子宮トラブルが発覚! 妊活と治療どちらを優先するべきか
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子宮トラブルが発覚! 妊活と治療どちらを優先するべきか
妊活中に子宮のトラブルが発覚するケースもあります。妊活と治療、どう進めたらいいかを取材しました。
2018.10.11
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妊活を進めるなかで検査を受けてはじめて、今までわからなかった子宮のトラブルが発覚するケースもあります。そんな時には妊活と治療をどう進めるべきかについて、丸山記念病院副院長の丸山正統先生にお話を伺いました。
30代~40代で多いトラブルは「子宮筋腫」と「子宮内膜ポリープ」
妊活をしている30代~40代の方に多く見られる子宮内トラブルで代表的なものに子宮筋腫と子宮内膜ポリープがあります。
それぞれどのようなトラブルなのかについて解説していきます。
【子宮筋腫】
子宮にできる固いコブのようなものを子宮筋腫といいます。できる原因は今のところ不明です。
筋腫のできる部位により、下記のように分けられています。
■受精卵が着床し、赤ちゃんを育てる子宮内膜直下にできるもの…「粘膜下筋腫」
■子宮の内膜を覆う子宮筋層という筋肉の中にできるもの…「筋層内筋腫」
■子宮筋層の外側にある漿膜(しょうまく)の直下にできるもの…「漿膜下筋腫」
1つだけの場合もあれば、複数できることもあり、小さいものもありますが、直径7cmぐらいのものが多い傾向にあります。たまに重量が10㎏以上になる大きなものもあります。悪性化することはまれでです
卵巣から分泌される女性ホルモンの影響で筋腫が大きくなるため、閉経後に小さくなる傾向にありますが、一度できると自然になくなることはありません。
主な症状としては、筋腫があることで生理痛がひどくなり経血の量が多くなります。それにともなって貧血の症状があらわれたり、筋腫が大きくなると膀胱を押すため、頻尿になる人も見受けられます。
漿膜下筋腫の場合は無症状の場合もあります。
【子宮内膜ポリープ】
子宮内膜ポリープは子宮内膜にできるできものですが、筋腫に比べてやわらかく、大きさも多くは1.5cm未満と小さめです。また、大体が単発で発生しますが複数発生することもあります。
良性のものがほとんどですが、わずかながら悪性の場合もあるため注意が必要です。
発生する原因は女性ホルモンの異常といわれています。
症状は、筋腫と同じように経血量が多い、貧血、だらだらとした不正出血が続くというのが主なものです。なかには、無症状が続き、妊活中の検査で発見される人もいます。
このほか、子宮内膜の表面がスキーのコブ斜面のようにボコボコする「ポリポイド」という状態になる方もいます。この症状が表れた場合には、ピルを服用すれば2~3カ月で治ることが多いです。人によっては、単発のポリープとこのポリポイドが一緒に表れる場合もあります。
筋腫もポリープも、妊娠を妨げるか否かが治療のポイント
子宮筋腫や子宮内膜ポリープができた場合、大きさや自覚症状の有無、妊娠の希望の有無によって治療法は大きく異なります。
明らかに良性で特に自覚症状がなく、サイズも小さく妊娠の希望がない場合は経過観察にし、定期的に大きさや細胞の状態などを検査で確認していくことになります。
ただ妊娠の希望がある場合には、治療法が異なります。
赤ちゃんが子宮内で順調に育つためには子宮内膜の形が「木の葉型」であることが望ましいのですが、粘膜下筋腫や筋層内筋腫、内膜ポリープがあると、それが原因で「木の葉型」が歪んだり、内膜の環境が悪化する可能性があります。
そのため、自覚症状がなくサイズが小さい場合も手術によって除去することが多くあります。
ちなみに漿膜下筋腫の場合は、「木の葉型」に影響を与えないので、自覚症状がない場合、基本は経過観察になります。
子宮鏡下手術や腹腔鏡下手術なら開腹手術より回復が早い
以前は、筋腫やポリープを除去するために開腹手術を行うことがポピュラーでした。ただ、開腹手術は侵襲が大きく1週間ぐらいの入院が必要になるので、普段の生活に戻るまでに時間がかかります。
現在では内視鏡を用いた手術する方法が選択できるようになりました。開腹手術に比べて体への負担が軽くなり、入院生活を短縮できるようになったのが大きなメリットです。
筋層内筋腫や漿膜下筋腫には、おなかに小さな穴を開け、そこから小さなカメラを入れて取り除く「腹腔鏡下手術」が適応となります。入院はおおむね4~6日となります。
粘膜下筋腫と子宮内膜ポリープには、腟から3~5mmの小型カメラ(スコープ)を入れ、それを見ながら筋腫やポリープを取る子宮鏡下手術が適応となります。
この手術は、腹腔鏡下手術よりもさらに体の負担が少ないのが特長です。当院では、大きさ1cm以下の筋腫やポリープなら麻酔なしで取ることができ、日帰りも可能なので、日常生活を妨げることなく手術できます。
ちなみに3cm程度の筋腫やポリープの場合は麻酔をし、宿泊入院をして取り除きます。施設によっては5cm程度まで日帰り可能な場合もあります。
子宮鏡下手術をする際には技術をもつ医師がいるか確認を
残念ながら今、子宮鏡下手術を行える産婦人科医は人数が限られています。きちんとした技術を習得した医師のいる医療機関で手術してもらうことが大切です。
また、開腹手術はもちろん腹腔鏡手術を行った場合には、子宮破裂などのリスクを考慮し、次の妊娠をするまでに最低半年間は空ける必要があります。子宮鏡手術の場合は3カ月程度で妊娠可能です。
不妊治療中の人は、いつ除去手術をするのがベストなのかをかかりつけ医に相談して決めるとよいでしょう。
40歳以上の患者さんでは先に体外受精を行い、良質な胚が採れてから除去手術を決めるケースもあります。
「子どもが欲しい」と思ったら子宮内部の健康チェックを
なかには「不妊治療を始める前に子宮のトラブルがあるかをチェックしたい」という人もいるでしょう。事前に子宮にトラブルの有無があるかを確認する方法として、経腟超音波検査があります。「子どもがほしい」と思ったタイミングで、検査を受けて子宮内部や卵巣の「健康チェック」をしておくといいでしょう。健康状態を正確に把握しておくことで妊活や不妊治療をスムーズにすすめられることになり、妊娠への近道を進みやすくなると思います。
妊活する人が多い30代~40代に子宮のトラブルは起こりやすいです。なかでも子宮筋腫と子宮内膜ポリープが多く、できる部位によっては不妊の原因となってしまう可能性もあります。
妊娠を希望する場合は、少しでも妊娠を妨げるリスクを減らすために、手術をして筋腫やポリープを取り除いておくことがいいでしょう。
症状やできた部位によりますが今は体への負担が少ない腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術が適応されるようになりました。ただ子宮鏡下手術は技術を習得している医師が限られているので、手術前によく確認しましょう。
「妊娠したい」と思ったら、そのタイミングで一度、子宮の健康チェックを受けておいてくださいね。
丸山正統 先生
平成2年 順天堂大学医学部卒業 平成10年 医学博士
平成12年 医療法人慈正会 丸山記念総合病院 産婦人科
平成29年 同上副院長
【所属学会】 日本産科婦人科学会、日本産婦人科内視鏡学会(理事)、日本生殖医学会、日本産婦人科医会(理事)
【専門医】 日本産科婦人科学会 専門医・指導医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(子宮鏡、腹腔鏡)、生殖医療専門医
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