【特別インタビューまとめ】体外受精との向き合いかたとは?
まとめ 不妊治療
【特別インタビューまとめ】体外受精との向き合いかたとは?
世界初の体外受精児・ルイーズ・ブラウンさんの取材記事などをご紹介します。体外受精という治療を選ぶ際の参考にしてみては?
2018年5月、ジネコでは来日した世界初の体外受精児ルイーズ・ブラウンさんに特別インタビューを行いました。
現在では珍しくなくなった体外受精という治療を通じて誕生した子どもの立場からのルイーズさんのお話と合わせて、体外受精で赤ちゃんを授かったカップルの取材記事もご紹介します。
現在高度不妊治療に取り組んでいる方、そしてこれから高度不妊治療を考えている方などに、親子それぞれの思いと治療の経緯を知り、あたたかなメッセージを受け取っていただければと思います。
世界初の体外受精児ルイーズ・ブラウンさんが教えてくれた思い
ルイーズ・ブラウンさんは2018年、40歳を迎えました。体外受精という高度不妊治療が始まってから40年以上が経過したことになります。
インタビューでは、成長するなかで家族と治療に対してどんな風に理解を深めてきたか、そして体外受精についての思いを伝えていただきました。
“私は普通とはちょっと違った生まれ方をした――。そう両親から伝えられたのは確か4歳の時でした。私が誕生するシーンをビデオで見せてくれて、ほかのみんなとは少し違う生まれ方をしたことを教えてくれたのです。
その時期に両親が私に伝えたのは、学校に通う前に基本的なことを理解しておくべきだと思ったからでしょう。子どもというのは時にひどく残酷で、何も知らないままではなぜからかわれているのかを理解できず、戸惑ってしまいますからね。
成長するにつれて、両親がインタビューを受ける様子を見て、その質問や答えを聞きながら徐々に理解を深めていきました。何か疑問に感じることがあればいつでも気軽に尋ねることができましたし、父も母もきちんと答えてくれました。私たち家族にとって、つねにオープンに語り合える話題だったのです。”
“パトリックは婦人科医ですから、母が彼の病院を訪ねると、そこにはいつもお母さんや赤ちゃんたちがいました。それを見た母は、体外受精はこれまで何度も行われてきていて、まさか自分が歴史上初めてのケースになるとは夢にも思っていなかったようです。
母は「必ず妊娠するための手助けをしてくれるはず」と、彼のことを心から信頼していました。それはとても重要なことだと思います。実際に体外受精の治療に入る前、母には両側卵管閉塞があったため卵管を切除したり、ほかにもいくつかの手術を受けなければなりませんでした。 1977年の11月、受精卵が母の子宮に戻され、その後、エドワーズ教授から手紙が届いて、そこには母が妊娠初期である可能性が高いことが書かれていたそうです。こうして、母が信じていた通り、まるで当たり前のことだったかのように私を授かりました。
母は、「もし誰かが“ロンドンのトラファルガー広場の真ん中で裸で逆立ちできたら、子どもを授けよう”といったら、迷わずそうしていたわ」ともいっていました。それくらい子どもを望み、心から信じた結果、本当に授かることができたのだと思います。”
“、私と、その後に続く1000万の尊い命がIVFによって生まれて来ることができたのは、彼らの膨大な知識と助けがあったおかげです。ひと言でいうのは難しいのですが、彼らは私や家族にとって本当に大きな存在なのです。”
“体外受精をするかどうか悩んでいる方がいて、もし母がここにいたら迷わず「おやりなさい」というでしょう。母は赤ちゃんが欲しいという強い想いに後押しされて、未知の方法を選びました。ですから、迷わずに進むことです。力になってくれる素晴らしい医師や看護師たちが大勢いて、今は技術も格段に進歩しています。もちろん、必ず成功するわけではありませんが、よい心の状態を保ち、強く信じることが大切。私はそう思います。”
■スペシャルインタビュー『世界初の体外受精児として生まれるまで、そして今思うことをお伝えします』
子宮内膜症から6年間の不妊治療へ
次に、子宮内膜症の判明をきっかけに不妊状態の原因がわかり、不妊治療に取り組んだご夫婦のエピソードをご紹介します。
“同じ職場で出会った主人と結婚して1年後、激しい腹痛に見舞われ、子宮内膜症とわかりました。それまで仕事が忙しくて「子どもはいつか自然にできるだろう」と、気にしていなかったのですが、「だから1年経ってもできなかったんだ…」とショックでした。本当なら手術が必要でしたが、子どもの頃に受けた大きな手術が原因で、臓器と子宮、卵巣が癒着しているとのこと。月経を1年間止めて治療をするか、不妊治療をするかの選択で不妊治療を選びました。”
