顕微授精で着床しません。どんな治療をすればいいの?
コラム 不妊治療
顕微授精で着床しません。どんな治療をすればいいの?
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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。
- のこのこさん(26歳)からの相談
治療方法について - 精子の数が少なめで運動率が悪いとのことで夫は男性不妊専門の病院を受診。問題はありませんでした。私もひと通り検査しましたが問題なしとのこと。ロング法、ショート法、アンタゴニスト法で顕微授精を3回実施。ロング法で初期胚を凍結して移植しても陰性、ショート法で桑実胚の新鮮胚移植や胚盤胞(4CC)を凍結後、融解胚を移植しても陰性。3回目のアンタゴニスト法での受精結果はまだ出ていません。毎回卵子の質がよくない、精子も体外受精では無理で受精卵をつくる力も弱い、受精卵のグレードも低く原因がわからないと言われます。私みたいな状態の人はどういった治療法が有効でしょうか? また、移植時にはホルモン補充をしていますが、ホルモン値が上がらず毎回薬を変えています。薬の効きにくい人へのアドバイスもお願いします。
- まとめ
- ●過排卵誘発で数多く採卵し、良好胚を見つける方法もあります。
●規則的な日常生活が大切。酸化ストレスを避け、健康な体づくりを。
検査で問題がなくても、なかなか妊娠に至らないのこのこさんのケース。どのような原因が考えられますか?
ご相談の文面から見ますと、精子の数が少ない乏精子症、動きのよくない精子無力症が原因で、顕微授精による不妊治療を受けているということですね。いろいろな誘発法を行い、複数の卵子が獲得でき、かつ、顕微授精によって受精ができていますが、良好胚、胚盤胞になる確率が低い。そのため、胚移植してもなかなか妊娠しないという症例です。
一般的には、30歳以下の年齢が若い人の場合、たとえ男性側に不妊因子があっても顕微授精で胚移植をすると70〜80%は受精し、40〜50%は胚盤胞になります。良好胚が得られて胚移植をすると70〜80%は妊娠、60%くらいは出産まで至ることが多いです。
しかし、のこのこさんのように、年齢が若く、検査では問題がなくても良好胚が得られない症例は少数ですがあります。そして、その原因はわからないことが多いのです。
先生がすすめるとすれば、どのような治療法がありますか。
排卵誘発法にはロング法、ショート法、アンタゴニスト法などいくつもの方法があります。しかし刺激法を変えることが良好胚の獲得につながることはあまりないと思いますが、今まで試したことのない排卵誘発法や黄体ホルモン併用療法などを試したり、一度くらいは低刺激法や自然周期法で採卵してみるのもよいのではないかと思います。
それでも良好胚が得られない場合、過排卵誘発に戻して数多くの卵子を採卵し、そのなかで少しでも良好胚を見つける方法しかないかもしれません。
ホルモン補充をしても、ホルモン値がなかなか上がらないことに対しては、どうすればいいのでしょうか。
ホルモン値は、たとえば卵胞ホルモンは120〜150 pg / ml以上、黄体ホルモンは10〜12 pg / ml以上で十分な値です。あまり気にしなくてもよいのではないでしょうか。それよりも子宮内膜の厚さ、形態のほうが重要です。
つまり、子宮環境を整えることが大切。酸化ストレス・抗酸化力検査を受けたり、卵子によい影響を示す抗酸化サプリを服用したりするのもいいかもしれません。抗酸化サプリには、アスタキサンチンやコエンザイムQ 10を含むものや、ビタミンEなどがあります。夫婦でサプリを服用することも、一緒に不妊治療に取り組んでいく気持ちを強くするうえで効果的かもしれませんね。
子宮環境のためには、酸化ストレスを避け、規則正しい生活をし、健康な体づくりを心がけること。その積み重ねが不妊治療をよい結果に導くのではないでしょうか。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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