【働く女性サポート】「不妊治療と仕事の両立推進シンポジウム」
コラム
不妊治療
【働く女性サポート】「不妊治療と仕事の両立推進シンポジウム」
「不妊治療と仕事の両立は無理かも…」と、考えた方も多いのでは? 仕事を任せられる世代が治療を理由に辞めるのは、会社にも損失です。企業の取り組みを発表する東京都主催の「不妊治療と仕事の両立推進シンポジウム」が6月26日に渋谷で行われました。
2019.9.27
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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
基調講演
防げ!突然の不妊退職企業が知っておきたいこと
~不妊の現状と治療者の本音~
NPO法人Fine 松本亜樹子氏
冒頭に小池都知事からのビデオメッセージで東京都が昨年から「働く人のチャイルドプランサポート事業」として、不妊治療中の従業員を支える企業を、サポートするしくみが紹介されました。
その後に「防げ!突然の不妊退職 企業が知っておきたいこと」というテーマで、NPO法人Fine理事長の松本亜樹子さんによる基調講演が行われました。NPO法人Fineは、不妊体験者のサポートを15年間行っている団体。自らも不妊治療体験者である松本さんによると、「不妊治療中の人は、《身体的負担》、《心の負担》、《経済的負担》、《時間的負担》という4つの負担を抱えている」とのこと。
特に経済的負担が大きいので、働いて治療費を捻出したいものの、治療のスケジュールが立たないゆえに職場に迷惑をかけるから退職するというケースが多いようです。また、サポート制度があっても実質利用できないケースもあるようです。
会社にとっても働き盛りの人材の損失につながることを解説。それを解決するには、本人、企業、国の三者が金銭面などで協力、支え合っていくことが大切であること、会社側も不妊治療に関する教育を受け、当事者をサポートするための活きた制度を早急に整える必要があること、などが語られました。さらに精神を安定させてストレスを緩和する働きが注目されています。
パネルディスカッション
不妊治療サポート制度を導入している2社の事例を紹介
北里大学病院看護部周産母子成育医療センターの遊佐浩子さんが、不妊の定義や治療の流れや、患者さんが抱えがちなストレスについて解説。続いてすでに不妊治療のサポートを行っている2社の事例が紹介さました。
【CASE1】
妊活中に受けられる福利厚生の充実
~サイバーエージェント~
1社目のサイバーエージェントは、不妊治療中の人へのサポートを含め、女性社員のための福利厚生をまとめた「マカロンパッケージ」を2014年にリリース。不妊治療の通院時に月1回まで取得でき、急なスケジュールにも対応して当日取得可能な「妊活休暇」、出産できるか不安に感じている社員が専門家に月1回30分のカウンセリングを受けられる「妊活コンシェル」などのサポートを受けられるとのこと。
同社でマカロンパッケージの成立に携わった人事本部の田村有樹子さんによると、これを社内で流行らせるために、やったことが3つあるそうです。「1つは福利厚生(安心)だけでなく、それをふまえて仕事でチャレンジしてほしいこと(挑戦)をセットで渡すこと。
次に「しらけのイメトレ」です。たとえば産まない選択をした社員もいるので、そういった社員の立場になって考えた結果、取得目的がわからないよう、女性社員が取得するすべての有休を「エフ休」という名前に統一しました。
最後に制度のネーミングです。インパクトがあって、社員が口にしやすいものということで、決まりました。ちなみにマカロン(macalon)は、mama(ママ)がc a(サイバーエージェントの略)でlonぐ(長く)働いてもらえる制度という意味があり、社員からも高評価です」。
【CASE2】
休暇・休職制度の充実で出生支援
~ティーガイア~
続いて2社目の事例はティーガイア。企業理念である「人材は人財と考え、その家族も大切にする」というコンセプトのもと、育児と介護をサポートする制度に、不妊治療をする社員のサポートを加えました。東京都が行っている「チャイルドプランサポート事業」を知ったことも導入のきっかけの後押しになり、2018年12月に制度化されたそうです。「ネーミングも直接的なものではなく『出生支援制度』とし、利用しやすいようにしました」と同社人事の山口由貴子さん。
一般不妊治療に向け、1年で3日間まで有休を取得できる出生支援休暇と、体外受精などをじっくり取り組みたい人向けに無給で1カ月~最長365日まで分割取得が可能な出生支援休職を用意し、利用者の目的に合ったものを選択できるようにしているそうです。
制度の利用状況は上がっており、利用した人の中から妊娠に至り、産前休暇を取得予定の人も。また、女性だけでなく男性社員の取得実績もあるとの報告がありました。また、出生支援休職の取得期間中は無給ですが、社会保険料や住民税などの請求はあることなどを明記したチェックリストを作成。金銭トラブルの発生防止に努めているそうです。
2社の事例を受け、長年不妊治療の取材を行ってきた日本経済新聞社の石塚由紀夫氏から、「2023年以降は、今以上に若い人材が枯渇する時代。不妊治療をサポートする体制が整っていることをアピールすることで、人材採用で優位に立てるのではないか」という話があり、頷く人の姿が見受けられました。
最後に、出席者からの質問についてパネリストの方が回答、討論する質疑応答の時間が設けられました。治療をサポートするうえで、取得しやすい有給休暇システムの質問から、不妊治療中の人のキャリアアップ制度の作り方、など多岐にわたる質問が出ました。
最後に不妊治療を行う社員をサポートするうえで大切なのは、周囲の社員が理解をすること、大学生や新卒者に不妊にならないよう教育をしていくこと、などがパネリスト、出席者の間で確認され、閉会となりました。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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