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不妊治療中の心のケアの大切さについて

インタビュー 不妊治療

不妊治療中の心のケアの大切さについて

2020.2.7

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不妊治療を始めたことで不安や苛立ちが募り二人の関係がギクシャクしてしまう、さらには周りの人間関係にまで影響が及ぶ、といったことは、決して珍しい話ではありません。

妊娠を望んでいるカップルの6組に1組が妊娠の過程でなんらかの困難を感じていると言われる時代。素敵な人と出会い、結婚し、妊娠するという子どもの頃から当然のように思い描いてきた人生のステップがスムーズにいかないことへのフラストレーション、さらには、治療をしたとしても妊娠が100%保証されているわけではないというもどかしさ。そして「周りがみんな」妊娠しているのに「私だけ」妊娠できない、と感じてしまう孤独感。妊娠しにくいという状況を経験して不妊治療に至るまでの心の変化は、まさに感情のジェットコースターです。

心と体は繋がっていますから、治療中の心のケアはとても大切。また、治療を卒業されて新しいステージに進まれるにあたっても、心をしなやかで健康な状態に整えておくことは、とても大切です。
今回のコラムでは、不妊治療中の心のケアの大切さについてお話します。


 


不妊治療を受けるカップルの揺れ動く心


“妊娠が難しい”という現実に直面したとき、傷つき辛い気持ちになってしまうのは男性も女性も同じ。ただ、その受け止め方や感じ方には男女で差があり、異性間カップルである場合、どうしても女性の方がより責任を感じ、治療の辛さを1人で背負ってしまいがちです。

女性は、妊娠を意識して母性のスイッチが入ると、「妊娠したいのにできない」「していない」という現実に対して責任を感じやすい傾向にあります。また、治療でホルモン剤を使用する場合にはメンタルに影響があり気持ちのアップダウンが大きくなることも。さらに、男性が治療に積極的でなかったり、協力的でない場合にも、女性は孤独を感じ治療のプレッシャーやストレスを1人で抱えてしまうことが多いようです。不妊治療を通してカップルの絆が深まることもあれば、治療のストレスや考え方の違いで2人の心の距離が開き、関係が壊れてしまうこともあるのです。パートナーとの絆を深め、心をひとつにして治療を進めていくためにはやはり「コミュニケーション」が欠かせません。

親になるということについて、また、治療はどこまで進めたいのか、子育てはどのようにしていきたいのかなど、新しい人生のステージに向けた話し合いを深めていくことはとても大切です。1人で抱え込まず、お互いに素直な気持ちを伝え合える環境づくりにも取り組みましょう。


 


不妊治療を受けるという決断


「不妊」という診断が下ると、心に深い傷を受けてしまいます。不妊の原因は分からないことも多いのですが、にも関わらず「自分の何がいけなかったのだろう」という原因探しをしてしまったり、妊娠したいけれどなかなかできないということで、自分を責めてしまったり。妊娠している人と比較して、自分には価値がないと卑下してしまうこともあります。そんなとき、ほんの半世紀前までなら不妊治療という選択肢はありませんでしたが、医療が進歩した現在、妊娠の願いを叶えるさまざまな方法があります。

不妊の診断を受け、辛い思いをしたけれど「それでもやっぱり妊娠したい」と希望する場合は、クリニック選びが重要です。どのような方法があるのか、メリットとデメリット、成功率や治療費用をしっかりと比較検討し、心から信頼できるクリニックを選ぶことは、そのあとに続く治療のプロセスでの心の負担を軽減してくれます。

また時には、不妊治療に対する漠然とした思い込みによってストレスが強まっていることもあります。そのような場合には、クリニックや不妊治療のカウンセリングを行うプロのサポートを受け、ぎゅっと抱えている思い込みを1つずつほぐしてもらうことでストレスが大幅に軽減され、不妊という診断や、不妊治療という選択を前向きに捉えられるようになります。


 


不妊治療中にカップルが向き合う感情の変化


繰り返しになりますが、自らの不妊と向き合ったとき、これまで当然だと思っていたことが自分にはできないという無力感、不安、罪悪感、悔しさ、フラストレーションを抱えてしまうカップルは、少なくありません。このような場合、治療の経験者など信頼して話をできる人が身近なところにいるだけで、居心地の悪い気持ちが和らぎ、感情のコントロールがしやすくなるものです。

不妊治療というステップに進むことによって、性生活や交友関係に影響がでることもあります。例えば、妊娠中の友人や子どものいる友人と疎遠になってしまったり、セックスの目的が妊活だけになってしまう、あるいは治療中であることが響いてセックスレスになってしまう、などです。

また、妊娠しているかどうかが分かるまでの期間は、期待と不安で胸がいっぱいになります。結果がポジティブなものであれば最高の幸せが得られる一方、残念ながらうまくいかなかった場合には「治療をしても良い結果が出ない…」「妊娠なんてできないんだ…」「妊娠できない私は女性として不十分なんだ…」というような自責の思いや、自ら不安や罪悪感を煽ってしまうような言葉が、心の中に溢れてしまうもの。ですから、妊娠判定でネガティブな結果が出てしまった場合には、とりわけ心のサポートが大切です。

パートナーが「また次頑張ればいいよ」と気楽に構えていたり、すでに子どもを持つ友人から「次はきっといい結果が出るよ」と励ましの言葉をかけられたりすると、「誰も私の気持ちを分かってくれない」と悩んでしまうこともあるでしょう。そのようなときに、心のケアのプロフェッショナルであり、パートナーでも友人でもないカウンセラーという第三者の存在は、中立的な立場ながらしっかり寄り添って話を聞いてくれる重要な心の拠りどころとなります。


 


治療プロセスでのカウンセラーという存在の重要性


最新の研究によると、不妊治療によるストレスや苦しみは、がん患者のそれにとても近いということが明らかになっています。

不妊治療に対しての世間の理解がまだまだ乏しいため身近な人にも打ち明けられなかったり、仕事がある場合は両立のストレスを感じる場面もあるかと思います。また日本では社会にカウンセリングがまだまだ浸透していないため、せっかくカウンセリングの体制が整っていても、「カウンセリングは心の病をケアするもの」という認識から、活用を尻込みする方も少なくありません。

ですがカウンセリングは、あなたが弱いから受けるものでも、あなたに自分で解決する力がないから受けるものでもありません。これまでお話したとおり、治療中は感情のジェットコースターに乗っているような状態なわけですが、カウンセラーというプロが入ることで、誰にも意見されることなく内側に抱えている感情を出したり、必要のない思い込みを手放したり、相談を通じて気持ちを整理していくことができるのです。心のケアを考えることは、きちんとセルフケアができている証でもあります。不妊という現実に向き合い治療を進めていく過程は、それだけでも険しい道のりに感じられるもの。全て1人で抱えようとしなくて良いのです。

クリニック選びの際には、カウンセリングのサポートの有無や、必要な場合には紹介してもらうことができるのかといった点も、ぜひリサーチしてみてくださいね。


 


お話を伺った先生のご紹介

ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生


生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。

≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)

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