5回の採卵で成熟卵は1個だけ。このまま同じ採卵方法でいいの?
コラム 不妊治療
5回の採卵で成熟卵は1個だけ。このまま同じ採卵方法でいいの?
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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。
- もちこさん(30歳)からの相談
採卵5回、成熟卵が採れません - 1年半前のAMHが1.36ng/ml、現在は1ng/ml以下と低く、低刺激法と自然周期で採卵を5回行いました。1回目は成熟卵1個と未成熟卵1個で成熟卵は受精するも分割停止、2回目は変性卵1個、3回目は自然周期で空胞のみ、4回目は空胞1個と変性卵1個、5回目は未成熟卵が1個と、これまで採れた成熟卵はわずか1個でした。卵巣機能が低下しているのは承知しているのですが、30歳でこれほど卵子の質が悪いのかと非常に落ち込んでいます。担当の先生には「AMHが低いため刺激しても意味がない、このまま低刺激法での採卵を続けて成熟卵が採れるまで待つしかない」と言われました。このまま同じ方法で採卵を繰り返して待つしかないのでしょうか。
- まとめ
- ●FSHの上昇が、卵子の成長に影響を及ぼしているかもしれません。
●卵巣を休養状態にして、コンディションを整えましょう。
もちこさんはAMHが1ng/ml以下ですが、この数値はやはり低いのでしょうか。
年齢を考えるとかなり低いでしょうね。治療経過を含めて考えると40歳前には閉経してしまう、原発性卵巣機能不全に属するのかもしれないと思います。5回採卵して成熟卵が1個しか採れていないということは、FSH(卵胞刺激ホルモン)の値が高いのでしょう。FSHはホルモン剤かGnRHアゴニストを使えば下がりますが、視床下部の働きを抑制するホルモン剤、たとえばプラノバール®といった類の薬でFSHの分泌をしっかり抑えこんで、しばらく卵巣に刺激がかからないようにしたほうがいいかもしれません。
FSHが高くなっている場合、何もしなくても絶えず卵巣に働け、働けと刺激が加わっています。そうするとFSHだけではなく、LH(黄体形成ホルモン)も出てきてしまうのです。
現在の低刺激法を続けても、あまりよい結果は出ないということですね。
自然周期で採卵できないということは、月経のリズムをつくっている中枢である視床下部|下垂体がきちんと働いていないから。このまま視床下部|下垂体を放っておいたら、いつまでたっても成熟卵を採ることはできません。低刺激法だとおそらくクロミフェンかレトロゾールを服用していると思います。しかし視床下部|下垂体は野放し状態、つまりFSHやLHの数値が高いまま刺激しても反応が極めて悪くなります。
FSHが高くて採卵数が少ない人は、卵胞が育ちかけたところでLHが高くなって、完全に排卵するわけではないですが、それが出ると卵子に影響がおよび変性したりします。実際にもちこさんも変性卵が出ているので、その可能性がありますね。ですからホルモン剤を使ってまずFSHとLH値を徹底的に下げておいて、下垂体からの刺激過剰状態を改善しておくといいと思います。
卵巣への刺激をいったんやめてみる、ということですね。
前の周期に卵巣を一度お休み状態にして、コンディションを整えておくということですね。そこから軽く刺激をしていくなり、自然な刺激で卵胞が成熟してくるのを待つなりする。AMHが低いので、注射で刺激してもたくさんの卵子は採れません。やはり1個か2個だと思いますが、それが育っていく間のホルモン環境を整えていくことで、よい卵子が採れる確率は上がってきますね。
まだ生理も止まっていないので、一度卵巣の環境をリセットして、FSH値をごく普通の人の生理周期に近いようなところへもっていって少し様子を見て、そこから改めて少しずつ刺激すれば、まだ卵巣に卵子は残っているはずなので可能性はあると思いますよ。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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