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コラム 子育て・教育

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2015.1.19

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赤ちゃんエッセイ:はなちゃんへの手紙


画像:Shutterstock.com


はじめての妊娠、そして出産。楽しみでもあり、不安も少し…。そんな初心者ママを応援したいとスキナベーブでは毎年、赤ちゃんエッセイコンテストを開催しています。エッセイには、先輩ママや専門家の方の体験談がいっぱい。元気になれるエッセイが、きっと見つかります。ジネコでは、これまでの受賞作品の中から素敵なエッセイをピックアップしてご紹介してまいります。



お腹の傷のこと…何年後かに、あなたはママに尋ねるでしょうか。
ママはその時、こう言ってあげようと思います。
「はなちゃん、これはね、あなたがとっても、頑張ったしるしなんだよ。」って…。
そう、はなちゃんは、ママのお腹の中にいる時に、病気になってしまったの。
そのことを知った時は、ショックで泣いてしまったけど、はなちゃんは元気に、ママのお腹を蹴ってくれたよね。「あたし、産まれたいんだよ。頑張って生まれるよ。」って、言ってくれてるみたいだったね。
だからママは、決めたの。どんな病気を持っている子でも、頑張って産もう、全て受け止めてあげよう、って。だから、生まれたらすぐに手術だって言われても、ママはあなたに逢えるのが楽しみでたまらなかったよ。生まれてすぐ、つらい手術をしなくてはいけないのなら、せめてお腹にいる間は、気持ち良く過ごさせてあげたい…だったら私が泣いてちゃダメだって思えたんだよ。
そして、はなちゃんは、その通り、元気な産声をあげて生まれてくれたね。大きな声で泣いていたから、ママは、きっとどっこも悪くなんかないよ、って思ったんだ。
でも、はなちゃんはやっぱり病気だった。
だから、次の日、何時間にも渡る大手術をしたの。お医者さんに、お腹を切ってもらって、ちょん切れちゃってた腸をつなげてもらったの。
手術から戻ってきたはなちゃんは、お腹に大きな傷があって、何本ものチューブに繋がれて保育器に入っていた。
ママはその時も、涙が溢れてしまったけど、はなちゃんは、何にも知らない赤ちゃんだから…そう、だからこそ、懸命に生きようとしていたの。赤ちゃんは、生きることしか、知らないんだ。生きるために生まれてきたんだ。こんなに小さいのに、生きる力はとても強いんだって、生まれたばかりのあなたに、ママは教えてもらったの。
でも、あなたの全てを受け止めようと誓って産んだのに、ママのショックは予想以上に大きくて、あなたのことが心配でならなくて、3ヶ月間の入院中は、毎日毎日泣いていたっけ。お腹が空いて泣くはなちゃんを前にして、母乳が出るおっぱいがここにあるのに、あげてはいけないつらさ、たったの2時間で、はなちゃんをおいて病院を出なければいけない悲しさ…。「私の赤ちゃんを返して!」って泣いて、看護婦さんを困らせてしまったこともあったっけ。
そして、なかなか退院できないはなちゃんが、今度は別の重い病気かもしれないから、もう一度お腹を開くよ、って先生に言われた時には、本当に本当に悲しかった。いっこ病気をやっつけたのに、またはなちゃんを病気と闘わせるなんてつらすぎる…治るかわからない病気のために、はなちゃんにまた痛い思いをさせるくらいなら、いっそ抱っこしたまま窓から飛び降りて、一緒に天国に行ったほうがいいなんて、いけないことを考えてしまったほど。
ごめんね。はなちゃんは、そんなママの気持ちがわかって、驚いたね。でも、それは困るって思ったのかな、はなちゃんは奇跡を起こして、再手術の直前に、病気を治したんだよ。
手術は中止になり、そして、退院が決まったの!土壇場になって、大逆転のホームラン打ったみたいだったね。
はなちゃん、本当によく頑張ったね。どんなに痛い治療をした日も、ミルクが飲めなかった日も、あなたは一生懸命、生きて、ママが面会に来るのを待っていてくれた。
そして、少しずつ、元気になって、今ではどこが悪かったの?って不思議に思うほどになったの。
お腹に傷は残ってしまったけど、それは、はなちゃんが、神様に頑張りやさんだって、認めてもらったしるしなの。
昔、聞いた事がある…神様は、何万人、何千人かに一人は、病気の赤ちゃんをつくらなければいけないんだって。だから、それを受け止めて育ててくれる、しっかりしたパパとママのところに病気の赤ちゃんを授けるんだって。
ママもね、ずうっと、頑張りやさんでしっかり者って言われてきたから、赤ちゃんができた時、ちょっと不安だったの。でも、現実になって、わかったの。ママは、ちっともしっかり者なんかじゃなかったってこと。はなちゃんの前でも、いっぱい泣いた泣き虫ママだった。自分が弱虫だってこと、初めて気付けたの。
それは、気を張って生きてきたママにとって、とってもいいことだったと思う。弱虫なんだ、だから泣いちゃう事だってある…でも、それでいいんだってこれからは思えるから、きっと少し、楽になれると思う。
そして、神様は、しっかりママのところじゃなくて、頑張りやさんの赤ちゃんを選んでいるんだってこともわかったよ。はなちゃんなら、この病気を乗り越えられる、って思ったから、ちょっと意地悪しちゃったんだよ。
そしてその通り、はなちゃんは強かったね。
だって、病気に負けなかったんだもん。病気をやっつけちゃったんだもん。
はなちゃん、もしも将来、何かに負けそうになったら、くじけそうになったら…時には泣き虫はなちゃんになってもいいよ…でもね、そんな時は、ペロンとシャツをめくって、そのお腹の傷を見てごらん。
それは、あなたが頑張ったしるしだよ。神様に強い子だって、選ばれたしるしなんだよ。
赤ちゃんの時、あんなに頑張ったあなただから、きっと何だって乗り越えられるはず。
生きてるってすごいことだよ、とっても素敵なことだよ。そうママに教えてくれたあなたに、ママも教えたい。
あなたが元気で生きているだけで、幸せになれる人がいっぱいいる…。
そう、ママはね、病気の赤ちゃんを産んでしまったこと、しばらくは気にしてたけど、病気だったからこそ、あなたが生まれてくれたこと、今、生きていてくれることの喜びを、誰よりも胸いっぱいに、いとしく感じることができるんだ。
はなちゃん、はなちゃん、本当にありがとう。
だからその傷を、どうか誇りに思ってほしい。つらい時はお腹を見て、勇気を湧きおこしてほしい。
神様に選ばれた頑張りやさんの、あなたのママであることを、私もずっと、誇りに思って、ずっとずっと、生きていくから…。


 



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