【対談】妊娠中と出産後のママに、パパができること
インタビュー 妊娠・出産
【対談】妊娠中と出産後のママに、パパができること
妊娠中と出産後のママの体はホルモンの影響などによって大きく変化します。体の変化に戸惑うママに対してパパが出来ることを、あらかわレディースクリニックの楠木総司先生と、たいよう整骨院の平山太陽先生に、お話を伺いました。
ママの体の変化に優しく寄り添ってあげる
楠木先生:ママが妊娠をすると、当たり前ですが体と心に大きな変化が出てきます。体ではお腹や胸が大きくなり、体毛は濃くなり乳頭や乳輪も黒ずんできます。心の変化では、ホルモンバランスが変わるため情緒不安定になり、うつ傾向にもなりやすいです。そこで医師の私からの助言として、体の変化は当然のことだから、ママに「太ったね、毛深くなった?」などと心無い言葉を言ってはいけません。そして心のケアに対しては、とにかくママに優しく寄り添ってあげましょう。特に妊娠中、最も辛いことの一つが「身内につわりの辛さをわかってもらえない孤独感」です。ママが吐いている時は、パパにもわかるので気遣うことはできますが、そうでない時はママの状態がわかりにくく、気遣いを忘れがちに。でも実際はとても辛く、ママは吐き気や体のだるさをパパに理解されず、一人耐えているのです。つわりは精神的要因で悪化することもあります。妊娠2~4ヶ月頃のつわり時期は、「大丈夫?」と気にかけてあげ、家事をかわったり自分のことは自分でするようにしてママに寄り添ってください。 また、当院ではパパを対象に、パパにできるママの骨盤ケアを平山先生に動画でレクチャーしてもらっています。
平山先生:妊娠すると子宮が大きくなり、ほかの臓器を圧迫するのでママの体はパパが想像する以上に辛くなっていきます。特に腰痛や脚のむくみ、脚のつりがひどくなり、これらはホルモンの影響や骨盤の開きが大きく関係しています。骨盤は子宮を支えるため妊娠2~3ヶ月から徐々に開き、赤ちゃんの成長とともに骨盤底筋に負担がかかって腰や肩にまで痛みが出てきます。そこでパパには、ママの腰や肩、脚をさすってあげるハンドマッサージをしてあげましょう。パパの手が触れることで、体の変化に戸惑うママを安心させます。“さする”という行為は心のケアになり、夫婦仲もよくなるんですよ。
また、ママと一緒にマタニティヨガをやるのもいいでしょう。一緒に行動することは「私だけ一人頑張っている」というママの孤独感を防ぐポイントになります。
「父親学級」で学び、ママと足並みを揃える
楠木先生:初めてパパになる人は、赤ちゃんが生まれた時がスタートだと思いがちです。でもママが妊娠した時がスタートだと認識しましょう。男性という体の構造上、父親を実感するのはなかなか難しいもの。そこで当院ではママと足並みを揃えてもらうため、「父親学級」を開催しています。現在はコロナ禍のため休止していますが、かわりにパパ限定の動画(YouTube)で、産前と産後のママにパパができることを学んでもらいます。具体的には、妊娠中のママの体と心の変化や流産の危険、夫婦生活、陣痛から出産までの進み方を知ってもらいます。ママに陣痛がきた時、パパが慌てないでやるべきことをお伝えしたり、生まれた赤ちゃんのお世話も一通り学んでもらいます。動画だと自宅で見ることができるので、父親学級に参加するハードルが低くなったかもしれません。
平山先生:僕の施術院では、ママとパパがふたりでいらした時、家事の分担を妊娠中に決めておくことをすすめています。出産を終えた女性が「産後に家事の分担を決めるのでは遅かった」という声が圧倒的に多いからです。大変な出産を終えたママは休む暇なく赤ちゃんのお世話と家事に追われます。ママを疲れさせないためには、妊娠中から家事の分担を夫婦で話し合い、お互いに慣れておくのがよいと思います。
楠木先生:ママのお腹のなかで成長した赤ちゃんは10ヶ月を経て、出産のタイミングを陣痛で知らせてくれます。コロナ禍でも立ち合い出産を希望するパパは多いのですが、現在はオンラインで立ち会ってもらいます。ママの陣痛が始まった時から出産までを、オンラインの映像を通してパパに参加してもらうのですが、出産の大変さが上手く伝わるのか心配でした。でも十分に伝わるみたいで、みなさん、痛みに耐え抜いて産んでくれたママに感謝し、そして赤ちゃん誕生の瞬間はとても感動されていますね。
またママにも動画を通して、妊娠中の体調管理や、分娩に向けた準備や分娩の進み方、出産後の赤ちゃんのお世話の仕方を学んでもらっています。コロナ禍のため、助産師とママの対面レクチャーを一部控えているからです。とはいえ、動画の恩恵も実感しています。コロナ禍以前はママと対面で会えても一般的なお話が中心になり、ママの心を深くフォローするまでの十分な時間がたりなかったと思います。ところが今は、動画で省略できる内容もあるため対面でお会いした時はママ自身の話をじっくり聞くことができるようになりました。
そして1ヶ月健診で、ママの体に問題がなければ、産後の体のケアについて、平山先生はどう思われますか?
平山先生:はい、帝王切開をされた人は少し様子を見ますが、そうでないママの腹筋や骨盤底筋はダメージを受けているので、赤ちゃんの体重が増える前にできるだけ早く回復させたほうがいいと思ってます。
またママには産後1ヶ月間は、赤ちゃんの抱っこを控えさせましょう。骨盤底筋にダメージがあると、尿漏れしやすい状態になっているため、抱っこの回数が多くなるとその分、回復が遅れます。パパが家にいられる時は、ママにかわって赤ちゃんを抱っこしてあげましょう。
出産後はママを笑顔にすることを考えて行動
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