移植後にエコーで見える 白い点のようなものは何?
コラム 不妊治療
移植後にエコーで見える 白い点のようなものは何?
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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- よよさん(34歳)からの相談
移植後に見える白い点について - 今回3回目の移植です。移植が終わってエコーで確認する際に、白い点のようなものが過去2回ははっきり見えたのですが、今回は何も見えなくて「この辺りに入っていますから」と先生にいわれました。先生が去った後で不安になり、看護師さんに白い点が見えなかったことを伝えると、「先生が大丈夫といっていたので、大丈夫だと思いますよ」といわれました。「過去2回は白いのが見えたんですけど」というと、「明瞭に見える時と見えない時がありますからね」と、何か引っかかるいい方をされました。白い点は見える時と見えない時があるのでしょうか? 今回の移植はいつもの先生ではなく、週1回来ている先生ですし、不安で仕方がありません。
- まとめ
- ●エコーは断層的な描写しかできないので、白い点が見えなくても問題ありません。
●着床不全の原因究明は難しく、胚側、子宮側、その両方にある場合も。
移植後にエコーで見える白い点は何でしょうか。
エコー下で、子宮内腔の中央に移植用チューブの先端があることを確認してシリンジを押すと、子宮内に胚(受精卵)そのものではなく、培養液が白く光って見えます。エコーは断層的な描写しかできないので、移植胚を含んだ培養液が鮮明に写らないことがあります。しかし、移植後にチューブやシリンジ内に胚が残っていないか必ず確認しますので、白い点が見えなくても問題ないと思います。
移植をする時に着床しやすい位置はありますか。
当院では子宮内腔の中心あたりに胚を移植することが多いです。培養液にからめて移植するので、胚は培養液に浮遊しながら子宮内膜に着床するとされています。ですから、着床する位置に多少差はあります。子宮鏡下で肉眼的に内膜が著しく損なわれている場合や、内膜の炎症、器質的な変化がなければ、移植の位置はほとんど関係ありません。
不妊原因に着床不全とあり、凝固障害と診断されているようです。
着床の過程は複雑で、原因が胚側、子宮側、その両方にあるのかによって、4つのことが考えられます。1つ目は胚側の問題です。見た目が正常な胚盤胞でも妊娠率は50%程度といわれています。2つ目は着床ウィンドウの問題です。子宮内膜には胚が着床する時期に個人差があると考えられています。当院では未実施ですが、移植に適した着床時期を調べるERA(子宮内膜着床能検査)という方法があります。3つ目は子宮内膜環境の問題です。超音波検査や子宮鏡検査などで子宮内膜ポリープ、子宮奇形、卵管留水腫がないかを調べます。4つ目は受精卵を受け入れる免疫系の問題です。採血検査でTh1/Th2比を検査して、異常が認められた場合は、タクロリムスという免疫抑制剤を試す報告もあります。
また、凝固障害は不育症の原因になります。着床不全の原因も含めて、甲状腺機能異常、抗リン脂質抗体症候群、膠原病、血液凝固異常などがないか検査します。
最後にアドバイスをお願いします。
胚移植をする場合は、見た目のよい胚から戻していきますので、凍結胚移植を繰り返すと、グレードの低い胚が後になります。そのため移植前の子宮内膜環境をホルモン周期だけでなく、自然周期に変えて移植する方法もあります。また、今後もヘパリンを使われるのであれば、不育症検査で推奨されている凝固系の検査をおすすめします。
そのほかに移植個数を増やす方法もあります。再度採卵して体外受精を行い、二段階移植や新鮮胚、凍結胚同時移植などを試されてもいいでしょう。
ご参考までに、体外受精において、39歳以下の方が良好な胚を4回以上移植した場合、80%以上の方が妊娠されるといわれています。この方は3回目とのことで、4回目の結果が気になりますが、必要であればご提案した方法も検討されてはいかがでしょうか。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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