早発閉経でも妊娠はできる?
まとめ 不妊治療
不妊治療を始めると、カップルそれぞれの体の状態が検査結果の数値で客観的に見えてきます。
なかには、「早発閉経」という言葉をかかりつけ医から聞き、驚いたという方もいるのではないでしょうか。
どんな基準で診断されているのか、治療のうえで早発閉経はどんな障害になるのかについて知っておきませんか?
早発閉経ってどんな状態?
通常は40代後半~50代前半にかけて訪れることが多い閉経。早発閉経とはどんな状態を指し、どんな基準で診断されるのかをご紹介します。
早発閉経はPOIとも呼ばれます。定義は以下のようなものです。
“卵巣機能は30歳を境に少しずつ低下していくのですが、40歳未満の早い時期に月経がこなくなり、閉経と同じ状態になることを早発閉経といい、POFとは異なり、卵子が枯渇し、卵巣機能は不可逆的な状態になっています。日本産科婦人科学会では「43歳未満での閉経」と定義しています。無月経ではないものの月経が不順で、ゴナドトロピン高値、抗ミュラー管ホルモン(AMH)低値の場合には、早発閉経に移行する可能性が高い状態です。”
早発閉経になりやすい人は? 妊娠の可能性は?
早発閉経は不妊治療にとって高いハードルであるようです。どんな人が早発閉経に陥りやすいのでしょうか。
“もともと卵胞の数が少ない人もいれば、ある程度の数をもっていてもその減少が早いという方もいます。
数が少なくなってくる場合、手術で卵巣をかなり切除してしまったケースもあれば、がん治療に伴う薬物や放射線の影響も。あとは自己免疫疾患、ターナー症候群といった染色体異常などの疾患がある人は早発閉経になりやすいといわれています。ただ、多くは原因不明となっているので、予防という点では難しい病気といえるでしょう。”
原因が不明の場合が多いということで、誰にでも可能性はあるようです。妊娠を希望していて「なかなか赤ちゃんができない」という人は早めに婦人科で相談してみたほうがよさそうですね。
次に、早発閉経の場合妊娠が可能かどうかについても知っておきましょう。
“まったく卵子がないという状況であれば自分の卵子を使うことは難しいですから、体の不調を抑えるためにホルモン補充療法をしていくしかないでしょう。ホルモン補充療法はエストロゲンとプロゲステロンを補充して、月経周期と同じようなホルモン状態をつくるもの。それはみかけだけなので、排卵につながるわけではありません。治療が困難で強くお子さんを望まれる場合は、卵子提供を受けるという選択肢もあるかと思います。
FSH値が20~30 mIU/mlとある程度低い方の場合は、まだいくつかの治療を試せる余地があると思います。
体の中のエストロゲンが減ってくると、それを補充しようとFSHが高くなります。ただ、FSHが高い状態というのはなかなか排卵をしないという状況ですから、バランスを正すためにある程度FSHを下げるような形にもっていく治療をすることになります。
そのためのホルモン補充としてエストロゲン製剤のほか、GnRHアナログの点鼻薬を使うことも。このような治療を続けて、生理的に排卵可能なホルモンのバランスが戻ってきた時点で卵胞が1個でも出てくれば、それを妊娠に結びつけるようにしていきます。
自然のタイミングでの妊娠を期待することもありますが、なかなか卵胞が出ない場合は、貴重な1個ということで少しでも妊娠率が高い体外受精をご提案するケースもあります。どちらにするかは、その方の状態やお考えに合わせて決めていくことになるでしょう。
総卵子数が少ないということは、良質な卵子が採れる確率も下がってしまうということ。私のこれまでの経験で、FSH値が90 mIU/ml近くで妊娠・出産された方がいらっしゃいましたが、そのようなケースは少なく、治療としては困難であることは間違いないと思います。”
“ホルモン値がよくなったり、また悪くなったり、卵子を待っていてもなかなか出なかったりと、早発閉経の治療は忍耐を必要とします。大変だと思いますが、可能性があるうちは前向きに治療を続けていただきたいですね。”
■早発閉経の場合、自然妊娠より早めに体外受精をしたほうがいい?【特集:排卵障害の不妊治療】
早発閉経の先端治療『IVA』とは?
