プロラクチン値は下がりすぎてもよくない?
コラム 不妊治療
プロラクチン値は下がりすぎてもよくない?
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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- まりもこさん(38歳)からの相談
▶潜在性高プロラクチン 数値の下がりすぎは×? - 潜在性高プロラクチン血症と診断され、1つ目の病院では「下がりすぎると妊娠しにくくなる」といわれ、毎月血液検査をし、数値が下がったので薬は終了しました(ただ負荷テストではないのは疑問でした)。次の病院では「プロラクチンが下がりすぎてもあまり重要視していない」とはっきりいわれ、患者さんは妊娠するまでずっと薬を飲み続けているようです。下がりすぎるのは不安だと伝え、3カ月に一度負荷テストをすることに。そこで質問ですが、薬は飲み続けることが一般的でしょうか。最初は細かく検査してもらいたいと思っていましたが、検査費もかかりますし、あまり気にしなくてもいいならこのまま飲もうかな、とも思い始めています。
- まとめ
- ●薬を服用して1カ月後くらいから数値が下がり始めます。
●下がりすぎても妊娠に影響はありませんが、できれば正常値の維持を。
プロラクチンとはどのようなホルモンなのでしょうか。
プロラクチンは乳腺の発達を促し、乳汁を分泌させる働きをもっているホルモンで、主に妊娠中と分娩後に多く分泌するようになっています。妊娠前なのに血中のプロラクチン濃度が高値を示す状態を高プロラクチン血症といい、おっぱいが出てしまうなどの症状のほか、月経がきにくくなったり、無月経になってしまうことがあります。授乳中のように卵巣の働きが抑制されることにより、不妊に結びつくといわれているのですね。
高プロラクチン血症になる原因はまだすべて解明されていませんが、数値が100ng /ml以上など極端に高いケースに関しては脳の下垂体腫瘍による影響を疑います。プロラクチンは下垂体の前葉という部分から分泌されており、基本的にはドーパミンというホルモンが制御しています。下垂体の近くに腫瘍ができるとドーパミンを出す力が弱まってうまく制御できなくなり、結果的にプロラクチンが増えてしまう。3桁以上の高値の方はまずMRI検査などで腫瘍の有無を調べてから、不妊治療を始めたほうがいいでしょう。
どのような状態を「潜在性」というのですか?
日中の検査では正常値なのに、夜間に高くなってしまうケースを潜在性高プロラクチン血症としています。潜在性を含め、プロラクチンの数値が高い方はお薬を使って正常値に戻す治療をしていくのですが、数値が高くても月経がきちんときていたり、排卵にも問題がないという場合は特に治療を行わないこともあります。
使うお薬について教えてください。
いくつか種類がありますが、当院ではドーパミン様の効果を促すカバサールⓇというお薬を使っています。一般的には週に1回、1日1錠を服用。1カ月後くらいには効果が現れ、プロラクチンの数値が下がる方が多いですね。それほど強いお薬ではないので、長く服用しても副作用はほとんどありません。
数値が下がりすぎると妊娠しにくくなるという話は本当ですか?
良い質問ですね。はっきりとしたことはわかっていないのが現状ですが、私としては、妊娠の妨げになるということはないと思います。
ただ最近になって、プロラクチンの働きは乳汁の分泌を促すだけでなく、黄体の形成や維持のほか、全身の臓器にも何かしら作用しているのではないかと考えられるようになってきました。そうなると、健康のためには基準値以内に抑えておいたほうが望ましいかもしれません。
服用している時期は定期的に数値を測り、下がりすぎていたらすぐに止めてしまうのではなく、医師の指示の下、服用を2週に1回にするとか、用量を減らすなどして様子を見てはいかがでしょうか。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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