当帰芍薬散は排卵を妨げてしまう?
コラム 不妊治療
当帰芍薬散は排卵を妨げてしまう?
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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
- 水10!今みてますさん(?歳)からの相談
当帰芍薬散について教えてください。 - 生理周期は28日。14・15日目に排卵検査薬を使うと必ず(+)に反応し、その後に毎日仲良しをするのですが全然妊娠しません。今回病院で排卵チェックを受けて卵子も確認でき、ただ黄体機能不全かもしれないので「当帰芍薬散」を処方されました。5日くらい前から飲み出したのですが、本日16日目にしても排卵検査薬は(-)なんです。こんなこと初めてでとても不安です。当帰芍薬散は排卵を妨げてしまうのでしょうか? 教えてください。どんな小さなことでもいいので情報をお待ちしております。
- まとめ
- ●当帰芍薬散が直接排卵に影響を及ぼすことはありません。
●排卵や体温に神経質になりがちなら、「加味逍遙散」もおすすめです。
当帰芍薬散はどのような漢方薬なのですか。
「当帰芍薬散」はトウキやセンキュウ、シャクヤクなど6つの生薬からなる漢方薬です。漢方でいう「血」と「水」を調節する作用があり、血をつくって補ったり、水滞といわれるむくみの状態を改善すると考えられています。
冷えや生理痛・生理不順などに悩む性成熟期から更年期までの女性に頻用されることが多いようですね。不妊治療においては排卵障害や黄体機能不全、高温相がなかなか維持できないという方に処方することがあります。
また、クロミッドⓇのような排卵誘発剤を長期内服していると、頸管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなるという方もいらっしゃいます。そういった副作用を軽減するために、クロミッドⓇと併せて使うことも。当帰芍薬散には直接排卵を促すまでの作用はないので排卵率は変わりませんが、併用することで妊娠率は上昇したというデータが報告されています。
飲み始めたら排卵検査薬が陰性になったと心配されていますが。
まず、時期的な問題ですが、この方は排卵検査薬を使った5日前から飲み始めたということですね。西洋のお薬に比べ、漢方薬は効果を実感するのに少し時間がかかり、冷え改善などは早い方でも2週間くらい経って自覚されるようです。一般的には1~2カ月はみていただきたいですね。よって、5日間で何か体に変化が出るということはないと思います。
また前述したように、当帰芍薬散には直接排卵に影響を与える作用はありません。冷えやむくみをとって血の巡りをよくし、結果、体表の温度(皮膚温)が上がるようなことはありますが、基礎体温は深部体温。当帰芍薬散が体中の温度の上げ・下げまで調節するということはないでしょう。今回陰性だったのは残念ですが、それは漢方薬が原因ではないので、その点はご安心ください。
ほかにこの方におすすめの漢方薬はありますか。
当院で不妊治療中の患者さんに一番多く処方している漢方薬は「加味逍遙散」です。このお薬には頭痛や冷え、お腹の不調を改善するほか、気持ちを正す作用も。不妊治療中はストレスが溜まりやすく、この方も体温に一喜一憂されているようですね。心を安定させてスムーズに治療に臨むために、もしかしたらこちらの漢方薬のほうが適しているかもしれません。
漢方薬は直接排卵を起こしたり、ホルモン値を上げるお薬ではありません。より妊娠しやすく、妊娠してからも健やかな生活を営むために体質を改善するお薬だと考えていただくとよいかと思います。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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