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夫に喜んでほしくて粛々と不妊治療を続けた

コラム 不妊治療

夫に喜んでほしくて粛々と不妊治療を続けた

健康な体だから妊娠できるとは限らない。
信頼できるドクターと出会い、着床不全を乗り越えて妊娠できました。

2020.6.10

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健康な自分が不妊治療をするとは思っていなかったというM子さん。
幸い、波長の合うドクターと出会うことができ、34歳から人工授精5回、流産の経験も乗り越え、5回目の胚移植で、無事妊娠に至りました。


※2020年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.46 2020 Summer」の記事です。


 


3年経ってもできなくて不妊治療を開始


M子さん(36歳)がご主人のY樹さん(36歳)と出会ったのは19歳、学生時代のバイト先でした。その後、交際を続けて27歳で結婚。当時はまだ20代。子どものことはまったく考えていませんでした。
30歳を過ぎてから「そろそろ子どもも~」と意識し始めたものの、3年経っても一向に兆しはありません。
「特に婦人科系疾患もないし、生理も順調で、自分はすごく健康だと思っていたのでできないことが意外でした」

そして2018年、34歳で不妊治療を始めることにしました。
「どうしても子どもが欲しいというよりは、夫のためにも、子どもがいるほうがこれから先の人生も楽しくなるだろうなと考えてのことでした」

病院は無理なく通いたかったので、自身の生活圏であり、かつ職場にも近いレディースクリニックを選びました。年齢を考慮し、タイミング法を試すよりすぐ人工授精から始めたほうがいいと言われ、連続で5回行いました。しかし、うまくいきませんでした。


 


ERA検査で着床しない原因が判明


体外受精へステップアップしたのは2019年4月。「注射が怖かったのでなるべく痛みを少なくしたいと先生に伝えたら、注射の数も少ない低刺激法にしてくれました」。
採卵のため、ゴナールエフⓇという皮下注射を打ち、クロミッドⓇも飲みました。採れた卵は3個。この卵で3回、移植を試みるもいずれも着床にはいたらず、陰性でした。

なぜ着床がうまくいかないのか。原因を探ったほうがいいと先生にすすめられるまま、ERAなど3種類の検査を受けました。これは移植する当日の内膜が着床可能な状態にあるかどうかを、子宮内膜を採取し、遺伝子レベルで調べる検査です。

「子宮内膜に問題はなかったのですが、着床の窓が若干ずれていたみたいです」
着床の窓とは、受精卵が子宮内膜に着床するのに最適な時期のこと。移植日が着床の窓とずれていると妊娠しづらいのです。
「検査費用はかかりましたが、なかなか妊娠しない理由がわかり、そのための対策を考えてもらえたので受けてよかったです」

2回目の採卵はショート法に切り替え、卵も11個採れました。着床の窓に合わせて移植したことで4回目の移植は無事成功。陽性反応が出ました。しかし、初期流産してしまいます。
「ショックもありましたが、流産によって、次の移植までに時間が空いてしまうことに焦りを感じました。もう35歳になっていたので時間がもったいないと思ってしまったんです」
流産から2カ月後、再び移植。陽性反応が出て5回目にしてようやく妊娠にいたりました。
「ただ、1回流産しているので本当にこのままうまくいくのか心配で。12週に入った頃にようやく安心してきましたね」


 


大変だったのは2回目の採卵


不妊治療を振り返り、何より大変だったことは、体外受精のための、2回目の採卵だったとM子さんは言います。
「1回目の採卵は低刺激法だったので自然な感じでできたのですが、2回目は卵巣刺激の方法を前回よりもやや強めのショート法に切り替えたんです。毎日自己注射でHMG注射を行ったそうです。それによって今度は11個もの卵が採れました。それはよかったのですが、この注射を打つと採卵の翌日、お腹に水が溜まって痛いんです。これが一番つらかったですね」

しかし、それ以外にはほとんどストレスはなかったとM子さんは振り返ります。というのもまず先生に恵まれていたのが大きかったと言います。
「とても波長が合うというか、穏やかで常に平常心で接してくれる方でした。具体的な数値や専門的な難しいことはほとんど言わないで、私がやるべきことをわかりやすく伝えてくれました。ああ、この先生の言うとおりにしていればいいんだと全面的に信頼し、すべてを委ねていましたね」

M子さんは睡眠不足にならないように気をつけたものの、食事も特に気を配ることはしなかったそうです。
「とにかく先生の言うことを聞くのが一番と思っていました。妊娠後も先生がすすめてくれる葉酸サプリを飲むぐらいで、自分で選んだサプリや漢方を飲んだりしませんでした」


 


夫や職場など周りの協力にも恵まれて


ドクターの言葉を信じることと、もう一つM子さんが実践したこと。それは不妊治療を深刻に受けとめず、ストレスをためないことでした。
「周りにも不妊治療を経験している友人が何人かいました。念願の子どもを授かったものの、不妊治療の時のことはつらすぎて思い出したくないという人もいました。でも、私はなるべく気楽に構えるようにしていました。夫のためにも子どもを授かりたいと思いつつ、できなかったらそれでもいいかなって思ってたんです。何より変に自分を追い込んで、ストレスを抱え込んでしまうと余計に子どもはできないだろうなとも思ったので」

そんなふうに思えたのはご主人・Y樹さんのお陰だとM子さんは言います。
「夫からプレッシャーをかけられることは一度もなかったし、休日はいつものように一緒に出かけたり、時間があれば、病院にもついてきてくれました。考えたら19歳からの長いつき合いというのもあって、夫婦というよりどこか男友だちみたいなところもあって。今でもすごく居心地のいい存在です」

また、職場の応援も心強かったそう。
「販売の仕事に携わっているのですが、病院が近いこともあり、就業中に仕事を抜けて通院することも許してもらっていました。むしろ頑張れとみんなが見守ってくれていて。本当にありがたかったです」


 


出産は自身の体が要。躊躇せずステップアップを


唯一、後悔があるとしたら「体外受精にもう少し早い段階でステップアップすればよかった」ということ。
「後になって気づいたのですが、妊娠は体の若さが勝負じゃないですか。だからそう思ったんです」
不妊治療に正解はありません。自分が納得しながらステップアップしていくしかないのだとM子さんの話を聞きながら思います。

現在、妊娠21週目のM子さん。生まれてくるのは男の子の予定。「どんな子に育てたいですか」とお聞きすると「健康で、オタクでもいいので一つのことを突き詰める、例えば、さかなクンみたいな人になってくれたらいいな」
ほどよく力を抜き、ドクターを信じて粛々と自分のやれることをやる。それがまさに理想的な不妊治療なのかもしれません。


 


 



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.46 2020 Summer
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