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出産後に抑うつ状態になる「産後うつ」とは?

インタビュー 妊娠・出産

出産後に抑うつ状態になる「産後うつ」とは?

産後うつになる理由、解消する方法、産後の体調変化の注意点について、堀産婦人科の堀量博(かずひろ)先生に伺いました。

2018.12.1

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「待ちに待った出産だったのに、赤ちゃんが生まれたら産後うつになってしまった」という人は珍しくありません。どうしたら産後うつは解消できるのでしょうか。また、産後の体調変化で気をつけるべきことについて、堀産婦人科の堀量博(かずひろ)先生に伺いました。


マタニティブルーと産後うつの違いは?




マタニティブルーと産後うつの症状は似ていますが、異なった特徴があります。マタニティブルーは出産直後に気分が落ち込んだり、怒りっぽくなったり、不安になるなどの状態になりますが、ほとんどの場合には産後2週間ほどで治まります。
一方、産後うつは産後数週間以内に起きて、2週間以上持続することが診断基準とされています。しかし、マタニティブルーにかかった人は産後うつ病を発症するリスクが高いといわれ、両者はまったく無関係とはいえません。
産後うつの主な症状としては、悲しい、つらいなどの抑うつ気分に加え、睡眠不足・過多、食欲減少・過多などといったさまざまな抑うつ状態が表れます。


産後急激に変わる女性ホルモンのバランスやストレスが要因


女性は出産後、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが急激に減少し、不安や孤独感などを感じやすくなります。これは出産のメカニズム上どうしても起こりがちなことで、つわりと似たようなものと考えられます。これもつわりと同様に、症状がほとんど表れない人から、重い人までさまざまです。

また、ある調べでは大うつ病の生涯有病率は、男性では12・7%であるのに対し、女性は21・3%と約2倍に上り、不安障害では男性で19・2%、女性では男性の約1.6倍の30・5%で、女性は男性よりも抑うつ状態に陥りやすいといわれています。
妊娠前からうつ病に罹患している女性が、一時的に軽快していたものの妊娠、出産を引き金にうつ状態を再発する場合があります。また育児と仕事の両立の難しさ、育児支援施設の不足、核家族化による孤独感などといったストレスが産後うつの要因になっていると考えられます。


産褥期に起こりやすい心身の不調


出産から6~8週間を産褥期と呼び、この間は妊娠、出産で変化した体を回復させるための時期とされています。
前述したように女性ホルモン量の低下、妊娠出産の影響による腰痛や骨盤の開き、悪露(おろ)などが続くほか、新生児の育児や家事などでストレスがたまり、心身の不調が起こりやすい時期ともいえます。もし、気分の落ち込みなどが続き、産後うつではないかと不安になったら、自分だけで抱え込まず、各自治体の相談窓口に連絡してみましょう。最近では助産師による産後訪問のサービスを実施している自治体もあります。
また近頃では助産師などの産科スタッフが、妊娠初期から産後1カ月検診までの間は、質問票を使ってメンタルヘルスの状態を評価しながら支援の必要な妊産婦のスクリーニングを行っている地域もあります。これによって産後うつと疑われた場合には心療内科を紹介されることがあります。心療内科で産後うつと診断されたら、授乳中でも服用できる薬が処方されます。
産後うつは自然に回復すると思われがちですが、症状や状況は人それぞれです。早めに医師の診断を受け、相談することをおすすめします。


堀先生よりメッセージ


日本人は昔から地域のコミュニティで子育てをしていましたが、現在は核家族化や近所付き合いの希薄化により、育児のストレスや悩みなどを誰にも相談できない女性が増えているようです。それを解消するにはやはり、もっとも身近な出産経験者であるご自分のお母さまに話を聞くこと、あるいは聞いてもらうことです。家族の関係性にもよりますが、もしお母さまに相談できなければ、出産経験のある友人、知人でもいいですし、最近は地元の自治体でのサポート活動も盛んです。自分だけで抱え込まず気軽にだれかに相談してみましょう。同じ悩みを共有し、「自分だけじゃない」と感じて気持ちの負担を軽くすることが産後うつの予防、改善につながるのではないでしょうか。
また、「産後うつ」については、病気ではあります。うつには産婦さんがかかる可能性は高いというのは事実です。自分でもわからないうちに、うつになってしまっているのですが、最近はその事実を医療側が理解しており、私たちがなるべく早く気がつくよう目を向けています。自治体や、産婦人科のみんなで産婦さんを見守っていますので、安心してください。あまり気構えず、「ちょっとおかしいな」と感じたら、気軽にかかりつけ医にご相談くださいね。


お話を伺った先生のご紹介

堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科 院長)


東京都出身。東京医科大学卒。1991年、東京医科大学病院産婦人科勤務。婦人科腫瘍(子宮がん、卵巣がん)治療の中心スタッフとして臨床、研究に長く携わる。2004年、東京高輪で祖父の代から70余年続く産婦人科医院の3代目院長に就く。また堀産婦人科診療のかたわら2003年から山王病院リプリダクションセンターで最先端の不妊治療スタッフとしても活躍。父子3代「オーダーメードの診察で女性の一生を医療面から支える」を心がけており、地域住民からの信頼度は高い。大局的な視点に立ったアドバイスで、妊活中や妊娠中の女性を元気づける。

≫ 堀産婦人科

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