んでいます
コラム 不妊治療
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
あかねさん(28歳)からの相談
▶これからどうすれば……
27歳から顕微授精をして1年以上経ちました。男性不妊もあり、精子濃度約140万/ml、精索静脈瘤の手術もしたが効果なし。AMH3.66ng/mlです。1回目はアンタゴニスト法で15個採卵して7個受精、胚盤胞5CCを移植するも陰性。次にショート法で10個採卵して7個受精するも陰性と化学流産。転院して3回目はアンタゴニスト法で17個採卵、10個受精して全滅。これからどうしようと途方にくれています。前の病院に戻ってもう一度ショート法をトライしようかとも考えていますが、今回卵巣が左右9cm腫れてしまい、自然周期のクリニックも気になっています。この年齢で採卵を繰り返していると、もう無理なのかもと落ち込んでしまいます。これからの道を決めるためにもアドバイスをお願いします。
Doctor’s advice
●採卵数よりも低刺激や自然周期で卵胞を成熟させることを心がけて。
●精液の菌体内毒素も不妊の原因に。専門医のもとで精密検査を。
顕微授精を3回して結果が出ていない点についてどのような原因が考えられますか?
移植した胚盤胞のうち、最もグレードが高かった5ABでも陰性で、他周期では5BB、5CB、5CCというグレードですから受精卵の質は真ん中より少し下で、顕微授精をしても結果が出ないのは、やはり卵子側の因子ではないかと考えられます。
ただし、一つ気になる点があります。それは重度の男性不妊。一般的に、不妊治療においては男性側の要因を見過ごしてしまう傾向にありますが、精子や精液に原因がある場合はどんなに頑張ってもいい受精卵ができません。精子の数や運動率だけではなく、たとえば、白血球や赤血球が異常分泌していないか。また、菌体内毒素(エンドトキシン)が高濃度で検出されていないかも検査する必要があります。これは、精子の通り道である精路が細菌感染して前立腺炎など慢性の炎症があると検出される毒素で、卵子に影響を及ぼします。しかし軽度なら症状がない場合も多く、泌尿器科等できちんと検査してもらわなければほぼ見過ごされてしまいます。精索静脈瘤の手術を受けているけれど改善されていないようなので、精液中の毒素や白血球の再検査、そして精路の精密検査を受けることをおすすめします。
排卵誘発法についてはいかがですか?
採卵数を減らすなら、刺激の強いショート法やアンタゴニスト法ではなく、クロミッド®やフェマーラ®中心の低刺激で成熟卵胞を育てるようにすると結果が変わる可能性があります。ショート法はある程度は合っていたかもしれませんが、アンタゴニスト法は少なくともあかねさんには向いていないかもしれません。これは、3回目にアンタゴニスト法で採卵した17個中10個受精して全滅だったということ、そして、左右の卵巣が腫れたということからも明らかです。9cmの腫れは中等症あるいは重症のOHSSです。年齢的にまだ若いので、刺激を強く与える方法は向いていません。薬の反応が強く出すぎて卵巣が腫れ、未成熟卵もたくさん採れてしまう。正常に排卵できているなら低刺激、もしくは自然周期を試してみるのも方法の一つですし、腹腔鏡で卵巣周辺を診て、子宮内膜症や癒着の有無を検査することも有効です。
最後にアドバイスをお願いします。
ご自分に合っていない治療を繰り返して結果が出ないとなると、身体的にも経済的にも負担が大きくなります。通り一辺倒の誘発方法で顕微授精を繰り返すのではなく、精子や精液、婦人科系疾患、腹腔鏡の所見も重要な要因になります。いろいろな引き出しをもっている医師を見つけることが大切ですし、あかねさんが望む結果への近道になるのではないでしょうか。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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