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転院のタイミングと 失敗しない病院 選びのコツは?

コラム 不妊治療

転院のタイミングと 失敗しない病院 選びのコツは?

転院するタイミングはいつがベストなのでしょうか。ステップアップ前、それとも時期に関係なく、自分がしたいと思ったらいつでも決めていいのでしょうか。仙台ARTクリニックの吉田仁秋先生にお話を伺いました。

2019.3.3

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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


ヤマさん(35歳)からの相談
不妊専門の病院に通い始めて10カ月。AIHを5回しました。先日、先生から「体外受精にステップアップしたらどうか?」といわれました。2回目のAIHで陽性反応が出ましたが、その後流産。PCOSなのでうまく卵胞が育たず、ヤキモキして過ごす日々。治療を始めた頃から体外受精は視野に入っていたので、「先生の下した判断ならステップアップしてもいいかな」と思っています。主人は男性不妊でもあるので治療には積極的ですし、情報もいろいろ調べてくれます。それで今日「いい病院を教えてもらった。体外受精にいく前にそこに転院してはどうか?」といわれました。転院か、今の病院に通い続けるか、とても悩んでいます。

Doctor’s advice
迷いが生まれた時が一つのタイミング。
転院先の情報は事前にしっかり調べましょう

Message
治療方針が自分に合っているというのはもちろんですが、それに加えて重要なのは転院先の施設が「自分が安心して過ごせる場所かどうか」ということだと思います。いくら人気の施設でも「5分の診察で終わり」では、納得のいく形で進められません。当院では、通常の診察のほか、疑問があれば看護師や胚培養士などに専門的な話を聞けるような体制を整えています。スタッフの数を十分揃えているか、患者さんの不安を解消できるような機会を作っているかというのも、転院先を選ぶ大切なポイントになってくるかと思います。

お話を伺った先生のご紹介

吉田 仁秋 先生(仙台ARTクリニック)


獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田綜合病院産婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニックを開設。2016年1月に「仙台ARTクリニック」として移転・リニューアルオープン。

≫ 仙台ARTクリニック

一般的に人工授精はどのくらいの妊娠率なのでしょうか?


患者さんの年齢にもよりますが、一般的に人工授精(AIH)の妊娠率は5~10%程度といわれています。
通常、34歳までなら6回、35歳以上の方だと3回実施して妊娠しなければ、次のステップとして体外受精を考えるようになります。
人工授精で妊娠する人の6~7割は3回以内、6回までで9割ほど。つまり、それ以上実施しても妊娠率は低く、10回、20回と回数が多ければ多いほどうまくいくということではありません。
ヤマさんは35歳で5回目ですから、そろそろステップアップを考える時期。男性不妊もあるようなので、担当医の先生がおっしゃるように早めに次の治療を考えたほうがいいと思います。


PCOSだと妊娠しづらくなってしまうのですか?


多囊胞性卵巣症候群(PCOS)とは卵巣の中に小さな卵胞がたくさんできてしまう状態のことです。卵胞が育ちにくかったり、排卵しづらくなって不妊の原因になることも。PCOSは「月経異常」や「男性ホルモン高値」など、いくつか診断基準があるので、当てはまるような場合はそれに合わせた治療をしていきます。排卵誘発剤などの使用で正常な排卵が起こるようになれば、一般不妊治療での妊娠も可能でしょう。
ただ、PCOSの方は排卵誘発をするとどうしても卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まってしまいます。それを回避するために当院では、卵胞を未成熟の状態で採卵し、体外で培養・成熟させて(未成熟卵体外成熟:IVM)、体外受精や顕微授精を行う治療も実施しています。


転院のベストなタイミングがあれば教えてください


転院のタイミングは患者さんによって異なると思います。ある程度治療をしても結果が出なくて「どうしようかな」と悩んでいる時が一つのポイントになるのでは。何年、何回治療したからとかではなく、一番重要なのはご夫婦の気持ちではないでしょうか。
ヤマさんの場合、今治療を受けているクリニックでこのままステップアップするか、転院して気持ちを変えて人工授精にあと1、2回トライするか、僕はどちらでもよろしいと思います。お二人が納得する形で決めていただくことが大切だと思いますね。ただ、先のことまで考えるなら、体外受精も実施している施設を選んだほうがいいでしょう。


失敗しない転院先選びのコツは?


ご主人が教えてくれた病院は「インターネットで検索してもほとんど情報が出てこなくて不安」ということですが、できれば転院する前にしっかり情報を調べたほうがいいと思います。今はホームページ等で、施設の治療方針や雰囲気がわかりますよね。
情報の中でまずチェックしていただきたいポイントは実施している症例数や治療成績。体外受精なら少なくても年間200件以上の症例を扱っている施設だと安心できるのではないでしょうか。やはりある程度の症例数を実施していないと治療全体のクオリティが落ちて、妊娠率も下がってきてしまうものです。また、さまざまなケースを扱っていれば、どんな状況の患者さんがいらしてもベストな治療法をご提案できます。
もう一つは医師の経歴部分を確認してください。「日本生殖医学会認定生殖医療専門医」と記載されているかどうか。専門医になるためには時間がかかりますから、この資格を取得していれば生殖医療に熟練しているということになります。
転院して妊娠されて、結果的によかったという方も多くいらっしゃいますが、デメリットもゼロではありません。新しい先生とは一から信頼関係を築いていくことになります。先生やスタッフとの相性、また、治療以外では施設の雰囲気や待ち時間などが自分の望むものであるかなど、初めての場所ですから自分に合わなかったということもあります。
「転院先に不安がある」ということですが、無料のセミナー等が行われている病院でしたら、一度話を聞きに行かれてみては? 不妊治療は時間的にも経済的にもある程度負担がかかってしまう治療です。ご夫婦でよく相談のうえ、情報をしっかり調べて後悔のない形で転院を考えていただきたいですね。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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