子宮内膜が厚くならず移植にたどり着きません
コラム 不妊治療
子宮内膜が厚くならず移植にたどり着きません
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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- かおりんさん(36歳)からの相談
▶子宮内膜が厚くならない - 4回目の採卵を行い、初めて3個凍結できました。その周期はOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のために移植を見送りました。次の周期からエストラーナⓇテープを使用しましたが、子宮内膜はMAXで6mm。デュファストンⓇを使用したら5mmになり、移植はキャンセル。次の周期は少量のフォリルモンⓇを使用しましたが、卵胞が10個くらいできてしまい、内膜は5mm。なかなか移植にたどり着きません。他に方法はありませんか。
- まとめ
- ●子宮内膜が薄い人は、子宮の手術や自然流産、加齢が関係している可能性が。
●標準的な治療法で子宮内膜が厚くならない場合は、実験段階の新しい治療法もあり。
移植する場合、子宮内膜の厚さの目安を教えてください。
正常な月経周期では、子宮内膜の厚さは周期的に変動しています。子宮内膜がもっとも薄い月経期から排卵期に向けて厚くなり、排卵すると子宮内膜の厚さが維持されます。移植する場合は「自然周期療法」や「ホルモン補充周期療法」という方法を用いて、着床しやすい子宮内膜に整えていきます。
しかし子宮内膜の厚さは、移植の成功に関係ないという報告もあれば、7〜8mm未満になると妊娠率が低下するという報告もあります。当院では7mm以上の厚さを、移植の目安にしています。
子宮内膜が厚くならない原因や共通する特徴はありますか?
妊娠中絶時の外科的な処置、子宮内膜ポリープや子宮筋腫の切除手術、自然流産などが原因と考えられ、加齢も原因となる場合があります。
子宮内膜を厚くする方法について教えてください。
一般的には、女性ホルモン製剤を使用したり、排卵誘発剤で自分の卵胞を育てて、自分のホルモンを使って子宮内膜を厚くしていきます。それでも厚くならない場合はビタミンEや漢方薬を内服します。
そのほかに、実験的な2つの方法もあります。一つは「顆粒球コロニー刺激因子製剤(GーCSF)」を使った方法です。GーCSFは白血病や抗がん剤治療などで白血球が減少している方に使用するお薬で、白血球を増やす効果があります。これを移植前の子宮の中に注入します。当院では排卵前や黄体ホルモン補充療法を開始する数日前に1回投与しています。
もう一つは「シルデナフィルクエン酸塩」を使う方法です。もともと男性の血流をうながして勃起不全を改善する薬ですが、女性では子宮の血流を維持する効果が期待できます。月経期から移植の数日前まで継続して自分で腟内に使用します。
どちらの方法も保険適用外で、実験的治療のために治療効果や副作用などの安全性に関するデータは揃っていませんが、子宮内膜が厚くなり、妊娠率が増加したという報告があります。
かおりんさんにアドバイスをお願いします。
まだ2周期しか治療をされていませんので、先に紹介したいずれかの方法で子宮内膜が厚くなる可能性はあると思います。さらに鍼灸やレーザー治療などの統合医療で子宮の血流を改善するのもいいでしょう。
移植をキャンセルすると、次の移植まで1カ月待つことになりますが、大切な受精卵を使ってしまうよりはいいと思います。せっかく移植するのですから、あらゆる方法を試して、妊娠につなげていただきたいですね。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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