2回の顕微授精で受精しません。次の刺激法は何がいいですか?
コラム 不妊治療
2回の顕微授精で受精しません。次の刺激法は何がいいですか?
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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
- こあらさん(28歳)からの相談
▶費用を考えると刺激法の選択に迷います - 男性不妊のため2回顕微授精をして2回とも受精すらしませんでした。初回は自然周期法で1個採卵しましたが未成熟卵。2回目はクロミッドⓇを飲んで4個採卵。うち3個が未成熟卵でした。卵子の質が悪いことも考えられるそうです。私は26歳で生理周期は安定しておりAMH値13ng/ml、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)ではありません。夫は30歳で総精子数160万/ml、運動率10%です。次回以降は高刺激法でたくさんの数を採ったほうがいいのか、粘り強く低刺激法を続けたほうがいいのかわかりません。正直金銭的に厳しいです。移植に進むためのアドバイスをお願いします。
- まとめ
- ●3回目は成熟卵をたくさん採る刺激法がいいでしょう。
●男性不妊外来での検査と治療をして精子の状態を改善しましょう
こあらさんが行った卵巣の刺激法について、先生はどうお考えですか?
おそらく担当の先生は2つの理由から低刺激法を行ったと思います。1つめはこあらさんが28歳と若く、卵巣の働きを示すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が13ng/mlと高いので、低刺激法でもそれなりの数の成熟卵が採れるという判断だったのではないでしょうか。2つめはクリニックの方針で低刺激法しか行わないかです。
2回とも受精しなかったのは、卵子の質に問題があると思われますか?
いいえ、卵子の質というよりは採卵で未成熟卵の数が多いのが問題でしょう。2回目の採卵で成熟卵が採れたのはたった1個。この数ではほかのクリニックが顕微授精を行っても受精卵になるのはなかなか難しい気がしますね。
ご主人の精子の状態はどうですか?
総精子数160万/ml・運動率10%という数値は、WHOの正常基準値に比較すると極端に低く、よくないですね。1500万/ml以上・運動率40%以上が正常値ですから。質問票に書かれていませんが、すでに泌尿器科など男性不妊外来を受診しているかどうかが気になります。精子の状態が改善すれば体外受精にチャレンジすることも可能なので、しかるべき検査と診断を受けて適切な治療をしてほしいですね。
次の刺激法ですが、先生なら何をこあらさんに提案されますか?
費用がご夫妻のご負担になっているとのことなので、低刺激法から高刺激法にガラリと変えて、成熟卵を確実にたくさん採るやり方に再チャレンジしてもらいます。受精卵になるまで低刺激法で何度も採るやり方は、お金がかかって大変です。高刺激法のほうが費用を抑えられるかもしれません。AMH値の高いこあらさんなら、成熟卵をたくさん採れる状態だと思います。薬の副作用で卵巣が腫れてお腹が張る卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の心配はありますが、それを少しでも回避するアンタゴニスト法などがあるのでリスクを軽減できるかもしれません。担当の先生に高刺激法を相談されるといいと思います。クリニックの方針が低刺激法なら転院を考えてもいいのではないでしょうか。
卵子の質についてなど精神的にまいっているこあらさんに助言をお願いします。
卵子の質については先にも説明したとおり心配ご無用です。極度に落ち込む必要はありません。私の考えを一つの参考にして、あらためて担当の先生に、ご自分からちゃんと確認しましょう。未成熟卵が多かった原因や費用の心配も伝えて、先生の回答に納得できるかどうか。それによって選ぶ治療がわかってくるはずです。シンプルなことですが、前向きな治療には大切な作業です。ご主人にも同席してもらって一緒に頑張ってください。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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