“「35歳まで治療をして授からなかったら諦めよう」。主人と約束し、不妊治療をスタートしました。服薬と注射剤によるタイミング療法からはじめ、人工授精に6〜7回チャレンジしましたが、結果は出ませんでした。体外受精へのステップアップが頭をよぎりましたが、資金面のことや、これまでの治療のストレスで心も体も疲れきっていました。”
“そんな時、私の想いが義妹を通じて義母に伝わり、「困っていると聞いたから、役に立てばと思って。でも絶対に子どもをつくりなさいという意味ではないからね」と、体外受精の資金を援助してくれました。そこで、人工授精まで担当いただいた先生がすすめてくれた複数の病院の中から、「ここに紹介した同年代の人は、みんな妊娠していますよ」との一言が決め手になり、兵庫県西宮市の「徐クリニック ARTセンター」に通うことにしました。”
“体外受精は採卵2回で計3回行いました。(中略)そして、最後の卵子で挑んだ3回目は、35歳の誕生日を迎える直前。資金も使い切るタイミングでした。「これでダメなら諦めて、ペットを飼おう」。覚悟を決めて、事前にペットショップの下見も済ませ、なかば諦めモードで挑んだところ、なんと妊娠!信じられませんでした。”
“不妊治療は6年続きましたが、結果が出なくてもつらい時期も、プラスに考えるように心がけて乗り越えてきました。それには、主人、家族、先生はもちろん、友人に救われたことが大きいと思います。2回目の体外受精が失敗して、心底落ち込んだ時、「赤ちゃんは雲の上から自分の親を選んでくるから、行きたいと思ってもらえる生活をしたほうがいいよ」と励まされました。それからは「もっと笑顔で楽しく生きよう」と気持ちを切り替えました。”
“ポーカーフェイスで妊活のつらさを表に出さないTさんの治療を振り返っての心情を聞くと、予想以上に治療のつらさが伝わってきます。これを乗り越えてこられたのは当然ながらTさんの心の強さもありますが、ご主人を筆頭とした周囲の人の心強いバックアップがあったのが良くわかりました。”
■「これでダメなら、ペットを飼おう」と覚悟を決めた時、待望の妊娠。 家族、友人、先生のおかげで、6年間をポジティブに乗り越えられました。
不妊治療を乗り越え、双子のパパママに
一口に不妊状態といっても、原因はさまざまです。男性側に不妊原因がある場合に高度不妊治療を受けるご夫婦もたくさんいます。
“お二人が不妊治療を考え出したのは、結婚して7年が経ち、ミキさんに高齢出産といわれる年齢が迫ってきた頃。たまたま「若い頃はなんとも思わなかったけれど、40歳を過ぎたら子どもが欲しくてたまらなくなった」という方の話が耳に入ってきたことから、「もしあとで自分たちも子どもが欲しくなった時、産めない年齢になっていたら後悔するかも」との思いがよぎり、夫婦で沿線の不妊治療専門クリニック主催の説明会に参加してみたそうです。
その後勧められて受診した男性不妊専門クリニックで、浩二さんの精索静脈瘤が判明。乏精子症との診断を受けました。
精索静脈瘤は決して珍しくなく、不妊原因としてはごくありふれたものです。”
“お二人の治療は次の段階へ。体外受精を見据えて採卵を行ったところ、思いがけず13個という多くの卵子の確保に成功。半分ずつ、体外受精と顕微授精に振り分けることにしました。その後無事に育った受精卵を、毎月一つずつ戻すことに。最初の2回は妊娠に至らず、次の2回は着床したものの残念ながら初期流産。期待が高まっていただけに、ご夫妻にとって心が重い日々が続きました。
そして迎えた5回目、クリニックからの提案を受け、成功率を上げるために受精卵を2個一度に戻してみることに。すると、喜ばしいことに、両方の受精卵がともにしっかり着床。そのまま順調に経過し、無事、双子の妊娠が確認できました。
多胎妊娠はリスクが高いため、妊娠期間中は心配の連続だったそう。ですが無事に生まれてきた二人の可愛い女の子は、お二人に二倍の喜びを与えてくれました。
「一人でも大変だと聞くのに、いっぺんに二人も自分たちに育てられるのか。妊娠してからは正直、不安だらけでした。実際、出産してからずっと娘たちの世話で自分の睡眠時間すらろくに確保できず、めまぐるしく日々が過ぎて今日に至っています。
でも、疲れを癒やしてくれるのも、我が子の可愛い姿。それに、親は大変ですが、子どもたち自身にとっては、姉妹の存在があることはのちのち心強いことと思います。自分の年齢を考えると次の出産は積極的には考えられなかったので…」と、ミキさん。”
