生涯健康で美しくあるために、“女性ホルモン”と上手に付き合おう!
インタビュー
女性の健康
生涯健康で美しくあるために、“女性ホルモン”と上手に付き合おう!
女性ホルモンは妊娠だけでなく、美と健康をつかさどる役割も担っています。広尾かなもりクリニックの金森圭司院長に伺いました。
2018.11.14
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女性ホルモンは妊娠に必要なだけでなく、美と健康をつかさどる役割も担っています。閉経後も賢く補えば、快適な日々を増やすことが可能になるともいわれます。広尾かなもりクリニックの金森圭司院長にお話を伺いました。
「更年期」「閉経」とはどんな状態?
更年期とは、一般的には閉経前と後の各5年間のことを指します。
閉経するのが平均50、51歳ぐらいですから、45~55歳までの約10年間となります。閉経はある日を境に突然訪れるのではなく、しばらく前から兆候が現れます。
兆候の内容は、生理周期や持続期間が不規則になったり月経血の量が減るなどのことが多いです。
閉経の目安ですが、「1年間生理がない状態」であれば閉経を迎えたと見なします。しかし、個人差は大きく、50代半ばでも生理があるという方もおられれば、逆に40代で閉経される方もいらっしゃいます。閉経後に出血が見られることもありますが、その場合は不正出血と見なします。そのような場合には念のため検査を受けると安心です。
30代、20代で無月経になるケースは
40歳未満で起こる閉経を、「早発閉経」と呼びます。病気のため子宮や卵巣の摘出手術をしなければならなかった場合などもこれにあたります。
早発閉経でなくとも一時的な無月経は、一見健康な女性でも起こる事があり、その原因のひとつは無理なダイエットです。
体重が40kg以下になったりすると女性ホルモンの分泌が低下することがあり、スポーツに打ち込んでいるアスリートなどでも、しばしば「生理がない」状態になっている事が最近、産婦人科学会の中でも問題になっています。
そのような場合は、決して放っておかずに産婦人科を受診し、医師に相談して下さい。
ご自分の健康のためにも、将来妊娠出産するためにも、生理周期を整えておくことは大切です。
また、40歳半ばを過ぎても「毎月きちんと生理がある」という方も少なくありません。しかし、妊孕性(にんようせい=妊娠しやすさ)とは別と考えた方がいいでしょう。
生理は女性にとって目に見える健康のバロメーターではありますが、目に見えないレベルで卵巣は30代後半からおとろえていて、規則的に生理があったとしても「排卵している」とは限りません。
ただ、昔に比べ結婚や出産開始年齢が上がったことにより、生理や排卵の回数が増え、その結果子宮内膜症や不妊症が増えているとも言われています。
早めに妊活について産婦人科医と相談することもとても重要だと思います。
生理がなくなる以外の、更年期の症状とは
更年期には、いわゆる「更年期症状」というものが表れる事があります。
ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗)、イライラ、めまいや耳鳴り、不眠、ひざ痛、関節のこわばり、うつ症状など、症状は多種多様で、これもまた個人差が大きく、強く感じる方もいれば、ほとんど症状が出ない方もいます。
いずれも女性ホルモン(エストロゲン)の急激な低下によって引き起こされることが多いのです。
閉経後は生活習慣病のリスクが増し、更年期を境に有病率の男女比が逆転します。高血圧、糖尿病、高脂血症などはもとより、認知症の発症率も高くなります。
骨粗しょう症やひざ痛なども起こりやすくなります。大腸がん、卵巣がん、子宮体がんなどのリスクも高まるので、閉経後はこれまで以上に健康に気を配り、定期的な健康診断やがん検診を受けることをおすすめします。
更年期のリスクを回避する方法
更年期障害の症状やリスクを減らすために、ホルモン補充療法(HRT)というものがあります。
錠剤を服用する、パッチを貼る、ジェルを塗るなど、さまざまな方法で女性ホルモンを補充する治療方法です。以前は「閉経後、5年以内に始めると良い」とされていましたが、最近では閉経前後から始めたほうがより効果的だということになってきています。
一時期は、「ホルモン補充をするとかえって健康を害する」といった噂が広まったことがありましたが、それはあくまでもアメリカの肥満女性を対象としたデータで、日本人女性を対象とした解析ではそうでなく、むしろメリットが多いということがわかりました。
大事なのは「ホルモン補充療法をするために婦人科に通う」という意識の積極性にあると思います。処方前には検査も必要ですし、処方後も定期的な通院がうながされます。
ちょっとした不調も気軽に相談できるかかりつけの婦人科医をもつことは、女性の生涯の健康を保つためにとても大切なことだと思うのです。
自分でできる更年期対策はある?
私もよく漢方薬なども用いますが、女性ホルモンそのものを増やすわけではありません。
更年期症状、また閉経による病気リスクを根本的に回避したいのであれば、ホルモン補充療法が一番明快なのではないかと思います。
さらに、ホルモン補充療法は保険適応ですので、サプリメントなどに頼るよりもコストパフォーマンスも高いと思われます。
女性ホルモンは、子どもを産むために必要ではあるものの、役割はそれだけではありません。
女性の生涯のQOL(人生の質)を左右するものでもあるのです。
いつまでも健康で美しくありたいという要望に女性ホルモンは欠かせない存在だと思います。ぜひ、産婦人科を賢く利用してください。
●●●まとめ
女性ホルモンは生殖にかかわるだけではなく、女性の生涯のQOLを大きく左右する要素をもっています。
婦人科で女性ホルモンのコントロールは可能なので、若い方はもちろん、妊娠・出産・子育てを終え中高年になった方も、かかりつけの産婦人科医を持ち、定期的に健康と美をキープするための相談をされてください!
院長 金森圭司先生
慶應義塾大学法学部卒、東京芸術大学音楽学部卒、桐朋学園大学音楽学部オーケストラ研究生指揮専攻修了し音楽家として活躍後、医師を志し帝京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院研修医、東京大学医学部付属病院産科婦人科勤務、東京大学大学院医学系研究科博士課程などを経て、平成22年4月より現職。産婦人科医・内科医として、婦人科診療や妊婦健診、HRT(女性ホルモン補充療法)といったエイジングケアまで幅の広い診療で女性をサポート。東京都港区医師会理事としても活動。また診療の合間にヴァイオリニスト、指揮者として演奏活動も行い、「癒し」を提供。
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