レスキューICSIの胚盤胞だと妊娠率は下がりますか?
コラム 不妊治療
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
もちこさん(38歳)からの相談
▶翌日のレスキューICSIの胚盤胞について
2人目不妊で治療中です。1人目は精子の奇形率が高く、院長から「顕微しかない」といわれ、4年前に顕微授精で授かりました。今回の採卵は3つ採れたうち、1つが非常に状態のよい卵子だったので振りかけをすすめられ、残り2個は顕微にしました。結局、振りかけでは受精せず、レスキューICSIに。レスキューの場合はほぼダメと聞いていたので期待していなかったのですが、意外にも翌日レスキューICSIした卵子のみ5日目胚盤胞で凍結できました。凍結できたのはうれしいのですが、レスキューICSIした胚盤胞というのが気になります。胚盤胞まで育ったのなら、普通の顕微と妊娠の可能性は変わらないのでしょうか。やはり確率は下がるのですか?
Doctor’s advice
●レスキューICSIで顕著に妊娠率が上がったという報告はありません。
●胚盤胞まで育てば、あとは通常の顕微授精と同じと考えていいでしょう。
レスキューICSIとは何ですか? どんな時に行われるのでしょうか。
レスキューICSIは通常の体外受精(振りかけ=媒精)実施数時間後に見て、精子と卵子がまったくくっついていないなど、未受精の可能性がある場合、直ちにICSI(顕微授精)を追加で行う方法です。
このようにレスキューという形をとっている施設もあるようですが、実は当院では実施していません。追加するのではなく、希望する患者さんには最初から体外受精に加え、3個まで顕微授精も無料で同時に行っています。
体外受精を初めて行う場合、1個も受精しなかったら卵子の質はわかりませんよね。受精して発達の状態を見るから採った意味があるわけで、受精しなかったらただ採卵したというだけ。患者さんにとってメリットがないので、このようなシステムにしています。
なぜ、通常の媒精では受精しないのですか?
媒精しても精子と卵子がくっつかない原因ははっきりわかっていません。ほとんどの場合、精子の状態がよければ受精しますが、状態がよくても20例に1例くらいうまくいかないケースがあるようです。
もちこさんは卵子の状態が非常によくて媒精をすすめられたということですが、受精は卵子より精子の状態にかかってくると思います。
レスキューで顕微授精することで、妊娠率は確実に上がるのでしょうか。
レスキューICSIをやったら顕著に妊娠率が上がったという報告やデータはありません。もしそのようなことがあれば、すべての施設で取り入れているのではないでしょうか。
念のために行う意味はあると思いますが、実施する際は注意が必要でしょう。媒精による体外受精をした場合、精子が遅れて入ることもあります。すでに卵子の中に入っているのに、また精子を入れてしまうということも起こり得るので、きちんとした管理下で行うべきだと思います。
胚盤胞まで育てば、あとは通常の顕微授精と変わらないと考えてもいいですか。
通常、レスキューICSIは受精を確認した当日中に行いますが、もちこさんは翌日に行ったとのこと。受精しない卵子を1日おくと卵子の老化が始まってよくないといわれていますが、胚盤胞まで育ったのなら問題はないでしょう。1日遅れでも胚盤胞になる卵子なら、妊娠まで至る見込みがあるということなのでは。
また、レスキューICSIをしたから胎児に奇形や異常が出るということはありません。もちこさんがおっしゃるように、ここまできたら着床や妊娠の過程は通常の顕微授精と変わりませんから、そのまま移植をされていいと思います。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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