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卵の位置が悪いと言われ一度も採卵できず半年。刺激法を変えればいい!?

コラム 不妊治療

卵の位置が悪いと言われ一度も採卵できず半年。刺激法を変えればいい!?

44歳での不妊治療。でも、毎回、うまく採卵できず約半年…。今のままの低刺激を続けて、本当に体外受精にチャレンジできるのでしょうか?

2018.9.5

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1回のチャンスも逃したくない44歳での不妊治療。でも、毎回、左側の卵子の位置が悪く、右側からもうまく採卵できず約半年…。今のままの低刺激を続けて、本当に体外受精にチャレンジできるのでしょうか? いくたウィメンズクリニックの生田克夫先生に伺いました。


 


※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。





アスパラみかんちゃんさん(44歳)からの相談


現在の病院で体外受精を試そうと思い、低刺激で治療をしていますが、毎回、左側の卵子の位置が悪く、無理に採ると出血も多くなるとのことで採卵できません。先生の技術にもよるのでしょうか? ちなみに右側卵巣の時は運悪く前回の卵胞が残っていたり、排卵してしまったりして採卵できず、一度も体外受精にチャレンジできないまま、約半年が過ぎました。また、AMH0.99ng/ml、FSH10.1mlU/ml、LH4.1mlU/mlと、年齢の通りあまりよくない数値です。でも高齢出産は時間がない分、高刺激で卵子をたくさんつくり、そのなかからよいものを凍結保存して使用すると思っていました。もちろん、卵子がたくさん採れても質が悪ければ意味がないことは承知していますが、私のような数値の40代女性は高刺激と低刺激のどちらがいいのでしょうか?


●これまでの治療データ


【検査・治療歴】低刺激で人工授精12回。フォリルモン®P150注射などを毎回3回程度、レトロゾールを3日分程度などを使用。
【不妊の原因となる病名】不明
【現在の治療方針】体外受精(顕微授精も考慮中)
【精子データ】不明






Doctor’s advice


●卵巣の位置によっては採卵が難しい場合も。
●右側からの採卵をメインにした刺激を。
●GnRHアゴニストを試すのもおすすめ。




お話を伺った先生のご紹介

生田 克夫 先生(いくたウィメンズクリニック)


名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。

≫ いくたウィメンズクリニック

毎回、左側卵巣の卵子の位置が悪く、無理に採卵すると出血が多くなるから採卵できないとのこと。採卵が不可能な卵子の位置というのはあるのでしょうか?


卵子の位置というよりは、卵巣自体の位置が悪いのではないでしょうか。
採卵する際には、腟から卵巣へ向かって専用の細長い採卵針を挿して、卵胞液ごと卵子を採取します。この際に、卵巣の位置が悪く卵子が見えにくい場所にあると採卵しづらくなります。また卵巣自体がかなり肥大していたりすると、穿刺側と反対側にある卵子を採ることが難しいという場合はあります。
ただ、卵子が深い位置にあるから出血が多くなるというわけではないと思います。うまく採卵針を刺せず、何度も刺すことで出血が多くなるということはあるかもしれませんが、採れないのでは話になりません。そこのリスクはある程度考えて採卵する必要はあるかと思います。ドクターのテクニックも多少は関係するかもしれません。採卵しにくいものは採らない方針のドクターもいるでしょう。卵巣が他の部位に癒着していて刺しにくいとなれば、その側は採卵しないというドクターもいると思います。
当院でも、腟壁と卵巣の間に多くの血管が走ってしまっていて、採卵針を刺すと確実に血管に穴が開いて危険な場合は、採卵自体できません。また、卵巣の位置が悪くて、腟壁と卵巣の間に小腸が入ってしまっているような場合も、小腸に針が刺さってしまう可能性が大きいのでやはり採卵はできません。
卵巣の位置がずれてしまったり、大きくなったりするのは、体質的なもので、過去の手術による癒着や炎症などさまざまな原因があります。年齢的にもある程度は仕方のないことかもしれません。卵巣の位置を修正する手術などをしても、あまり効果はないと思います。


左側卵巣からの採卵が難しいとなれば、今後の採卵は右側卵巣からがメインになるのでしょうか?


アスパラみかんちゃんさんの場合、右側卵巣の時は運悪く……ということですが、卵胞が育たないということでもないようですね。そうであれば、採れないよりは採れるほう、つまり、右側の卵巣からの採卵をメインに考えるべきでしょう。
そのためには、もう少ししっかりと卵巣刺激をしてみるのも必要かと思います。そして、両方の卵巣の卵胞が育つようにして、採れない左側は無視して、右側卵巣の卵子を採りにいくという感じになりますね。


先生であれば、具体的にはどのような方法があると考えられますか?


たとえば、同じ低刺激でも、レトロゾールを5日間ほど使って、5日目からは毎日HMGを150単位を注射していくとか。いっそGnRHアゴニストの点鼻薬を使って、完全に自分のLH分泌を止め、自然な排卵が起こらないようにしておく。そして右の卵巣からの採卵を試してみるのもいいかもしれません。そして、左側も遅ればせながら卵胞が成熟してくるなら、採卵を試みるのも一つの方法です。


アスパラみかんちゃんさんのような場合、高刺激と低刺激のどちらがいいのでしょうか?


40歳を過ぎた高齢の場合、もともとの卵子の数があまり残っていないので、数よりも質を重視する低刺激法をすすめられることが多いのは事実です。しかし、これは人によって、ある程度はやってみないとわからないところがあります。
今回のように半年間も採卵できていないのであれば、高刺激と低刺激のどちらがいいというよりは、たとえば、アゴニストを使うなど、これまでやっていない方法で刺激することで、今までと違う結果が出てくるのではないかと期待しますね。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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