初期流産後にしたほうがいい検査はありますか?
コラム 不妊治療
初期流産後にしたほうがいい検査はありますか?
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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。
- くろさん(38歳)からの相談
▶次回の移植までに必要な検査はありますか? - ホルモン補充周期による胚盤胞移植をして陽性ののち、妊娠6週1日で心拍確認できたのですが、次の日に全身じんましんが出て苦しみました。発症から5日目には治ってきましたが、まるで胎児を拒絶しているかのようでした。その後、7週3日の妊婦健診で心拍停止を確認。この件で何か検査できることはないでしょうか。妊娠初期で流産するのは2回目です。ただし、1回目は21歳の時で自然妊娠でした。期間も空きすぎているのと、その後タイミング法から人工授精、体外受精とステップアップして、各治療5回程度挑戦しましたが妊娠しなかったので、今回は貴重な陽性反応でした。これ以上、凍結胚盤胞も無駄にしたくありません。
- まとめ
- ●20代の時の流産と今回の流産、関連性はないと思います。
●次の移植の前に子宮環境の洗い出し、再評価を。
初期流産2回目ということを少し気にかけていらっしゃるようですが。
現在38歳で、1回目の流産は21歳の時ということ。期間がかなり離れているので、これについての関連性はないと思います。くろさんは抗セントロメア抗体が陽性だそうですが、それ以外に生殖免疫学的な検査は受けられているのでしょうか。習慣性流産ではないと思われますが、もし気にされているのなら不育症の検査を受けてみることをおすすめします。不育症の検査は免疫系因子などを中心に調べることができます。
抗セントロメア抗体は細胞分裂の際に紡錘糸がつく部分に付着します。そのために細胞分裂を妨げる可能性があると考えられています。先天性のものだと思いますが、これが不妊や流産の直接的な原因になっているかどうかはわかりません。
ほかに考えられる原因や、受けたほうがいい検査はありますか?
不育症とはちょっとずれるかもしれませんが、慢性子宮内膜炎や子宮内フローラの検査など、これまでと違った視点で着床障害の原因を探ることを検討されてもいいかもしれません。
当院でも、比較的良好な胚を何回戻しても妊娠されない方にはそういった検査をおすすめしていますね。なかには「受精卵を無駄にしたくないので移植前に受けたい」という方もいらっしゃいます。
検査をして慢性子宮内膜炎の診断が出た場合は、抗生物質のビブラマイシンⓇの内服が主な治療法になります。子宮内膜に炎症があると着床率が明らかに下がるので、調べてみる価値はあるでしょう。
また、子宮内フローラ、いわゆる子宮内の細菌バランスが乱れている場合は、ラクトフェリンやラクトバシルス(乳酸菌)のサプリメントを2~3カ月飲んで環境が改善したら妊娠されたというケースもあります。次の移植の前に子宮環境の再評価を。まだ凍結した胚盤胞が残っているとのこと。良好なものであれば、着床環境が解決したら一気にうまくいくかもしれません。
まだ調べられること、改善できることがあるのですね。
くろさんは身長153cmで体重は48 kgと標準体型。肥満ややせすぎではないのでその点は心配ありません。ですがほかに内科的なチェックをしていないようならきちんと健康診断を。糖尿病の傾向があれば、排卵や胎児に影響が出ることがあります。
妊娠するためにまず必要なのは健康体でいること。21歳の時には自然妊娠されていますが、年齢を重ねて体は変化してきていると思います。食事や運動など日頃の生活習慣も見直して、万全の体制を整えましょう。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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