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胚のグレードは悪くないのに着床しないのはなぜ?

コラム 不妊治療

胚のグレードは悪くないのに着床しないのはなぜ?

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2020.1.11

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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。


めいりんさん(35歳)からの相談
▶胚盤胞まで育たない原因
受精卵が全滅でした。クロミッドⓇを1日2回服用し、採卵できたのは7個。1個は変形卵だったので破棄しています。残りの6個のうち、3個は正常受精しましたが、2個は異常受精で破棄、1個は未受精で3日目に破棄しています。病院にはまだ行っていないので、どの程度分割していたのかはわかりません。確率だけでいえば、1個くらいは胚盤胞になるのではと思っていました。原因が何かあれば次の参考にしたいので教えてください。

まとめ
●卵子の質をよくするには、食事やサプリでの体質改善が大切です。
●顕微授精の検討や、卵子を活性化させる方法を相談してみましょう。

お話を伺った先生のご紹介

岩見 菜々子 先生(神谷レディースクリニック)


札幌医科大学卒業。2014年より神谷レディースクリニック勤務。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。


≫ 神谷レディースクリニック

7個採卵でき、3個は正常受精しましたが、胚盤胞まで育ちませんでした。一般的には、どれくらいの確率で胚盤胞まで育つものなのでしょうか?


初期胚の分割率は年齢による差異はあまりないと言われていますが、胚盤胞到達率は年齢によって25〜70%と開きがあり、当クリニックでの35歳の胚盤胞到達率は68・4%。正常受精が3個得られれば、1〜2個は胚盤胞に到達するのが一般的な確率といえます。


胚盤胞まで育たない原因には、どのようなことが考えられますか?


卵子側に要因がある場合、染色体の不分離といって、染色体がきちんと分裂できない状態が原因の一つにあげられます。染色体異常が発生すると胚盤胞到達率は20%前後にまで低下してしまいます。ほかの要因としては、排卵誘発法が合わなかったり、採卵決定時の卵胞サイズが小さすぎる、または大きすぎるなどでタイミングの見極めが適切でないと良好な卵子が得られず、受精させたとしてもその後の発育に問題が生じることがあります。
また、体外での培養に耐えられる胚ではなかった可能性も考えられます。胚は体外培養で多少なりともストレスを受けると考えられていますから、培養液の精度管理や、胚を培養器に入れたままで観察が可能なタイムラプスの導入などが、現在の対策としては有効とされています。
そのほか、無精子症や高度乏精子症の場合は、同じ35歳の卵子に受精させたとしても胚盤胞到達率が低かったりもします。精子の質の低下など男性側に要因がないかも確認をしておくとよいでしょう。


胚盤胞まで育ててから移植したほうがよいですか? その理由も教えてください。


分割胚での移植では胚盤胞に到達できないような胚を選択する可能性もあります。分割期の胚はその後の胚発育の見極めがやや難しいのです。35歳前後の良好胚盤胞を単一移植した場合、妊娠率は40〜50%で、分割胚を複数移植した場合と同等の結果が得られ、かつ、多胎妊娠率を下げることにもつながります。


卵子の質をよくする方法はありますか。


卵子の質の低下の要因には、子宮内膜症や糖代謝異常などの疾患、喫煙、鉄欠乏性貧血などの栄養状態、卵子にかかる酸化ストレスと抗酸化力のアンバランスなどが考えられます。食事の見直し、サプリメントの活用などで体質改善をしながら良好な卵子の獲得を目指すのが効果的です。


今後へのアドバイスをお願いします。


今回、卵子の活性化がうまくできなかった可能性も考えられます。次回は顕微授精を行うと受精率も高くなりますし、卵子の活性化につながるカルシウムイオノフォアを用いた処理ができないか、相談してみるといいでしょう。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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