「不妊治療の実際」行政に、企業に、クリニックに、社会に、私たちの声を届けたい! ~2000人アンケート調査より~①
コラム 不妊治療
「不妊治療の実際」行政に、企業に、クリニックに、社会に、私たちの声を届けたい! ~2000人アンケート調査より~①
「不妊治療の実際」行政に、企業に、クリニックに、社会に、私たちの声を届けたい! ~2000人アンケート調査より~
2019年、ジネコは10周年企画として、春号で「不妊治療を取り巻く環境の変化」、夏号で「不妊治療の歴史とデータから見る不妊治療の現状」を特集しました。締めくくりとなる冬号では実際に治療を受けている人たちの体験談や悩み、伝えたいことなど、リアルな声をお届けします。
※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
治療を受けている人と世間の評価にズレがある?
8月のある日、ジネコに1本のメールが届きました。メールの送信者はツイッターで情報発信をしている不妊治療中のゆなさん。
ある産科医が「日本の不妊の原因は高齢が多い」とツイートしたのを見て、たくさんのSNSでつながった不妊治療中の人たちの現状とのずれを感じ、独自で行ったアンケートの結果を知らせてくれました。回答数が4000人を超えていたことから、不妊治療中の方からの「現状を伝えたい」「環境を改善してほしい」という強い思いを感じ、ジネコはまずはその声を多くの人に伝えることが必要だと考えました。
将来赤ちゃんが欲しいと思っている人へ、全国の不妊治療を行うドクターへ、企業へ、そして社会へ…。治療を受けている人たちのリアルな声を届けたいと思い、ゆなさんの協力を得て、改めてツイッターで不妊治療についてのアンケートを実施しました。
2000名以上の回答の集計結果を、寄せられたコメントとともにお伝えします。
アンケート協力/ゆな@不妊治療中 さん(@yunakinenbi )* ツイッターでのアンケート項目数は4つまでのため、すべての回答が4択になっています。
初めて不妊の検査を受けたり治療を始めた年齢は?(回答数2200人)
●20代で治療を始めている人が44%
高齢による不妊が増えているといわれていますが、20代の時に不妊を心配し検査や治療を始めている人が4割以上いました。一方、約2割の人が35歳以上で始めていました。
- ちび*
- 23歳から人工授精まで行っている一般産婦人科を受診。授かれたらここで産みたいって思った豪華な産婦人科だったため。個々の症状に合わせた治療ではなく、漢方とHMG注射で卵子を育てるって感じだった。卵管造影もできず、通水のみ。検査は全て外注。精液検査もWHO基準。低レベルに感じ2周期で自主転院。
- ルモンド23w
- まさか29歳で初めて妊娠・流産した時は自分が不妊だとは思いもしませんでした。
全てを病院に責任転嫁するつもりはありません。ただ、高度不妊治療へ踏み切るまでにあまりにも時間を無駄にしてしまったのは、ことごとく「まだ若いから」という励まし(?)があり、本格的な治療から遠ざける心理が働いてしまったことも大きいと思います。
- こんぶ
- 25歳で結婚。26歳で妊活を開始。当時は妊娠をナメていて、「避妊しなければ授かる」と思っていたので半年くらいで検査に行きました。結果は「ホルモンバランス的に妊娠しないワケではないがしにくい体」「精子の運動率も低め」と、決定的な理由がないので医師の指導とホルモン注射でのタイミング法開始。結局、26歳で人工授精3回まで行いましたがその時は授かりませんでした。
不妊治療を始めたきっかけは?(回答数2240人)
●「1~2年自然妊娠しなかったから」が半数
実際に「不妊かも」と感じてからクリニックを訪れる人が多く、将来に備えて検査を受けるという人はまだ少ないようです。
- いちか
- 32歳で結婚、タイミングで1年弱妊娠せず、年齢的な不安もあり33歳で近所の産婦人科を受診。でもその産婦人科では「どうしてまだ1年も経ってないし若いのに受診しようと思ったの?」と悠長なことを聞かれました。この認識は本当に変えていかないといけないと今つくづく思います。
- ぽち
- 34歳になってすぐの頃、助成金の対象が「35歳※までに専門クリニックにかかった人」だと知って、いずれ欲しくなった時にできなかったら困るから検査だけでも行っておこう、となったのがきっかけです。
※ 現在は、「妻の年齢が43歳未満」となっています。
- よつば
- 一般的には1年間といわれていますが、私が治療を開始したのは避妊をやめて半年でした。早く子どもが欲しかったので迷わず不妊治療施設を受診しました。
- 明ノ富士
- 20代前半に無排卵月経だったことがあり、8カ月程度自己タイミングしても授からなかったので、1年待たずに不妊の検査を受けることにしました。若い頃に婦人科にかかった経験が不妊治療のスタート時期を早めさせてくれました。若い時に検診受ける機会って重要な気がするな。
通院している不妊治療施設の種別は?(回答数1545人)
●「不妊治療専門クリニックに通っている人が7割以上
寄せられたコメントから、初めは通いやすい場所にある産婦人科やレディースクリニックに通い、ステップアップとともに専門クリニックに転院したという人が多いことが伺えます。着床前診断ができるところ、男性不妊の対応ができるところなどを求めて、遠くまで通っているというコメントも寄せられています。
- miho
- 人工授精までは近隣に通っていましたが、体外受精からは着床前診断(PGT-A)ができるクリニックに転院しました。片道4時間半かけての通院です。同じような患者さんが全国から集まっています。
- 我が名はキジトラ
- 初めは産婦人科で検査を受けましたが、男性不妊の可能性があるがこちらでは調べられる程度に限界があるからと、不妊治療専門の病院を紹介してもらいました。
