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【対談】妊娠中と出産後のママに、パパができること

インタビュー 妊娠・出産

【対談】妊娠中と出産後のママに、パパができること

妊娠中と出産後のママの体はホルモンの影響などによって大きく変化します。体の変化に戸惑うママに対してパパが出来ることを、あらかわレディースクリニックの楠木総司先生と、たいよう整骨院の平山太陽先生に、お話を伺いました。

2021.12.1

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お話を伺った先生のご紹介

楠木 総司先生(あらかわレディースクリニック院長)


日本産科婦人科学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本性感染症学会認定医。順天堂大学医学部産婦人科学講座に入局。Chang Gung Memorial Hospital(台湾)への留学、同大学准教授を経て2019年6月にあらかわレディースクリニックの院長に就任。常に患者さんの立場になった医療を提供することをモットーにし、「親切でわかりやすい」と患者さんからの満足度が常に高い先生。妊婦さんの健診や、自然から無痛など患者さんの希望に沿った分娩を手掛ける傍ら、海外で学んだ高水準の腹腔鏡手術の技術を活かし、腹腔鏡、子宮鏡下などの低侵襲手術も行っている。厳しい審査基準をクリアした医師にのみ認定される腹腔鏡技術認定医でもある。


≫ あらかわレディースクリニック

お話を伺った先生のご紹介

平山 太陽先生(たいよう整骨院)


柔道整復師(国家資格)、たいよう整骨院院長。「産後ケアはどこですればいいの?」という奥様の一言がきっかけで、産前・産後を専門にする整骨院を駒込に開院。「産前・産後ケアが当たり前の世の中へと変えていきたい」という使命を持ち、出産や育児で疲れ切った多くのママを元気にしている先生。産婦人科医や助産師など産科の専門家からの信頼も厚く、産婦人科での骨盤セルフケア教室等を精力的に行う。また、産前産後美姿勢マイスター、産前産後整体専門ママリュクス認定講師として、女性の産前・産後のケアの重要性についての啓蒙活動をする。

ママの体の変化に優しく寄り添ってあげる


楠木先生:ママが妊娠をすると、当たり前ですが体と心に大きな変化が出てきます。体ではお腹や胸が大きくなり、体毛は濃くなり乳頭や乳輪も黒ずんできます。心の変化では、ホルモンバランスが変わるため情緒不安定になり、うつ傾向にもなりやすいです。そこで医師の私からの助言として、体の変化は当然のことだから、ママに「太ったね、毛深くなった?」などと心無い言葉を言ってはいけません。そして心のケアに対しては、とにかくママに優しく寄り添ってあげましょう。特に妊娠中、最も辛いことの一つが「身内につわりの辛さをわかってもらえない孤独感」です。ママが吐いている時は、パパにもわかるので気遣うことはできますが、そうでない時はママの状態がわかりにくく、気遣いを忘れがちに。でも実際はとても辛く、ママは吐き気や体のだるさをパパに理解されず、一人耐えているのです。つわりは精神的要因で悪化することもあります。妊娠2~4ヶ月頃のつわり時期は、「大丈夫?」と気にかけてあげ、家事をかわったり自分のことは自分でするようにしてママに寄り添ってください。 また、当院ではパパを対象に、パパにできるママの骨盤ケアを平山先生に動画でレクチャーしてもらっています。


平山先生:妊娠すると子宮が大きくなり、ほかの臓器を圧迫するのでママの体はパパが想像する以上に辛くなっていきます。特に腰痛や脚のむくみ、脚のつりがひどくなり、これらはホルモンの影響や骨盤の開きが大きく関係しています。骨盤は子宮を支えるため妊娠2~3ヶ月から徐々に開き、赤ちゃんの成長とともに骨盤底筋に負担がかかって腰や肩にまで痛みが出てきます。そこでパパには、ママの腰や肩、脚をさすってあげるハンドマッサージをしてあげましょう。パパの手が触れることで、体の変化に戸惑うママを安心させます。“さする”という行為は心のケアになり、夫婦仲もよくなるんですよ。
また、ママと一緒にマタニティヨガをやるのもいいでしょう。一緒に行動することは「私だけ一人頑張っている」というママの孤独感を防ぐポイントになります。


 




「父親学級」で学び、ママと足並みを揃える


楠木先生:初めてパパになる人は、赤ちゃんが生まれた時がスタートだと思いがちです。でもママが妊娠した時がスタートだと認識しましょう。男性という体の構造上、父親を実感するのはなかなか難しいもの。そこで当院ではママと足並みを揃えてもらうため、「父親学級」を開催しています。現在はコロナ禍のため休止していますが、かわりにパパ限定の動画(YouTube)で、産前と産後のママにパパができることを学んでもらいます。具体的には、妊娠中のママの体と心の変化や流産の危険、夫婦生活、陣痛から出産までの進み方を知ってもらいます。ママに陣痛がきた時、パパが慌てないでやるべきことをお伝えしたり、生まれた赤ちゃんのお世話も一通り学んでもらいます。動画だと自宅で見ることができるので、父親学級に参加するハードルが低くなったかもしれません。


平山先生:僕の施術院では、ママとパパがふたりでいらした時、家事の分担を妊娠中に決めておくことをすすめています。出産を終えた女性が「産後に家事の分担を決めるのでは遅かった」という声が圧倒的に多いからです。大変な出産を終えたママは休む暇なく赤ちゃんのお世話と家事に追われます。ママを疲れさせないためには、妊娠中から家事の分担を夫婦で話し合い、お互いに慣れておくのがよいと思います。


