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受精障害や胚の分割不良はすべて卵子の老化のせいなのでしょうか?【40代の不妊治療】

コラム 不妊治療

受精障害や胚の分割不良はすべて卵子の老化のせいなのでしょうか?【40代の不妊治療】

体外受精に臨んでも受精をしなかったり、胚の成長がうまくいかないのはやはり高齢による卵子の老化が原因なのでしょうか。臼井医院不妊治療センターの臼井先生に詳しいお話を伺いました。

2020.1.20

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※2019年11月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter」の記事です。


アンジーさん(45歳)からの相談
●相談内容
5月に1回目の体外受精を行いました。この時は3個の卵子が採れました。すべて媒精で自然受精しましたが、採卵5日目で1個は分割が停止、2個は桑実胚になるものの気泡ができたり、崩れたりして育ちませんでした。7月の2回目の体外受精では8個採卵できましたが、媒精ではすべて受精せず、急遽1個を顕微授精したそうですが、これも受精しませんでした。医師からは「一度目に自然受精できたものが、二度目にすべてできないケースはかなりまれ」と聞かされました。一度目の卵子の分割不良、二度目の受精障害は卵子の老化のせい? それなら三度目を試みても良好な結果が得られることはできないのではないかと不安です。試みる価値はありますか?

●これまでの治療データ

【検査・治療歴】
ホルモン検査、精液検査、卵巣の状態を確認する検査を実施。「卵巣、子宮とも年齢の割には活発で妊娠には問題なし」といわれる。治療歴は人工授精1回、体外受精2回。

【不妊の原因となる病名】
夫の乏精子症

【精子データ】
7月に2回目のIVFをした際の数値は、[調整前]液量:2.6ml、精子数:2800万/ml、運動率:50%、奇形率:35.7%、[スイムアップ後]液量:1ml、精子数:80万/ml、運動率:100%、奇形率:0%

【サプリメントの使用】
DHEAの25mgを1日2錠、L-カルニチン、葉酸

まとめ
●正常受精した低刺激法が合っているのでは。
●受精障害があるなら顕微授精の選択を。
●初期胚の新鮮胚移植という手もあります。

お話を伺った先生のご紹介

臼井 彰 先生(臼井医院不妊治療センター)


東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。

≫ 臼井医院不妊治療センター

ーーまず、受精障害についてですが、2回目の体外受精では1個も受精しなかったそうです。このようなことはまれなのですか?


1回目の体外受精では3個ともすべて受精したということですね。よくあることではありませんが、時々そのようなケースは見られます。特に年齢が上がってくると珍しいことではありません。ただ、若い方でも受精しないケースはあります。毎回、受精の状態が違う方もいるので、その周期に採れた卵子の状態によるのではないでしょうか。卵巣刺激法によっても多少違ってくると思います。


ーーこの方は刺激法が合っていなかったということでしょうか。


どのような刺激法を選択したのか詳細な記述はありませんが、2回目は卵子が8個採れたということですから、ある程度強く刺激をしたはず。1回目の3個の時は低刺激だった可能性がありますね。45歳という年齢を考えると、もしかしたらこの方の場合、刺激を強くするとあまりいい卵子ができないのかもしれません。高刺激をすれば必ずいい卵子が採れるとは限らないのです。
では、どんな方法を選べばいいのか。最初からベストなやり方が見つかるわけではなく、それはいろいろ試してみるしかない。自然に近い形、低刺激、アンタゴニスト法など、試して結果が思わしくなかったら、次の方法にトライしてみる。一つひとつ手探りで進めていくしかないと思います。


ーー45歳という年齢、2回の失敗……。今後、妊娠は期待できますか。


一般的には、45歳の年齢で妊娠して赤ちゃんを得られる確率は1%といわれています。確かに厳しい数字ですが、可能性はゼロではありません。
 当院でも45歳で妊娠・出産された方は何人もいらっしゃいます。年齢の割に卵子がたくさん採れた方もいるし、なかなか採れない方もいました。高齢でも妊娠された方の共通点を探ってみると、その周期に採った卵子の状態がすごくよかったということです。状態が悪いものがほとんどでも、1個でもそのような卵子に当たれば妊娠する可能性はあると思いますね。
少ないチャンスを生かすためには刺激法の選択も重要。受精がうまくいったことを考えると、やはりこの方は強い刺激でたくさん卵子を採る方向ではなく、低刺激で少数精鋭を目指していったほうがいいかと思います。
また、担当の先生から次は顕微授精で臨むとご提案されたようですが、当院でもその形をおすすめすると思いますね。精子の状態もあまりよくないので、確実に受精させることを考えたら顕微授精が望ましいかと思います。


ーー受精卵の分割不良についてはどう思われますか?


途中で分割が停止してしまったり、きれいな胚にならないということですね。これも年齢が大きく影響していると考えられます。この方がおっしゃるように卵子の老化によるものでしょう。治療されている施設は胚盤胞まで育たないと移植をしない方針なのでしょうか。培養してもなかなかうまく育たないようでしたら、初期胚で移植するという選択もあるかと思います。キャンセル続きで移植ができなければ、妊娠するチャンスもなくなってしまうということですから。
当院の場合、もし3個卵子が採れたら、2日目、3日目できれいな胚があったら1個キープして、残りは培養していくと思います。
初期胚で新鮮胚移植をするというのも1つの方法。その際、強い刺激をしていると新鮮胚での移植は難しいので、刺激法も考えていかないといけないですね。初期胚より胚盤胞を移植したほうが妊娠率は高いと思われるかもしれませんが、高齢の方でも初期胚で結果を出されているケースもあるので、検討されてみてはどうでしょうか。


ーー45歳以上の高齢で不妊治療に臨む時の心構えについてアドバイスをお願いします。


受精率がよくない、胚の成長が不良など、悪いことを思い悩んで落ち込むのではなく、ではその状況を少しでもよくするためにはどうしたらいいか、前向きに考えていくことが大切だと思います。そのためにはこれまでとは違う方法を選択したり、やっていないことにチャレンジしたり……。今できるすべてのことをやってみる。
アンジーさんはサプリも積極的に活用されていますが、それも悪くないと思いますね。
当院でも、採れる卵子数が少ない方にはDHEA、受精卵の質が良くない方にはメラトニンをおすすめしています。すべての方に確実に効果が出るとはいえませんが、やってみる価値はあるのではないでしょうか。
そのように積極的に進めることは大切ですが、今の年齢で妊娠・出産する確率はとても低いという現実も頭の片隅に置いておくこと。漫然と続けるのではなく、あと2回、3回と区切りをつけて治療に臨むことも必要だと思います。


先生から
年齢の影響は当然ありますが、刺激法や移植法を工夫すれば
妊娠の可能性は出てくるはず

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.44 2019 Winter
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