その痛み、もしかして子宮内膜症?
まとめ 女性の健康
婦人科の病気のなかでも、年代を問わない子宮内膜症。毎月生理痛が重いと思っていたら、実は子宮内膜症だったというのは珍しくないようです。
気づかないままに痛みを我慢したり、だましだまし日常生活を送っているとしたら、長期間治療のチャンスを逃してしまっているかもしれません。
今回は、子宮内膜症ができる原因や子宮内膜症が引き起こす症状などについて詳しく知ることができる記事を集めました。
普段思い当たる症状がないかチェックしてみてくださいね。
なぜかかる? 子宮内膜症が増えた原因とは
子宮内膜症は、今や女性ならよく耳にする病気のひとつになりました。子宮内膜症の患者さんはなぜ増える傾向にあるのでしょうか。
“現在、子宮内膜症の罹患率は10人に1人といわれています。近年とくに増加傾向にあり、その原因は欧米型の食生活やストレス、アレルギーなどにあるとされていますが、一番の原因は晩婚化や少子化など、女性のライフスタイルの変化ではないでしょうか。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには子宮内膜を作る働きがあり、卵巣で卵胞が成熟する際に分泌されます。そのため、妊娠をするとその間新たな卵胞が成熟することはないため、分泌量は低下して病気が進行することはありません。戦前・戦後など昔は多産傾向で女性の妊娠期間は長かったのですが、今は一生に1人子どもを産むかどうかという状況です。それゆえ、子宮内膜症も増えているのではないかと考えられています。
子宮内膜症を早期に発見するためには、定期的な婦人科検診や子宮がん検診が有効です。生理周期が不順だったり、生理痛がひどい人は検診の際に超音波検査も受けることで、卵巣チョコレート嚢胞(卵巣にできる子宮内膜症)などの有無もチェックできます。”
“婦人科に行きづらいという人は、20歳以降に受ける2年に1回の子宮頸がん検診時に医師に相談してみるのもひとつのきっかけになると思います。”
■子宮内膜症の症状が改善しないのはなぜ? 原因と治療方法について
子宮内膜症があるとどんな症状が出る?
では、自覚症状としてはどんなものがあると子宮内膜症の恐れがあるのでしょうか?
“子宮内膜症の症状として最も多いのが強い生理痛です。私の印象としては子宮内膜症の半数以上の患者さんは生理時に痛みを伴っているようです。
生理痛自体は子宮内膜症ではない人でも多少経験されると思いますが、その痛みが年を追うごとにひどくなってくるのがこの病気の大きな特徴です。
また、子宮内膜症になると周囲の大腸などの臓器との癒着を起こすので、子宮を動かすような動作をした時にすごくつらい。生理時だけでなく、性交や排便時にも強い痛みが起こります。”
年々生理時に感じる痛みがひどくなってきたという場合や、生理ではないのに痛むという方は、婦人科で相談してみるのがおすすめです。
“早く発見して早く治療を開始すれば不妊症やがんを防ぐことができるので、生理痛があるという人は、一度レディースクリニックを受診していただきたいですね。すぐに検査や治療を開始せず、最初は相談だけでも構いません。”
子宮内膜症にかかりやすい人の傾向とは
では、子宮内膜症にかかりやすい人はいるのでしょうか。自分がかかりやすいと感じたら、どう気をつけるべきなのでしょう?
“子宮の内側は子宮内膜という組織で覆われていますが、この子宮内膜に似た組織が何らかの原因で、卵巣・卵管や腹膜、腸など子宮の外にも発生することがあり、この病態を子宮内膜症と呼びます。
卵巣チョコレート嚢胞もこの病変の1つで、卵巣に発生して袋(嚢胞)ができ、その中に古い血液が溜まってしまう病気です。
卵巣チョコレート嚢胞を含め、なぜ子宮内膜症になるのかということについては、月経血の逆流や、卵巣組織の一部が何らかの原因で子宮内膜に化生(変化)してしまうという説が有力視されていますが、はっきりした原因は未だ解明されていません。
原因が不明ということは、なりやすい人の傾向を定めるのも難しいのですが、臨床的にみていくと、若い頃から月経痛の症状が強い人、また、家系的に子宮内膜症が多い人は将来的に子宮内膜症になる確率が高く、特に家族性の場合は通常の人に比べて7倍程度罹患する率が高いといわれています。”
“痛みの程度については個人差があると思いますが、不思議なのは病気の進行度と痛みの強さは必ずしも一致しないということです。痛みはほとんどないのに、お腹の中を見たら癒着だらけだった、逆に、痛みは強いけれど、病変としては軽度であった……など。”
子宮内膜症を放置しておくと妊娠しづらくなる
最後に、子宮内膜症をずっと放置しておいた場合には、どんなことが起こるのかについてご紹介します。
“当院で診ている限り、子宮因子の原因で多いのは子宮内膜症と子宮筋腫、それから子宮内膜ポリープも少なくありません。これらは高齢の人に限る疾患ではありませんが、年齢とともに病状が悪化してきている傾向はあるようです。
日本人女性の10人に1人が子宮内膜症で悩んでいるといわれます。これは命にかかわるような悪性の病気ではありませんが、受精から着床まで、妊娠のすべての工程に弊害を及ぼします。進行してくると排卵がうまくいかない、卵胞が育たない、卵管の機能が低下してしまったり。そのために受精さえ妨げられてしまうことも。
子宮内膜症は子宮内腔以外の場所に子宮内膜が増殖してしまう病気ですが、そのうちもっともやっかいなのが卵巣にできる卵巣チョコレート囊胞です。卵巣にできるということは卵管にも影響を及ぼし、炎症を起こして周囲の臓器に癒着してしまう。卵巣も卵管も機能が低下して妊娠が難しくなってしまいます。また、卵巣チョコレート囊胞の人は採卵の時にも注意が必要です。炎症を起こしている所に針を刺すという刺激でより悪化してしまう危険が。ですから、採卵は抗菌薬の点滴をしながら行っていきます。
子宮内膜症があっても妊娠することは可能ですが、なるべく早めに治療をすることが大切。この病気のステージ分類では初期の段階であるⅠ、Ⅱならまだ大きな問題はありません。そのまま放っておいてⅢ、Ⅳと進行していくと、症状がつらくなるだけでなく、妊娠もしづらくなってしまいます。”
“治療に関して、どの方法をとるかはその方の年齢によって異なってきます。まだ若い方だったら、薬物療法や手術など子宮内膜症の治療を優先させることもあります。(中略)薬物による治療は妊娠しないように仕向けていくため、高齢で早く妊娠を望む方にとってはこの方法を選択することは厳しいかもしれません。”
もしも自覚症状があるのなら、早めに婦人科のクリニックで相談してみるのが、将来的に健康を大きく損ねないための対策と言えそうですね。