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いつかは子どもに、卵子提供を受けて誕生した事実を話すべき?

インタビュー 不妊治療

いつかは子どもに、卵子提供を受けて誕生した事実を話すべき?

2020.8.20

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卵子提供を受けて生まれてきた子どもに、将来、そのことを話すべきか否か。話すとしたらどのように伝えるべきか。――卵子提供をご検討されている方や実際に治療中の方は、誰しも、少なくとも一度は考えを巡らせる問題ではないでしょうか。今回は、このような心配ごとにどのように向き合うべきかについて、国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。


 


いずれは、生まれてくる子どもに、卵子提供を受けたことを話した方がいいのでしょうか?


答えは「はい」であるとも言えますし「いいえ」とも言えます、なぜなら、いい・悪いと一律に判断できる問題ではないからです。将来子どもに話すかどうかは、カップル、もしくはご本人の自由意志に任されていますが、決断を下すに当たっては、社会的・文化的な環境も考慮にいれる必要があります。

話をするかどうかを決めるときに最も大切なことは、「子どもの幸せ」です。卵子提供のおかげで大切な命を授かったことを話すとき、その事実は子どものアイデンティティにポジティブな影響を与えることもあれば、ネガティブな影響を与えることもあります。
例えば卵子提供が禁止されていたり、社会的・文化的な受け入れが進んでいない国にお住まいだとしたら、事実を聞かされた子どもはどう感じるでしょう?「事実」を知り受け入れることに、とても苦しい過程を伴う可能性があります。ですが逆に、子どもを授かる選択肢の1つとして卵子提供がごく自然に存在する国にお住まいの場合はどうでしょう?

このように、子どもの捉え方は文化的な背景によっても大きく変わってくるものです。


 


子ども自身へ伝えるかどうか決断する際に、最も優先するべきことは何でしょう?


最優先させるべきは、大人側の「都合」ではなく子どもの幸せです。卵子提供を受けたと伝えないままでいることに対し、家族なのに「隠し事」をしていると感じ不誠実なように思えたり、「嘘をついている」ような罪悪感を感じてしまったり。そうした親の気持ちをスッキリさせたいからという理由で話をすることはお勧めしません。

前述のとおり、生活環境や文化背景を十分に考慮するだけでなく、子どもの性格や考え方なども含めて検討していくことが大切です。

また補足ですが、卵子提供をスペインでお受けになる場合、誕生する子ども自身が将来ドナーについて知りたいと思っても、知ることはできませんので、卵子提供を考えられている方は、このことも考慮に入れてご検討ください。スペインでは配偶子の提供は匿名で行われています。つまり、提供を受ける患者はもちろん、将来生まれてくる子どもも、ドナーの個人情報を閲覧したり調べることは不可能なのです。治療をされる患者にドナーをご紹介する際には、血液型や年齢など基本的な身体的・免疫学的特徴についてお知らせするのですが、これは子どもが将来ドナーを知りたいと思う場合でも同じです。将来的に法律が改定された場合であっても遡って適用されることはありませんので、匿名のままとなります。


 


子どもに卵子提供のことを伝えると決めた場合、どのような方法で話をするべきでしょうか?また、話をすることを避けるべき年齢はありますか?


幼少期の早い段階から自然な方法でスタートしたいという場合には、子どもの成長具合や理解力を考慮して、始めどきを探ってみましょう。私たちのクリニックには、不妊治療について理解を促す子ども向け絵本を数冊用意しており、中には配偶子の提供に関する内容を含むものもあります。幼少期なら、こうした絵本を活用するのも一案です。本を探すのが難しい、日本語の絵本が見つからない!という場合でも大丈夫。家族でオリジナルの本を作って一緒に読みながら、治療や提供が必要だったこと、それをサポートしてくれた心優しい女性がいること、心から望まれて生まれてきた命であること、などを読み聞かせてあげる方法があります。

子どもによっては幼少期ではなく「もう少し成長を見守ってから」と考えることもあると思いますが、その場合絶対に避けた方がよいタイミングがあります。それは思春期です。子どもから大人になっていくとても繊細で多感な年頃ですから、卵子提供により誕生したことをネガティブに受け止めてしまったり、アイデンティティクライシスに陥ってしまう可能性があるためです。


 


ニチケ・マルクス先生よりまとめ


以上のように、提供を受けたことを話すか否かという問題については、ご家族ごとに環境や状況を考慮した上で、子どもの幸せを最優先にして答えを出すべきです。とはいえ家族のあり方にも関わる大きな決断ですから、なかなか答えが出せないという時には、不妊治療専門のカウンセラーに相談をしてみるのもいいかもしれません。大切な決断を下すに当たって、胸の内を打ち明けながら専門家の意見を聞くことは、非常に役に立つのではないかと思います。


 


お話を伺った先生のご紹介

ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生


生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。

≫ Amrita Fertility Japan

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