妊娠中のリスク(3) ~持病を抱えた妊娠~
妊娠期間をトラブルなく過ごし安全な出産をするためには、健康な体でいることが大切。気になる症状や病気などは早めに対処して、リスクを管理していくようにしましょう。
Q:妊娠してから病気があることがわかりました。無事に出産できますか? (チョコさん・30歳)
症状を悪化させないよう、かかりつけ医と産婦人科医の指示に従い生活を管理しましょう。
高血圧
生活を改善してリスクを回避
もともと高血圧の人は、妊娠20週以降に診断される妊娠高血圧症候群に移行することが多いので、妊娠初期から注意が必要です。高血圧のまま妊娠が進むと、常位胎盤早期剥離、早産、子宮内胎児発育不全の危険が出てきます。妊娠を継続して無事に出産するために、生活をしっかりと管理していきましょう。
血圧を上げないようにするには、塩分を控えたバランスの良い食事、休養、適度な運動を続けることが大切です。それでも血圧が上がってしまう場合には、降圧剤が処方されることがあります。
心臓病
必ず主治医と相談を
妊娠すると血液量が増えるため、心臓の負担が大きくなります。心疾患のある人は、必ず主治医に妊娠・出産が可能かどうかを確認しなければなりません。妊娠継続の許可が出た後は睡眠や休息を十分に取り、無理のない日常生活を送りましょう。妊娠8カ月頃、循環血液量はピークとなり、非妊娠時の1.5倍になります。
万一に備え、早い時期から入院することもあります。出産は急変にも対応できる高度な医療設備を備えた病院で、専門医と産科医連携のもとで進められます。
糖尿病
食事と運動で血糖値をコントロール
妊娠前から患っている糖尿病、妊娠中に診断された明らかな糖尿病は、妊娠糖尿病と区別して考えられます。
糖尿病合併妊娠の最も重篤な合併症は胎児の奇形です。巨大児、低出生体重児の可能性も高くなります。予防するには血糖値のコントロールが重要。食事と運動で体重を管理します。それでコントロールできない時はインスリン治療を行います。
腎臓病
妊娠高血圧症候群の発症に注意
妊娠は腎臓に大きな負担をかけます。腎臓を流れる血液量も、糸球体におけるろ過率も非妊娠時より30~50%増えます。慢性腎炎やネフローゼ症候群などの腎臓疾患がある人は、状態が安定していれば医師の管理のもと妊娠・出産が可能です。
腎臓病があると妊娠高血圧症候群を発症しやすくなるので、特に注意が必要です。食事をしっかり管理し、安静を保ちましょう。定期健診以外にも、めまい、頭痛、発熱、むくみなどが現れたら、すぐに受診しましょう。無理は絶対にしないことです。
甲状腺機能異常
妊娠中も治療を続けることが不可欠
甲状腺機能異常には、機能が亢進するものと低下するものがあります。甲状腺モルモンが過剰に分泌される亢進症は20~30代の女性に多く、バセドウ病があります。低下症は30~50代の女性に多く、橋本病があります。治療は、バセドウ病は抗甲状腺剤を、橋本病は甲状腺モルモン剤を投与します。いずれも妊娠中も治療を続けなくてはなりません。薬を自己判断でやめてしまうと、バセドウ病では早産や妊娠高血圧症候群、橋本病では早産、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離の確率が高くなります。
膠原病
産科医、内科医と密接な連携を
膠原病は全身の血管や皮膚、関節などに炎症が見られる病気の総称。その中の全身性エリテマトーデス(SLE)は20~30代の女性に多く発症、関節リウマチは30~50代の女性に多く発症します。
状態が安定していて、重篤な臓器障害がなければ妊娠は可能です。しかし流産や早産となる確率が高いため、産科医、内科医と密接な連携を取り、厳重に管理していくことが重要です。治療を続けたにもかかわらず、症状が悪化した場合は、母体の治療が優先されます。