子宮腺筋症はどんな病気?
インタビュー 女性の健康
成人女性の5人に1人が発症している子宮腺筋症ですが、原因や治療法などまだ知られていないことが多くあります。誰でも起こりうるこの病気について永井産婦人科病院 理事長の永井 晶子先生に伺いました。
子宮内膜が筋層に入り肥厚化。かかる可能性は誰にでもあり!
子宮には、受精した卵を迎え入れて赤ちゃんになるよう育てる子宮内膜という部分があります。いわば「赤ちゃんに育てるためのベッド」のような役割をする部分です。生理周期にあわせて少しずつ厚さが増しますが、受精卵が子宮内にやってこないとわかるとはがれ落ち、生理として体外へ排出します。
この内膜が子宮内膜の外側を覆っている子宮筋層になんらかの理由で入り込み、子宮全体が肥厚したり腫れたりするのが子宮腺筋症です。
「特定の人がかかる病気」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、閉経前の成人女性なら誰でもかかりうる病気です。
また、人によっては子宮内に筋肉の瘤(こぶ)ができる子宮筋腫を併発していることもあります。
重い生理痛や生理過多が主な症状。不妊の原因になることも
症状の程度や将来的な妊娠希望の有無などにより治療法は異なる
今は子宮腺筋症の治療法はさまざまなものがあります。
いくつか例をあげてご紹介します。
【ピル】
ピルは避妊目的だけではなく、子宮の厚みが減ってくるので、
服用することで乱れた生理周期が安定し、肥厚化して腫れた子宮をすこやかな状態にリセットできます。生理痛や生理過多の緩和につながることが期待できます。
【漢方】
「ピルを服用するのにはちょっと抵抗がある」という患者さんには、骨盤まわりの循環を良くする漢方を処方するケースがあります。
おなか周辺の血のめぐりをよくすることで生理痛が緩和されます。
【黄体ホルモン剤(ジエノゲスト)】
卵巣機能を抑え、結果的に子宮内膜の厚みを抑える薬剤で、子宮内膜症の治療に使われています。
【黄体ホルモンを放出する器具の挿入】
黄体ホルモンを持続的に放出する小さな器具(一般的に避妊リングといわれているもの)を子宮内に挿入。子宮内膜が厚くなるのを抑制し、生理痛や生理過多を緩和させる方法です。柔らかい樹脂製なので、挿入時の痛みはほとんどなく、5年間挿入しておくことが可能です。
【手術で子宮を摘出】
将来的に妊娠を希望されない方で、ご自身が納得されている場合や、血栓症のリスクが高くてピルが服用できない、どうしてもピルを服用することに抵抗感があるなどの場合には、手術で子宮を摘出するという方法もあります。
症状の程度や妊娠希望の有無など、ご自身の考えによってさまざまな選択肢があるので、かかりつけの婦人科医と相談して自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。
子宮腺筋症があっても妊娠は可能
毎月おなかが痛い、つらい場合は一度病院へ相談を
永井先生より まとめ
薬などで症状を抑えながら上手に病気とつきあって
子宮腺筋症は、子宮内膜がなんらかの理由で子宮筋層に入り込み、肥厚して子宮全体が腫れたりする病気です。主な症状として生理痛や生理過多、貧血などがあります。完全に治すのは難しい病気ですが、薬などを使って症状を抑える、遅らせるなどして上手につきあっていくことが大切です。
今はさまざまな治療方法を選択できるので、「毎月つらいけれど、生理だから仕方がない」と、ご自身だけで悩まずに婦人科を受診しましょう。そして医師と相談のうえ、ご自身が納得できる治療法を選択してくださいね。