青葉レディースクリニック産婦人科医 小松一先生の妊娠前 に始める 母親教室
コラム 妊娠・出産
※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。
- テーマ
【第2回】妊娠糖尿病について - 2010年に診断基準が変わり、以前より妊娠糖尿病と診断される方が増えているようです。妊娠糖尿病GDMとはどのようなものか、ならないためにはどうすればよいのか、小松一先生にお話を伺いました。
妊娠糖尿病とはどのような病気でしょうか?
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です。糖代謝異常というのは、膵臓でつくられるインスリン(※インスリン…血糖を下げるホルモン)の量や働きが不十分となり、血糖の調節がうまくいかなくなった状態です。これには特に、妊娠初期に判明した “明らかな糖尿病”と「妊娠糖尿病」の二つの病態が含まれます。前者では通常、初期の妊婦健診で実施される随時血糖値や尿糖で発見されることが多く、もしかしたら、妊娠前から、糖尿病を発症していたことが予想されます。妊娠初期の血糖が高いと先天奇形および流産の頻度が増加しますので、早急に血糖をコントロールする必要があります。
一方、妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの働きで、母体のインスリンの働きが抑えられ、また、同時に胎盤でインスリンを壊す働きの酵素が分泌されるため、非妊娠時と比べてインスリンが効きにくい状態になり、血糖が上がりやすくなります。このため、妊娠中、特に、妊娠後半は高血糖になる傾向があり、一定の基準を超えると「妊娠糖尿病」と診断されます。
なお、妊娠前から、既に糖尿病と診断されている場合(糖尿病合併妊娠と言います)でも、血糖がしっかりコントロールされ、糖尿病性の網膜症や腎症を合併していなければ予後は良好です。
妊娠糖尿病になると何が起こるのですか?
胎盤では母体から、胎児へブドウ糖が濃度勾配に従って輸送されます。輸送されたブドウ糖は胎児だけでなく、胎盤組織でも消費されます。したがって、母体が高血糖であると、胎児も高血糖になり、胎児や胎盤が肥大化し、さまざまな合併症が起こり得ます(表1)。
妊娠糖尿病はどのように診断されますか?
前述したように、妊娠初期に随時血糖を測り、これが高い時にブドウ糖負荷試験(※検査前日の夜から絶食し、翌朝、ブドウ糖75 gの入った炭酸飲料を飲み、その前後合計3回、血糖値を測定します)をして診断します。妊娠初期に陰性であった人でも、妊娠糖尿病の確定診断を受けたほうがよい人(表2)では妊娠中期(24~28週)にブドウ糖負荷試験を実施することがあります。妊婦さんの7~9%は妊娠糖尿病と診断されるため、きちんと検査を受けましょう。
妊娠糖尿病と診断されたら?
妊娠糖尿病と診断された時期や母体の体格に応じて、摂取すべき1日の総カロリーが決定され、そのカロリーに基づいた1日分の食事量を分割して摂取するような食事指導(6分割食が一般的です)を受けます。万一、食事指導で改善しない場合はインスリンの皮下注射をします。こうなると厳格な血糖管理が必要となり、頻回に血糖を自分で測定しないといけません。当院では妊娠糖尿病の管理に長けた近医の糖尿病専門医と協力して、妊娠分娩管理を行っています。妊娠後期に血糖コントロールが難しくなった場合や胎児の発育が大きい場合などでは分娩誘発を行い、妊娠糖尿病からの早期の脱却を図ります。
- コラム
知っていますか? 一般的な清涼飲料水の糖分量について - 糖分を加えた甘い炭酸飲料や乳飲料、野菜ジュース、果物ジュースなど一般的なペットボトルのサイズには40〜60gの糖分が添加されています。したがって、ペットボトル1本をまるまる飲むことは毎回、ブドウ糖負荷試験を受けているようなものです。また、栄養飲料にはカフェインも多量に添加されていることが多く、妊娠中は特に注意する必要があります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
≫ 掲載記事一覧はこちら