なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座
コラム 不妊治療
なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座
体外受精や顕微授精などの高度な治療では、どのような排卵誘発法で卵胞を育てていくのでしょうか。また、胚移植で着床率を上げるための検査や治療法は? クリニックの選び方や、治療の向き合い方も教えていただきました。
体外受精や顕微授精などの高度な治療では、どのような排卵誘発法で卵胞を育てていくのでしょうか。また、胚移植で着床率を上げるための検査や治療法は? クリニックの選び方や、治療の向き合い方も教えていただきました。
※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
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不妊治療の選択 - 体外受精や顕微授精などの高度な治療では、どのような排卵誘発法で卵胞を育てていくのでしょうか。また、胚移植で着床率を上げるための検査や治療法は? クリニックの選び方や、治療の向き合い方も教えていただきました。
- 「不妊治療」まとめ
- ●排卵誘発法は低刺激から高刺激まで方法はさまざま
●反復不成功の方には、子宮鏡検査やERA検査が有効
●同じ治療を地道に続けることが妊娠率アップのカギ
体外受精や顕微授精での排卵誘発法について教えてください。
排卵誘発法にはいろいろな方法があります。大きく「低刺激法」と「高刺激法」に分けてご紹介しています。
低刺激法には、自然なホルモン分泌を促す内服薬を使って良質な卵子を複数個採卵できる「クロミフェン自然周期」「レトロゾール自然周期」、お薬を使わずに完全な自然周期で卵子を1個採卵する「完全自然周期」があります。どの方法も自然に近い状態で卵胞を育てるため、体にかかる負担が少ないのが特長です。
高刺激法には、点鼻薬、注射剤を使用する「ロング法」「ショート法」「アンタゴニスト法」があります。どの方法も一度にまとまった数の卵子を採卵することが期待できます。排卵のシグナルとなるLHサージを抑制しますので、採卵日をある程度コントロールできます。お仕事をされていて時間がある時に複数個の受精卵を凍結しておきたい方やある程度高齢で治療を開始し、2人目のお子様の分も受精卵を凍結しておきたい方にもおすすめです。
当院では、患者さんの希望と年齢やAMHの値などを参考にして、できるだけ身体的、経済的な負担にならない排卵誘発方法を選択していきます。たとえば、AMHが標準値の方は高刺激法である程度の採卵数が期待できます。しかし、AMHが極端に低い方や年齢が高い方が高刺激法を行っても、低刺激法の時と採れる卵子数が変わらないことがあります。このような時はご本人と相談して決めていきます。また、AMHが高く、高刺激法による卵巣過剰刺激症候群などの副作用の心配がある方は、アンタゴニスト法や低刺激法と注射剤を組み合わせるなど、さまざまな工夫が可能です。
子宮内膜の状態を改善したり、着床率を上げるための検査や治療法はありますか?
超音波検査で子宮内の問題が疑われる場合や、体外受精で良好な胚(受精卵)を複数回移植しても妊娠に至らない場合は、子宮鏡検査が有効です。超音波検査で発見しにくい子宮内膜ポリープや慢性子宮内膜炎、子宮腔内の癒着、粘膜下筋腫が見つかることがあります。
それでも原因がわからない時は、「ERA(子宮内膜着床能検査)」「EMMA(子宮内マイクロバイオーム検査)」「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)」をおすすめしています。この3つの検査は同時に受けることができます。なかでも、良好な胚を複数回移植しても着床しない反復不成功の方のうちの約37%に「着床の窓(胚が子宮に着床する適切な時期)」のズレがわかっています。ERAは「着床の窓」を個々に調べる検査です。この結果に基づいて移植日を決定すると効果が出ることもあります。
子宮鏡検査やERAに問題がない方でも、子宮内膜が薄いと着床しにくくなります。子宮に必要な栄養と酸素を届ける目的で、子宮血流を改善するビタミンE錠やトレンタール®、バイアグラ®などのお薬を使用することもあります。
クリニックを選ぶ時のポイントや、納得して治療を進めるためのアドバイスをお願いします。
その方のライフスタイルや希望に合った治療方針の施設を選ぶことが大切です。インターネットの情報だけでなく、実際に通院したことがある方の意見を聞くのがいいと思います。また、各施設で行っている「体外受精セミナー」や「クリニック見学会」にも参加されてみるのもいいでしょう。医師やスタッフと直接話して、自分に合う施設かどうかを確かめることができます。当院は20年以上の歴史をもつ老舗クリニックとして、過去の実績データに基づいた治療を行っています。長年続いているのにはそれなりの理由があります。そういったことも施設選びの参考になると思います。
施設が決まって治療が始まれば、「すぐに赤ちゃんが授かれる」と期待される方もいるかもしれません。体外受精の一般的な成功率(1回の移植あたり)は約30%です。そのため、1回の治療で必ず妊娠するわけではありませんし、妊娠率を極端に改善する魔法のような方法もないのです。同じ治療を地道に続けていくことが必要な時もあります。
治療中に不安や疑問を感じたら、インターネットで調べられる方が多いと思います。しかしながら、インターネットの情報は玉石混淆です。誤った情報に振り回されてはいけません。まずは、担当医師に気軽に質問や相談してください。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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