【特集3】「子どもが欲しいならほかの人と結婚して」と、主人から言われてしまいました
コラム 不妊治療
【特集3】「子どもが欲しいならほかの人と結婚して」と、主人から言われてしまいました
不妊治療を始めたら、いつかは終わりがくるもの。それが「妊娠・出産」であったなら、 とても喜ばしく幸せなこと。しかし、そうならない厳しい現実もあり、いつか決めなければならない治療のやめ時。ジネコユーザーの悩みに応援ドクターが答えてくれました。
※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。
- ひさこさん(37歳)からの相談
治療の限界を感じています - 37歳で不妊治療歴2年です。私には片側卵管閉塞があり、男性不妊もあるため体外受精でしか子どもを望むことができません。2回採卵して2回移植していますが、いずれも妊娠できませんでした。排卵誘発で刺激をしても採卵数が少ないため、毎回、採卵から始めています。精神的にも、金銭的にも、かなりつらい日々を送っています。最近は主人に八つ当たりをしてしまい、反対に「そんなに子どもが欲しいのなら別の人と結婚して」と言われてしまいました。また、「子どものいない人生もある」などと言われ、自分でもこのまま諦めずに続けていくのか、またはどのタイミングで治療をやめるべきなのかを考えています。今、私はAMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定を考えていて、その結果によってこのまま続けても確率が低いようなら治療をやめようかと考えています。ご意見をお聞かせください。
二人同時のカウンセリングでお互いの思いや悩みを共有
ひさこさんの投稿を拝見して、一番気になったのはご主人との現在の関係についてです。男性不妊も原因の一つになっているようなので、自分にも不妊の原因があるということを受け入れられていないのか、負い目に感じている気持ちの裏返しなのか、ご主人としても治療の悩みや心配があるのかもしれません。だからといって「別の人と結婚して」は決して口にしてはいけない言葉です。
このような状態がよいはずはないので、私なら、治療を継続するにしても、やめるにしても、まずは夫婦二人でカウンセリングを受けることをおすすめします。今の夫婦関係のまま、ひさこさん一人で決めてしまうと、その時はよくても時間が経つうちに「本当にこれでよかったのか」と後悔するケースも多いので、カウンセラーやコーディネーター同席のもとで夫婦の方向性をしっかりと話し合ってみてはどうでしょう。
当院では、助産師のカウンセラーと胚培養士のコーディネーターが常駐していて、治療の第一歩として夫婦の足並みをそろえてもらうため二人一緒にカウンセリングの予約をとっていただくようにしています。二人が治療に向き合う思いや治療方針、方向性を共有していないままスタートしてしまうと、治療が順調に進んでいる間はよくても、何か一つでもかみ合わなくなった時に、何が夫婦にとっての正解なのかを導き出すことが難しくなります。どんなに共有できている夫婦でさえ壁に当たってしまうことが多いのが不妊治療です。二人が何を目指しているのか、相手はどうしたいと思っているのか、人生設計をどうとらえているのか、一つひとつ納得しながら二人の答えを見つけていただきたいですね。
治療期間や年齢によってとらえ方や選択肢は変化する
不妊治療を開始して2年。「もしかしたら長期戦になるかもしれない」と不安を感じ始める時期に来ているのかもしれません。一般的には、2年までにひと通りの検査が終わり、ある程度は治療方針も決まっています。タイミング法、人工授精、体外受精というステップアップも、ほとんどの場合が2〜3年のうちに行われます。そろそろ結果が欲しい時期であり、多くの患者さんが感じる不妊治療の「つらさ」「焦り」「落ち込み」の入り口に来ているのかなという印象です。この時期を過ぎると少し落ち着き、40歳前後で治療を継続していれば卵子提供や養子縁組などの治療以外の選択肢ややめ時について考えたり向き合ったりするなど、精神的にも次の段階を迎えるのだと思われます。
ひさこさんは採卵して体外受精2回、移植2回という情報しか記載されていませんが、もしかしたら最初はタイミング法から始めて、人工授精を試し、それでも妊娠に至らなかったので体外受精にステップアップしたのかもしれません。治療歴2年の回数としてはとても少ないので、お金を貯めて1回目、次にまたお金が貯まったタイミングで2回目、というペースなのかもしれませんね。1回の体外受精に意を決して臨むご夫婦というのはとても多く、ひさこさんも金銭的な負担を大きく感じているようなので、精神面とダブルでダメージを受けているのかもしれません。
片側卵管閉塞ですが、もう片側は本当に正常なのか、男性不妊の状態はどの程度で採卵数や質はどうかなど、データが少ないので判断は難しいですが、年齢的には決して諦める時期ではないと思います。また、AMH値の結果自体はどんな誘発方法にするかを判断する基準にはなるので調べてみる価値はありますが、妊娠率とは相関しないのでやめる材料にはなりません。
夫婦の今後の人生のために二人の最良を一緒に考える
治療をやめるきっかけは何か。とても難しい問題ですが、決して一人で決めるべきではなく、最終的には夫婦二人で決めなければなりません。体外受精の回数や費用、年齢の上限、採卵はできても受精しなくなったなど、理由はさまざま考えられますが、いずれにしても夫婦二人が納得できているかどうかが、その後の夫婦の人生に大きく影響します。ひさこさんも、言いたいことや思っていることを伝え合い、お互いの本当の気持ちを知ることが、今の状況が改善する近道ではないでしょうか。
- TOPICS
- 治療方針を選択するための情報提供や相談、体外受精にステップアップする夫婦全組に二人同時カウンセリングを実施するなど、福井ウィメンズクリニックではカウンセラーやコーディネーターとの連携で患者さんをサポート。治療中は精神的に不安定になって、些細なことで医師や治療への不信感が募ったり、夫婦仲が悪くなったり、イライラや落ち込みが激しくなったりしがちですが、精神の状態が結果に影響するケースも多いのが不妊治療です。気軽にカウンセリングを利用して気持ちにゆとりをもちましょう。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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