不妊治療が非常に難しくなる早発閉経ですが、IVAという先端治療があるようです。内容の治療は以下のとおりです。
“IVA(体外活性化)による治療を予定されているとのこと。どのような治療法なのでしょうか? 成功する可能性は?
宮崎先生:卵巣内にわずかに残っている原始卵胞を取り出して、体外で卵子の成長を活性化させた後、再び体内へと戻し、受精可能な成熟卵子に育てるという最先端の技術です。腹腔鏡で片方の卵巣を体外に摘出して凍結し、卵巣皮質に原始卵胞が見つかれば、それを細かく切片化して培養し、卵管付近に戻します。成熟卵胞の状態に成長したら採卵し、体外受精を行います。世界から注目されている技術ではありますが、まだ出産に至った例はごくわずかです。培養技術など今後の課題も多く、まだ完全に確立された治療法ではありません。卵巣内に卵胞を見つけることができればよいのですが。”
まだまだ成功率が高いとは言えないようですが、治療の選択肢のひとつとなっていきそうですね。
“カウフマン療法と、病院で処方されているサプリメントや漢方薬など、できることは何でも試してみながら、先端医療のIVAや数少ないチャンスにかけて採卵を続けていくしかないですね。”
卵子提供という選択肢も
女性の早発閉経によって妊娠が難しくなった場合に、卵子の提供を受けて赤ちゃんをもうけるという方法もあります。
卵子提供によって赤ちゃんを出産した方の体験談には、治療に取り組む様子が詳しく綴られています。
“卵子提供を依頼する候補として、アメリカ、台湾、マレーシアなどの選択肢がありました。そのなかで、渡航時間が短く、予算も比較的安く済む台湾を選択。過去に夫婦で訪れたことがあり、よい印象を受けていたのもポイントでした。数あるクリニックのなかでも、日本語が通じることと、最新設備が揃っていることから、まずコウノトリ生殖医療センターへ問い合わせたさやさん。突然メールを送ったのにもかかわらず、丁寧な返事があったことで、安心して訪問を決めたそうです。”
“初めて問い合わせをしてから2カ月後、台湾を訪れたさやさん夫婦は、施設のきれいさ、最新設備の素晴らしさ、そして何より、スタッフのホスピタリティと確かな医療技術に感動したそうです。
(中略)
地方から東京のクリニックに通っていたさやさんにとって、台湾に行くことは苦ではなく、しかも訪れたのは2回だけ。1回目は卵子提供に関する書類の提出と、夫の採精でした。帰宅してからもメールでのやりとりが続きました。一番ナイーヴになりやすいのが卵子提供をしてくれるドナーの選定。少しでも自分に似ていたほうがいいと思ったさやさんは、事前に自分の写真を何枚もメールで送付したそうです。”
“その後、ホルモン剤で調整している間に3周期が経ち、センターの担当者からドナーが決定したことの連絡が。何かあればその都度メールでの連絡があったことも安心でした。採卵の数が18個だったという連絡を受けて期待を膨らませ、体外受精をして胚盤胞が3つ育ったという写真付きのメールを見た時は、いよいよ母になれる、という実感が湧いたそうです。そうして訪れた移植の日は、さやさん一人で台湾へ。移植の翌日には、自宅に戻ることができました。”
“無事に臨月を迎える予定が、25週目で破水してしまうというトラブルが発生。なんとか無事に分娩できる周期まで持ちこたえ、29週目に早産ながらも帝王切開で出産できました。生まれた時の体重は1,000gほど。初めて見る我が子のあまりの小ささに「子犬みたい」だと驚きましたが、今ではすくすく育ち、生後半年を過ぎると6kgのどっしりと大きな赤ちゃんになりました。”
“さやさんは早発閉経により子宮が萎縮していたため、移植の前にホルモン補充療法による治療が必要でしたが、3カ月にわたる治療をご主人と共に乗り越え、1度目の移植でお母さんになることができました。(中略)多くの赤ちゃんが当院の卵子提供治療で誕生しています。早発閉経や卵子の老化で悩んでいる方も、ご夫婦で支えあえるなら諦める必要はありません。”
■夫の子どもを産み育てたい早発閉経に苦しむ日々を 前向きに乗り越え、卵子提供でつかんだ幸せ。
いかがでしたか? 不妊治療では大きな課題となる早発閉経ですが、妊娠に向けての選択肢はあるということをご夫婦で知っておくのは大切ですね。