男性不妊の原因の一つ「射精障害」って?
インタビュー 不妊治療
男性不妊の原因の一つ「射精障害」って?
近年、不妊の原因が女性だけでなく男性側にもあると知られるようになってきました。その一つとして挙げられるのが射精障害。聖隷浜松病院の今井伸先生によると、思春期以降の性との接し方が深く関係しているそう。症状や治療方法についてお話を伺います。
不妊治療に大きく関係する「腟内射精障害」
射精障害にはおもに4つに分類されるのですが、診断する際、まず精液が出るか・出ないかが基準となります。
出ない人は逆行性射精障害や精液排出障害が疑われ、糖尿病など器質的な原因が考えられます。
一方、精液が出る人の場合は、早漏と射精遅延(遅漏)に分けられます。このうち、不妊治療においてもっとも問題になるのが射精遅延です。
なかでも、セックスはできるけれど射精できないことを「腟内射精障害」といいます。妊娠を希望するなら腟内射精が大前提ですし、検査をして精液に異常がなければ性交、射精できれば妊娠の可能性はありますが、その段階でうまくいかない。
実は、当院を受診する男性不妊の方の約1割が腟内射精障害なのです。
腟内射精障害にもさまざまなパターンがあります。例えば、マスターベーションでは射精できるけれどセックスではできない人。不妊治療ですから、病院で精液検査をしていただくのですが、マスターベーションで時間がかかる人は腟内射精障害の疑いがあると考えていいでしょう。
それから、マスターベーションでも性交でも射精できない場合。夢精でしか射精しない、自分の意識下で射精したことがないという人もいます。そういう場合はそもそも精液検査ができないので、精子に原因があるかどうか確かめることができません。
最終的には精巣から直接精子を採るTESE(精巣内精子回収術)などの手段を視野に入れることになりますが、この方法で3人のお子さんがいるという方もいらっしゃいます。
トレーニングカップで段階的に射精の訓練
腟内射精障害の治療は、おもに行動療法、つまりマスターベーションの訓練によって射精できるようになる方法を取ります。
人それぞれやり方や癖があるのですが、腟内で射精できなくなる原因の一つが、間違ったマスターベーションにあることは、意外と知られていません。
人によって、床や布団にこすりつけるマスターベーション、いわゆる「床オナ」を習慣にしている人がいます。実際、腟内射精障害の人に話を聞いてみると、床オナをする人の割合が約半数を占めるのです。
また、普段のマスターベーション時の握る力が強すぎて、強い刺激でないと射精できない人、足をまっすぐ伸ばした姿勢でしか射精できないといった人もいます。そういう癖がないか一つずつ聞き出し、思い当たるものがあれば、正しい方法に直すよう指導します。
その際、最近よく使われるのが、マスターベーターのTENGAです。腟内射精障害治療用TENGAの「トレーニングカップ」は5段階あり、硬さや柔らかさを選んで、段階的に練習していきます。壁や床にこすりつける習慣がある人は、冷たくて硬い感触が好きなので、硬いものから始め、だんだん女性の体に近い柔らかいものに変えていきます。
当院では、腟内射精障害(うち3~4割は用手的マスターベーションでも射精できない人)の経過を追えた約20人のうち、9割近くがTENGAで射精できるようになり、さらにその半数近くが腟内射精までできるようになりました。ですから、自分が今どういう状態かを知ったうえで、病院に行かなくても自分で意識して練習し、できるようになる人もいます。
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