人工授精で誘発するたびに卵巣が腫れてしまいます
コラム 不妊治療
人工授精で誘発するたびに卵巣が腫れてしまいます
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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。
- ぶっちちさん(30歳)からの相談
▶︎多囊胞性卵巣症候群(PCOS)に関して - 多囊胞性卵巣で、昨年AIHした時はHCG-HMGで誘発。左右卵巣合わせて10個以上卵胞があり、OHSSに。結果は子宮外妊娠で右卵管を切除。その際に左右卵巣の卵胞の焼灼術も行いました。今回、HCG注射4回とクロミフェンを使用して6回目のAIHを実施。その後の排卵チェックでは右卵巣が腫れている、左卵巣に2個卵胞があるといわれました。排卵前には左に小さな卵胞が多数あったとか。誘発するたびに今後もOHSSになるのでしょうか?
多囊胞性卵巣で排卵誘発をするとOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こすようです
このような体質の方にHCG注射を打つ意味がわかりませんね。最低限の用量を使うのならいいのですが、今回は4回も注射したとのこと。HCGは薬の半減期が長いので、いつまで経っても次の卵胞、次の卵胞……と排卵していってしまいます。
3個くらいの卵胞で抑え、ブセレキュアⓇを使って内因性のLHサージで排卵させれば、OHSSは防げたのではないでしょうか。内因性のLHサージなら一度ポンと出て終わり。複数個排卵しても余分なものは遺残卵胞として残るだけなので、卵巣は腫れないと思います。
左の卵巣から排卵を促すためにHCGーHMGという少し強めの刺激をしたようです
両方で排卵させようと刺激を頑張っているのはわかります。右の卵管がなくても右の卵巣から排卵した卵子を左の卵管采がキャッチして取り込むということもよくありますから、過排卵にする必要はないのでは。
強めの卵巣刺激でたくさん卵胞ができてしまうとOHSSになるリスクが高まります。このような方は自己注射でお薬の量を抑えて、成熟させる卵胞の数を1個、2個にするというのも一つの方法ではないでしょうか。
以前、焼灼術を行ったため今は多囊胞性卵巣ではないという認識のようです
卵巣の表面にレーザーなどで細かい孔を開けるドリリングという治療のことですね。卵胞の発育をよくしたり、排卵しやすくさせる目的で行われますが、その効果は一時的で、数カ月しかもちません。また、この治療はAMH値が高い人向けで、低値の人には効かないといわれています。ぶっちちさんはどのくらいのAMH値なのでしょうか。
現在も多囊胞性卵巣の体質があるようですから、その状況を改善するために一度、インスリン抵抗性の程度がわかるHOMAーR指数を調べられてみては? 数値が大きいようならメトホルミンというお薬を使っていけば、もっとクロミフェンが効きやすくなるはずです。
それからぶっちちさんは身長153cm・体重58kgと少し肥満ぎみのようですね。食事や運動など生活習慣を見直して体重をコントロールするだけでも、排卵障害改善に効果があると思います。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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