“たまにお休みを挟みながら1年半にわたった治療期間を、お二人は「思い悩むことも多くありましたが、自分たちにとって、今の幸せを得るための準備期間だったと思います」と振り返ります。(中略)一方、浩二さんは不妊治療の経験者として「男性に不妊原因があるケースも多いという事実が広く知られるようになってほしい」と話します。
「珍しいことではないので、検査や治療に関して気後れしなくても大丈夫。ただ、実際に治療に入ると男性ができることは少ないので、夫側は徹底して気配りをすることが必要だと痛感しました」と浩二さん。”
“不妊治療、特に男性不妊の専門医は都市部に偏っているので、地方では効率よく通院できないという問題点についても指摘されました。
「不妊治療は長期の取り組みになるので、専門医がたまたま近くにあった私たちはとても恵まれていました。通院できる環境にある方は、メリットを生かして今のうちに始めてみることをおすすめします」”
■男性不妊を乗り越え、可愛い双子の親に。夫婦二人の生活も楽しいけれど
20代で結婚しても体外受精が必要なケースも
20代で結婚し、健康に自信があっても高度不妊治療が必要なカップルもいます。たまたまホルモンチェックを受けたことがきっかけで、不妊治療に取り組んだお2人のエピソードがありました。
“E・Sさんのご主人は2歳年下。自分の家族を大切にする、子どもが大好きな方なのだそうです。お二人は28歳、26歳という適齢期で結婚し、ご主人も「体に負担がかからない若いうちに赤ちゃんを…」と望んでいたそうですが、妊娠には至らず、入籍からいつしか約2年の月日が経過していました。”
“一度不妊治療について考えたほうがいいのかな…そんなことを考えながら、パソコンでクリニックの検索をしていたある日、E・Sさんはたまたま東京・銀座の「はるねクリニック」で女性のホルモンチェックのプログラムがあることを知ります。
「銀座なら会社からでも通える距離。とりあえず私だけでも行ってみようと思って…」と検査を受けることにしました。
検査の結果は特に問題なし。その後、ご主人も精液検査を受けますが、こちらにも問題はありませんでした。”
“タイミング法では6周期チャレンジしたものの、なかなか結果には至りません。そのまま流れるように次は人工授精へ。(中略)体には問題がない、でも全力を尽くしていても妊娠できない、これから治療が長引いて会社に迷惑をかけるのかも…。いろいろな思いが交錯し、だんだん気が滅入っていったE・Sさん。人工授精を6回繰り返した結果、先生からステップアップを勧められます。”
“走り出した不妊治療。ご主人とは「ここまできてやめてしまうのはもったいない。お金のことは考えず、できることを最優先しよう」と話し合ったそうです。この時、初めて会社の上司にも報告。お子さんがいて子育てにも積極的な上司は「仕事のことは気にしなくていいよ」と理解してくれたそうです。
(中略)初めての採卵では3個採卵できましたが、そのうち1個は分割が止まってしまいました。チャンスは2回。1回目の移植、「今度こそは…」と期待が募りました。しかしながら判定日の先生の答えは「このまま生理がくると思いますよ」という言葉。残る1個がダメならまた怖い採卵かと思うとE・Sさんの気持ちは落ち込んでいく一方でした。
(中略)仕事はフルタイム、休日は吹奏楽の団体でクラリネットを演奏しているE・Sさん。気の重い不妊治療も仕事や趣味で気持ちを紛らわしてきた一方、ふと現実に戻り悲しみが襲うことも増えてきました。”
“2回目の採卵では10個の卵子を採卵、そして移植。判定を待っていた待合室で、何の偶然か珍しくお母さまから「元気?」とメッセージが。突然の電話に気持ちが高まった直後に担当の先生から「良かったわね!」と待ちに待った一言が! 「混乱して、主人よりも母に一番に報告したかもしれません(笑)」とE・Sさん。(中略)その後、切迫流産にも見舞われ心配は尽きませんでしたが、戌の日を機にご主人のご両親にも報告ができました。”
“「不妊治療をせずに妊娠、出産した人にはできない体験や想いがあったことは決して無駄にはならなかったと思います。諦めずに、いつか自分たちを選んでくれる赤ちゃんが来ると信じてきてよかった。私たち夫婦にとって気持ちを確かめ合える良い機会だったと思います」”
■若くても、身体的な原因が見つからなくても妊娠できない…。「ホルモンチェック」がきっかけで予想外の治療の道へ—— 。
いかがでしたか? 体外受精などの高度不妊治療に取り組むまでにはためらいや戸惑いがある方もまだまだ少なくないようですが、思いきってチャレンジすることも時には必要なのかもしれません。
パートナーとじっくり話し合ってみるのもひとつの方法ですね。
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