- ふじ子
- 時間を無駄にしたくなかったので、ネットで調べて専門クリニックにしました。今のところ満足していますが、着床前診断は行っていないので、導入されなければ転院も視野に入れています。地域差や治療内容の差によって仕事との両立が難しくなってしまいます。
- まっちゃん
- 「不妊治療専門クリニック」の中にもこんなにレベルの差があることは、まず一つめの門を叩いてみないとわからなかった。
- Misty
- 初めレディースクリニックに、通ってましたがそこは検査項目が少ない、(通水検査までしかできないなど)治療の方針が検査結果に基づかずゆるく進むので、徹底的に調べたかった私には合わず、専門医に転院しました。
今までに受けた最も高度な治療は?(回答数2099人)
●6割が高度生殖医療を受けている
不妊専門クリニックに通っている人が多いことと連動して、6割の人が体外受精・顕微授精などの高度生殖医療を受けています。
- めるかとる
- 私たちは、タイミング法をまず勧められましたがそれは速攻お断りして、すぐに人工授精に進みました。切実に妊娠を望んでいたので、時間を無駄にしたくなくて。体外受精のほうがスケジュールを組みやすかったことも一因です。
- かだを
- 患者側が知識を得て、病院選びから治療法選び、ステップアップの判断まで行わなければならない。病院側は決められたこと以外は何も提案せず、患者側が質問したり提案したりしなければ同じことの繰り返し。ただでさえ精神的負担が大きいのに、悩みすぎて苦しくなります。患者に合わせた提案が欲しい。
- 鳥子
- 激務であったため、仕事を犠牲にしない方法を考えたら定時前後に通える職場近くの非専門病院で排卵誘発+AIHが限界でした。キャリアと子育てがゼロサムな現状が非常に不満です。バリバリ働きながら治療も可能なオプションがないと感じました。
どのくらいの期間治療を続けている?(回答数1291人)
●5人に1人が3年以上治療を続けている
治療が長期にわたる人も多く、精神的、経済的に苦しくなっている状況がうかがえます。
- ながにこ
- メンタルのため、お金のため、検査のため、ちまちま休みながらやっています。お金がなくなるとメンタルにくるので、治療どころではなくなります。でも休んでいる間にも加齢によって成功率は下がっていくんだよな…と思うとそれもまたメンタルにきます。
- miho
- 自己タイミング6カ月、検査+タイミング法6カ月、人工授精6カ月と体外受精のスタートラインに立つまでに、最短で1年半。もっと長い人も多いです。精神を病むには十分すぎる時間です。でも体外受精はそれ以前の治療とはケタ違いに大変。どうしたら治療期間が短くなる?
- mary
- 専門クリニックに通院を始めてから5年、体外受精を始めて3年ですが、費用等の負担が大きく連続して採卵や移植をするのは厳しいです。我が家のように転座があって受精卵の染色体異常率が高いことがわかっていても、2回流産しないと着床前診断が受けられない学会のルールも時間がかかる理由だと思います。
- ゆな
- 3~5年未満と回答。3回採卵5回移植した時点で貯金はすべてなくなりました。本当にこの先数カ月生きていくだけのお金しか手元に残りませんでした。卵子も精子も老化していくことなんて重々わかっていて、気持ちも体もまだ治療できるのに、お金がなくて休憩せざるを得ませんでした。結局仕事を辞めて治療に臨んだ場合、短期決戦で結果が出なければお金がなくなるという現象が起きます。
これまでにかけた治療費の総額は?(回答数2150人)
●100万円を超えた人が約半数
100万円未満と100万円以上がちょうど半々くらいでした。10人に1人は300万円以上かけているという結果でした。
- ながにこ
- うちの場合、世帯年収の3~4割は不妊治療に消えている。若いほうが成功率が上がると言うが、お給料は低い。助成金の申請もできるが、正直金額も回数も心もとない。
- ゆず
- 私たち夫婦は20代後半なので、給料も低いです。更に私は子宮内膜症があり生理痛で動けなくなるのと、不妊治療(体外)の通院で、仕事を辞めました。実際、今回の治療で授からなければ金銭的に厳しいので諦めることも考えてます。助成金も、2回目からは15万円…全然足りません。
- miho
- 所得制限のため助成金は1円も受けとれません。高所得層は自分でなんとかしろというのが政府の方針なのかもしれませんが、体外受精を始めて半年で150万円です。治療が長引けば、仕事を辞めざるをえない人も多いのに。食費や家賃よりも、治療費のほうがずっと高い! こんな状況は異常じゃないですか?
- くもどろ★
- 採卵3回した時点で250万ぐらい、移植は3回で50万ぐらい、出産後2つ目の胚を移植し卒業までに50万ぐらい。所得制限のため助成金は受けられませんでしたが、なぜ税金を多く払っているのにこういった恩恵は受けられないのか疑問でした。
- こんぶ
- 体外受精にステップアップする時、いくらかかるのか調べても調べてもわかりませんでした。雑誌系→30万~、体験談系→300万!500万!!なので、とりあえず貯金と相談して150万握りしめてスタート。治療を経験した今は、「30万~なんて幻!!最低100万は覚悟しとけ。話はそれからだ!」くらいの情報が欲しかったです。
アンケート結果の続きはこちら ↓
不妊治療の実際② ~妊娠した人・妊娠以外の理由で治療をやめた人に聞きました~
不妊治療を取り巻く環境、こう変わってほしい!ジネコも動きます!
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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