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良好胚を移植したのに妊娠しないのはなぜ? 子宮の状態と着床の関係について

インタビュー 不妊治療

良好胚を移植したのに妊娠しないのはなぜ? 子宮の状態と着床の関係について

グレードの良い胚を移植しても、なかなか妊娠しない……。その原因として染色体異常など胚の問題によるものもありますが、胚を受け入れる子宮側にはどのような要因が考えられるのでしょうか。峯レディースクリニックの峯克也先生に詳しいお話を伺いました。

2021.2.1

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着床率に影響を及ぼす疾患とその対策




子宮は赤ちゃんのベッドになる場所。子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど子宮の疾患があると、着床率に影響を及ぼすことがあります。

不妊治療を受けている方であれば超音波など初診後のスクリーニング検査で、また、体外受精に臨む場合は生理の時期や排卵の前など、いろいろな時期に子宮の状態を観察する機会があります。これらの検査で異常が見つかった時は子宮鏡などさらに深い検査を行うので、子宮疾患の大抵は何らかの形で明らかになってくるかと思います。

では、子宮に関してどんな疾患があるのか、見つかった場合、どのように対処したら良いのか詳しく解説していきましょう。



◆子宮筋腫




子宮筋腫は簡単に言えば子宮にできる筋肉のこぶ。生涯で女性の1割程度はこの病気に罹患すると言われているので、決して珍しい疾患ではありません。

着床に影響を及ぼすかどうか、治療が必要かどうかは筋腫ができる位置がポイントになってきます。

子宮の外側に飛び出すようにできる漿膜下筋腫だと、治療をせずにそのまま様子を見ることが多いですね。ただし、体外受精を行う患者さんの場合筋腫がかなり大きいと採卵時に邪魔をして針を刺せないことがあるので、状況によっては採卵前に切除手術をすることがあります。


筋肉の中にあるような筋層内筋腫の場合、サイズが大きいと子宮の中を圧迫し、生理の量を増やしたり着床がうまくいかないことがあるのですが、それほど大きくなければ経過観察するケースがほとんどです。

最も注意が必要なのは子宮の内側に飛び出るようにできる粘膜下筋腫。小さくても過多月経を起こしたり、着床の妨げになったりするので、子宮鏡を用いて切除をすることがあります。

粘膜下筋腫の場合、開腹することなく、膣から子宮鏡を使ってアプローチし、病変を切除できることもあり、その場合は一泊二日くらいの施術で治療することができます。



◆子宮腺筋症


子宮腺筋症は筋層内にできる子宮内膜症のような疾患で、筋肉全体が厚ぼったくなってしまうもの。子宮筋腫より発症頻度は低く、治療は非常に難渋します。着床に影響を及ぼすこともありますが、子宮腺筋症があっても妊娠される方はいます。

明らかにこの疾患が着床を妨げているとなった場合、治療法に関して意見が分かれると思います。厚くなった筋肉を手術で部分的に切除することは可能なのですが、子宮筋腫のように病変部と正常部の境がないので手術で完全に取り除くとこは難しく、半年から1年で再発してしまう人が多いんですね。

この疾患は子宮内膜症と同様に女性ホルモンを栄養に増悪します。よって、ホルモン療法を行って病気の進行を抑えて受精卵を移植するという治療が効くんですね。手術をして再発しないうちに移植するというのも手ですが、術後半年以上は子宮を落ち着かせなければいけないので、ホルモン治療を選択するケースが多いのではないでしょうか。

子宮腺筋症の場合、排卵誘発法にも工夫が必要です。ウルトラロング法やレトロゾールというお薬を使って、女性ホルモンが過剰に分泌されないような形をとり、腺筋症の悪化を防ぎながらなるべく良い条件で採卵・移植に臨むという場合もあります。



◆子宮内膜ポリープ


子宮筋腫と同様に子宮内膜ポリープも比較的よく見られる疾患で、ある程度大きいものは手術で切除します。

ポリープがあっても自然妊娠する方もいますが、サイズが大きくなってきてタイミング法で妊娠しないという場合であれば、一般不妊治療だけ受けている方でも治療前・治療中に切除するケースが多いですね。

切除するかどうかはだいたい1cmが目安になります。小さくても多発していると子宮内の環境が良くないので治療の適応に。

当院では日帰りで掻爬という形の施術になりますが、子宮鏡を使って外来ベースで治療できる施設も増えてきているようです。



◆子宮奇形


子宮の中が2つに仕切られている中隔子宮や、子宮が2つに分かれている双角子宮など、子宮の奇形は着床に影響を及ぼすというより、不育症や流産の原因になると言われています。

流産を2回以上経験されている方であれば、手術などの治療をしたほうがいいと思いますが、ブライダルチェックや不妊のスクリーニング検査で見つかった場合は経過観察し、何かあったら対処していくという形をとることが多いと思います。

すぐに何かするというより、その方の妊娠経験などをお聞きしながらアプローチしていったほうがいいでしょう。



子宮内環境を調べる最新検査で着床率を上げる


子宮はいつでも受精卵をキャッチできるわけではありません。通常は排卵から5日後に着床が可能になり、この時期を“着床の窓”が開く時期といわれます。良好胚を2回以上移植しても着床しない方の4人に1人は着床の時期がずれている(子宮内膜の“着床の窓”が一致していない)といわれています。

最近は着床の適切な時期を探る「ERA(エラ)」という検査が行われるようになってきました。

これは子宮内膜組織より抽出したRNA産物をNGS(次世代シーケンサー)を用い、236個の発現遺伝子を解析することにより「着床の窓」の開く時期を明らかにすることができる検査です。

実際にERA検査をすると着床の窓がかなりずれている方も。適切な時期に受精卵を戻すことで妊娠されるケースも多くあります。

他にも当院では、子宮内の細菌バランスが受精卵にとって良いかどうか調べる「EMMA(エマ)」や、不妊症女性の約3割、不育症患者の6割が罹患していると言われている感染性慢性子宮内膜炎の有無を調べる「ALICE(アリス)」などの最新検査を実施し、反復不成功の方の着床率・妊娠率を少しでも上げるように努力しています。



峯先生より まとめ


子宮の中に1cm以上の異物があると避妊リングと同じような働きをするといわれています。取ってしまえば物理的な障害がなくなりますし、処置の刺激で着床しやすくなるという意見もあります。

つまり、筋腫やポリープの施術後は妊娠のチャンス。気持ちを切り替えて、次周期から積極的に妊活にトライしていただきたいと思います。



お話を伺った先生のご紹介

峯 克也 先生


日本医科大学医学部卒業。日本医科大学大学院女性生殖発達病態学卒業。日本医科大学産婦人科学教室病院講師・生殖医療主任歴任。日本医科大学産婦人科学教室非常勤講師。木場公園クリニック、新宿ARTクリニックに勤務後、「採血などの待ち時間や診療後にご夫婦でランチを楽しんでもらえるようエリアがいい」と、2017年に東京・自由が丘に峯レディースクリニックを開院。やさしいまなざしを向けながら不妊症や不育症に悩む患者さんの話を親身になって聞いてくれる。


≫ 峯レディースクリニック

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