薬を“飲み間違えた”場合、どんな影響がありますか?
コラム 不妊治療
薬を“飲み間違えた”場合、どんな影響がありますか?
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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。
- テンパリストさん(33歳)からの相談
▶︎薬の飲み間違えについて - 夫がEDのため2人目を不妊治療中で、今日初めてAIHに挑戦。ところが、処方されたデュファストンⓇという薬の飲み方を間違えてしまいました。「朝・夕」となっていたので翌日の午前中に服用した後、よく見ると添付のメモに「指示があるまで飲まないでください」とあるのに気づきました。主治医のお声がいつも小さいこともありますが、聞き返さず、メモ書きを見逃した私の不注意! 早く効いてほしいとの焦りもあって間違えてしまいました。指示がある前に服用したことで、何か弊害はありますか?
デュファストンⓇとは、どのような働きをする薬?
女性ホルモンの一つである黄体ホルモンを補う薬です。相談者のテンパリストさんは、おそらく黄体機能不全との診断で処方されたのでしょう。この薬には子宮内膜を成熟させ、胚の着床を促す働きも期待されるので、ゴナドトロピン製剤などの排卵誘発をした際にもよく用いられます。一般的には朝・昼・晩の毎食後に1錠を服用しますが、子宮内膜症が疑われる方には朝・晩2錠といった飲み方で処方されることもあり、おおむね1度に10日分が処方されます。
「指示があるまで飲まないでください」との意味は?
当院では、黄体ホルモンの補充時期としては、AIH(人工授精)後なら“基礎体温の上昇が認められてから”が適切と考えています。でも実際は、体温を測る習慣のない方、体温の変化が微妙な方も少なくなく、おおむねAIH後1~2日後に服用していただくことが多いです。さらには、「AIH当日に内服開始する」という文献もあり、飲むタイミングの判断はまちまちです。その場で、それができなかったのなら後日電話で、ぜひクリニックに問い合わせてください。
また、AIHは自費で、当日に処方される薬も自費。しかし、予めの診断で、黄体機能不全として事前に処方された薬であれば、クリニックによっては保険適用となります。「指示があるまで飲まないで」とは、AIH後の適切なタイミングで内服開始を指示するつもりだったのかもしれません。
デュファストンⓇを、指示がある前に飲んで考えられる影響は?
排卵、子宮内膜への影響の2つが考えられます。今回HCGを投与されているならば大丈夫ですが、そうでない場合はLHサージが抑制されて排卵が起こらないことも考えられます。子宮内膜に関しては、着床に適したタイミングが前倒しになる可能性も考えられますが、これについては個人差が大きいので、それほど神経質にならなくてもよいでしょう。前述にあるように、「当日に内服開始する」という文献もあるので、たった1度のフライング服用を、気に病むことはありません。その場で、それができなかったのなら後日電話で、ぜひクリニックに問い合わせてください。
担当医の言葉が聞き取りにくいともありましたが、薬の飲み方などは重要なので、確認したいことはその場で、それができなかったのなら後日電話で、ぜひクリニックに問い合わせてください。
また、AIH妊娠例の多くは最初の3~4周期で得られるので、多くとも4~6周期をメドにIVFへのステップアップも考えてみましょう。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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