妊娠中のリスク(1) ~妊娠が原因で起こる病気~
妊娠期間をトラブルなく過ごし安全な出産をするためには、健康な体でいることが大切。気になる症状や病気などは早めに対処して、リスクを管理していくようにしましょう。
妊娠高血圧症候群
Q:低血圧だったのに、妊娠してから高血圧になってしまい不安です。(ひとみさん・30歳)
妊娠することでかかる病気で最も多いのが、妊娠高血圧症候群です。
妊娠高血圧症候群は、妊娠によって血管に負荷がかかることで起こり、妊娠後期に起こりやすいといわれています。また年齢が高くなるほど、発症率が高くなることが分かっています。血管が異常収縮することで高血圧になり、腎臓への負担が大きくなることで尿たんぱくなどの症状が現れます。妊娠20週以降で高血圧と尿たんぱくの両方、または高血圧だけの場合でも妊娠高血圧症候群と診断されます。
妊娠高血圧症候群を発症すると、血管の異常収縮などで胎盤の血流が悪くなり、胎児に十分な栄養や酸素が届かなくなります。その結果、胎児の発育に遅れが出ることがあります。また母体も脳卒中を起こしたり、出血が止まりにくくなる場合もあります。常位胎盤早期剥離や早産の原因になることもあるので、厳重な管理が必要となります。
治療法は安静にすることと、食事の改善が中心です。重症の場合は降圧剤を服用したり、入院が必要となることもあります。母体と赤ちゃんの状態を管理し、病状によっては帝王切開で早めに赤ちゃんを出してあげる場合もあります。
体重を管理すること、うす味の食事を心がけること、適度に運動することなどが予防法としてあげられます。ストレスのない規則正しい生活を送ることも大切です。高血圧も腎機能の低下も軽度のうちは自覚症状がないため、妊婦健診をきちんと受けることがとても大事です。
妊娠糖尿病
Q:妊娠糖尿病と診断され、注意していても体重が増えてしまいます。(ひとみさん・30歳)
自分でコントロールできない場合は栄養士から指導を受けましょう。
糖尿病とは膵臓から分泌されるインスリンが不足し、血液中のブドウ糖がうまく利用できなくなって、尿中に糖が排出される病気です。この異常が妊娠したことで起こるのが妊娠糖尿病。妊娠中は胎盤から血液を通じて赤ちゃんにブドウ糖が送られます。より多くのブドウ糖を送るために、胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの作用が抑制されるので、糖尿病のような状態になってしまうのです。妊娠糖尿病を発見するために、毎回妊婦健診で尿糖を検査します。基準値を超えた場合や、2回続けて陽性だった場合は、より詳しい検査に進みます。
母体が糖尿病にかかっていると、赤ちゃんが4㎏以上の巨大児になることが多く、奇形の原因となることもあります。生まれた赤ちゃんが糖代謝異常になるという心配も。また母体の血管が高血糖でダメージを受け、妊娠高血圧症候群を併発したり、羊水過多症になることもあります。妊娠が原因の病気なので、出産すれば治ることが多いのですが、近年の研究では、妊娠糖尿病にかかった人のうち40%以上の人が5年以内に糖尿病を発症するという報告があります。
塩分や糖分を控えた、薄味で低カロリー・高たんぱくの食事を心がけましょう。治療の場合は症状に応じて摂取カロリーを制限します。自分でできない時は栄養士に相談を。それでも血糖値が正常にならない場合はインスリン治療が行われます。予防も治療も、適度な運動が大事です。毎日の生活の中にウォーキングなどの軽い運動を取り入れましょう。またストレスを感じると血糖値を上げるホルモンが分泌されるので、自分に合った解消法を見つけて、穏やかな気持ちで過ごしましょう。