女性アスリートの月経トラブル対策と治療
インタビュー 女性の健康
2020年の東京オリンピックに向け、女性アスリートの活躍も目立ちます。華やかで力強い競技の裏には無月経や骨量低下など、体に及ぼす深刻な影響もあるとされます。産婦人科のスポーツドクターである宮﨑クリニック副院長の宮﨑千恵子先生に、選手たちの健康懸念や対処法について詳しく解説していただきました。
トップ女性アスリートの約4割は月経が規則的に来ていない!?
「無月経」は3カ月以上月経が停止している状態のことで、このうち運動が原因と考えられるものを「運動性無月経」といいます。国立スポーツ科学センターで約700人のトップ女性アスリートに調査を行ったデータでは、無月経は約8%、月経不順は約33%のアスリートにみられました。トップアスリートの約4割が、月経が規則的に来ない状態にあることが明らかとなったのです。
運動性無月経の原因の1つはエネルギー不足といわれており、これは過度な食事制限やトレーニングで摂取エネルギーより運動によって消費されるカロリーが上回ってしまう、いわゆる「エネルギー不足」が続くことで、脳からのホルモン分泌量が低下して無月経になってしまうという意味です。
体操やフィギュアスケートなどの審美系の運動の場合、子どもの頃からトレーニングを始めることが多く、まだ幼い子が厳しい練習に耐える姿をテレビなどで見ることがあります。
「成長スパート」という言葉があります。子どもの身長が急激に伸びる時期で、赤ちゃんの時の第一次性徴と、第二次性徴の2回があると言われています。女子の成長スパートはイコール、身長が伸びる速度です。第二次性徴時の成長スパートのピークは平均11.2歳に訪れ、その約1年後に初経(初潮)が来ることがわかっています。ところがフィギュアスケートや体操をしている子はこの時期にも身長が伸びず、ジャンプや回転運動をするために体重管理も行っていて体格自体が小さいことがほとんどです。成長スパートが来なければ、脳の視床下部という場所から卵巣を刺激するホルモンが出ないので、卵巣が動き出しません。当然、初経も訪れず、最初から無月経という人もいます。
また、陸上などの選手では、ある程度月経は来ていても、記録をさらに伸ばすために過度なトレーニングを続け、体重が急激に落ちてくると、月経が来なくなることがあります。ストレスに加えて、激しい運動をするとステロイドの一種であるコルチゾールという物質が増え、それにより視床下部の司令塔が動きを止めてしまうといわれているのです。