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精子の高速直進率について

専門医Q&A 女性の健康

精子の高速直進率について

「そもそも人工授精での可能性がないのであればトライする意味もないと思います。高速直進率が0％や限りなく0％に近い数値の人工授精の場合でも妊娠することができるのでしょうか。」

2013.1.26

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じんべいさん(27歳)

はじめまして。
じんべいと言います。よろしく願します。
現在、タイミング法を3周期実施して、精液検査をした結果、人工授精を勧められ人工授精（子宮内注入）を2回トライしました。
旦那の精液検査を3か月で3回実施しました。
高速直進率が3回とも0％でした。（特殊洗浄後も0％でした。）首振り運動精子も25％→18％→0％で、精子無力症の状態です。
精子の運動率がこの状態で人工授精が成功する確率はそもそもあるのでしょうか。本やインターネットなどで勉強しているのですが、直進率が悪い場合には顕微授精対応に移行した方が良い。という見解を多く見ました。
通っているクリニックでは年齢的に余裕があるから人工授精を5～7回周期トライしてみては。というスタンスです。
しかし、そもそも人工授精での可能性がないのであればトライする意味もないと思います。
高速直進率が0％や限りなく0％に近い数値の人工授精の場合でも妊娠することができるのでしょうか。
それと、このままの精子状態での体外受精、顕微授精での妊娠は見込めるのでしょうか。
よろしくお願いします。

お話を伺った先生のご紹介

原利夫　先生 (はらメディカルクリニック)

赤ちゃんが出来にくいという状態は、医学的な側面と環境的な側面の両面、言い換えますと、心と体のバランスの解決が必要であると考えております。
最近では、体外受精などの先進的な医療の妊娠率にとらわれがちですが、私達医師は、妊娠しやすい安心できる環境と、それをサポートする医学的な力を提供すべき使命があると考えています。
三人四脚で新しい家族の誕生をお手伝いすることが出来れば幸いです。

院長：原利夫（はらとしお）
医学博士。58年慶応義塾大学大学院医学研究科修了にて医学博士学位を取得する。同大産婦人科助手を経て、62年東京歯科大学市川病院講師､平成元年千葉衛生短大非常勤講師となる。この間、日本初の体外受精凍結受精卵ベビー誕生のスタッフとしても活躍する｡

≫ はらメディカルクリニック

一般的な精液検査では精子濃度（１mlの中に存在する精子の数）や運動率、奇形率などを調べます。
WHO基準では精子濃度は１ml 中に1500万個以上、運動率40％以上、精液濃度1500万個/ml以上、総精子数3900万個、前進運動精子率32％以上、正常携帯率４％以上、生存精子率58％以上が望ましいという考えです。
じんべい様のご主人の場合診断は精子無力症に当たります。
男性不妊の一般的検査には精液検査の他、視診、触診、ホルモン検査、染色体検査、陰嚢部超音波検査などがあります。
検査で何かの疾患が発見されるのは５～25％程度で多くは特発性（原因不明）です。
疾患としては、前立腺炎と精索静脈溜が主で、前立腺に炎症のある場合には抗生物質の投与、高度の精索静脈溜（陰嚢～陰嚢上部の血管のこぶ）のある方にほ手術を行う場合があります。
以前は無精子症の治療はできませんでしたが、精子を回収する精巣内精子回収術（TESE）を行い、顕微鏡下精巣内精子回収術（MD-TESE）で精子を回収し、顕微授精を行うことになり妊娠が可能になりました。
一般的に人工授精による妊娠率は１回につき５～10％とあまり高くありません。
じんべい様のご年齢や状態から、一般的な顕微授精の妊娠率は40～50％です。
顕微授精とは体外受精の一種で、精子の状態や採取卵の状態より、事前に受精障害が予測される場合に選択する方法で、精巣精子回収術（TESE）によって回収された精子は必ずこの顕微授精(ICSI)が選択されます。方法としては、採卵後に前培養した卵子にICSI前処理を施し、400倍の顕微鏡下で不動化処理を行った精子を特殊なピペット（針）を用いて卵子に1匹注入します。
運動能力のない精子でも頭部が正常ならば受精出来る方法です。
また体外受精での先天異常児は１％強とされています。この頻度は自然妊娠での発生頻度とほぼ同じ範囲と考えられます。つまり、体外受精法による出生児に先天異常が多いのではないかという心配はありません。
確率の低い人工授精を続け精神的にも追い込まれる様でしたら、可能性の高い体外受精（顕微授精）にステップアップすることも良い方法と考えられます。

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