楠木先生:ママのお腹のなかで成長した赤ちゃんは10ヶ月を経て、出産のタイミングを陣痛で知らせてくれます。コロナ禍でも立ち合い出産を希望するパパは多いのですが、現在はオンラインで立ち会ってもらいます。ママの陣痛が始まった時から出産までを、オンラインの映像を通してパパに参加してもらうのですが、出産の大変さが上手く伝わるのか心配でした。でも十分に伝わるみたいで、みなさん、痛みに耐え抜いて産んでくれたママに感謝し、そして赤ちゃん誕生の瞬間はとても感動されていますね。
またママにも動画を通して、妊娠中の体調管理や、分娩に向けた準備や分娩の進み方、出産後の赤ちゃんのお世話の仕方を学んでもらっています。コロナ禍のため、助産師とママの対面レクチャーを一部控えているからです。とはいえ、動画の恩恵も実感しています。コロナ禍以前はママと対面で会えても一般的なお話が中心になり、ママの心を深くフォローするまでの十分な時間がたりなかったと思います。ところが今は、動画で省略できる内容もあるため対面でお会いした時はママ自身の話をじっくり聞くことができるようになりました。
そして1ヶ月健診で、ママの体に問題がなければ、産後の体のケアについて、平山先生はどう思われますか?


平山先生:はい、帝王切開をされた人は少し様子を見ますが、そうでないママの腹筋や骨盤底筋はダメージを受けているので、赤ちゃんの体重が増える前にできるだけ早く回復させたほうがいいと思ってます。
またママには産後1ヶ月間は、赤ちゃんの抱っこを控えさせましょう。骨盤底筋にダメージがあると、尿漏れしやすい状態になっているため、抱っこの回数が多くなるとその分、回復が遅れます。パパが家にいられる時は、ママにかわって赤ちゃんを抱っこしてあげましょう


 


出産後はママを笑顔にすることを考えて行動


楠木先生:ママが出産を終えると、パパは赤ちゃんのほうに気がいきがちです。でも産後は、どちらかというと赤ちゃんよりママを支えてあげて欲しいのです。今、出産を終えて孤独に育児する「産後うつ」のママが増えているからです。
うつはホルモンの影響や脳の機能不全、孤独等、いくつもの要因がからみ合って発症します。当然、妊娠中もうつになりやすいのですが、自殺率にも結びつく産後うつは特に注意が必要です。現在、産婦人科ではママの産後うつを防ぐ取り組みを行っていて、社会や家族も出産後のママを支える重要性を知って欲しいと思います。
産後うつのサインは“食べられない、眠られない、笑わない”です。ママの異変にいち早く気づけるのは身近にいるパパなので、ママの表情が乏しくなり笑顔がなくなったら、出来るだけ早く医療機関の受診を促してあげてください。


平山先生:そうなんです。妊娠中のママの体は、あきらかに見た目でわかるから、パパも気遣いしやすいのです。でも産後のママの体は、お腹が凹むので一見妊娠前に戻ったと勘違いするパパが多い。でも実際は、交通事故にあった時と同じくらい傷ついています。出産の時に骨盤底筋等が傷つき出血を起こしていて、見た目以上にダメージを受けていることを知ってください。楠木先生がおっしゃるように、パパは産後のママに特に意識して寄り添ってあげる必要がありますね。


楠木先生:父性って妊娠中から生まれるものでは絶対ないと思うんです。ママと一緒に子育てを考えたり、赤ちゃんと接することによって徐々に父性が芽生えてきます。ママよりは遅れますが、父性は必ず出てきますから全然焦らなくていい。それよりも、ママを孤立させないように見守るのがパパの大事な役割だと認識してください。


平山先生:男性も赤ちゃんを抱っこすると、オキシトシンという愛情ホルモンが出てきます。パパとママとではスタートは違いますが、まずママを笑顔にすること。それが赤ちゃんの笑顔につながります。


楠木先生:父親学級では「出産費とプラスαのお金を用意してください」とお伝えしています。これは分娩費や入院費のほかに、産後のママの体のケアに使う整体やマッサージ費のことで、ママが気兼ねなく使えるお金を用意して支えてあげるのです。


平山先生:パパが仕事で忙しくて家事や育児を手伝えない時は、ベビーシッターを利用するのも一つの方法ですよね。ママの心身の負担が少しでも減るなら、お金も一つの手段だと考えてもいいと思います。


楠木先生:これ、助産師が言った言葉で私自身が響いたんですが、「妊娠中も出産後も、ママを笑顔にすることを考えて行動しましょう」と。私たち医療従事者はママを笑顔にするために出来ることを一生懸命やります。ですから普段ママの一番近くにいるパパも、ぜひママを笑顔にしてあげることを考えて行動してください。いつも以上にママの話を傾聴し、共感して心の支えになって頂きたい。それがママの孤独を防ぐことにつながります。


平山先生::初めてパパになる人は、最初から完璧に出来る人はいません。「赤ちゃんを抱っこすると泣き止まなくて、ママにかわると泣き止むから心が折れてしまう」というパパも多いのです。でも諦めずにやり続けていくと、赤ちゃんも次第にパパだとわかってきます。メンタルを強くしてママを笑顔にしてあげてください。


 


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