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何度も採卵しましたがフラグメンテーションが多く胚盤胞まで育ちません

コラム 不妊治療

何度も採卵しましたがフラグメンテーションが多く胚盤胞まで育ちません

2015春

2015.3.10

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相談者

パピ さん(33歳)


今まで完全自然周期で4回採卵しています。いつも2個から5個採卵するのですが、 受精はするものの、その後、分裂が止まったり、異常分割したり、分割してもフラグメンテーションが多く胚盤胞まで育ちません。見た目は問題なく、なぜかフラグメンテーションが増えすぎてしまうと言われました。初めての採卵で3日目の胚を戻して妊娠しましたが、 完全流産に終わりました。その後、左右に3cmほどのチョコレート嚢胞があるため、胚盤胞まで育 てたほうがよいと言われて採卵をしましたが、胚盤胞までいきませんでした。初期の胚で妊娠できましたが、採卵して培養できない限り、また初期の胚を戻すのでは流産になるので、やはり胚盤胞まで育てたほうがいいのでしょうか? 胚盤胞まで育つには何度も採卵を繰り返しやれば望みはありますでしょうか? 施設の方針により初期胚を戻すことはできません。




-- 採卵できて受精はするものの、なかなか胚盤胞まで育ちにくいというご相談です。


山口先生: 一部の細胞が不規則に分裂して生じる小さな断片をフラグメンテーションというのですが、なぜ発生するのか、はっきりとした原因はまだわかっていません。 数年前までは、このような断片化があることによって胚の発育が悪くなるといわれていたのですが、現在、フラグメンテーションがあっても時間がたてば再吸収されて、 胚のグレードが良くなるといわれています。 つまりフラグメンテーションが起こったから、もう受精卵が胚盤胞にならないかとい うと決してそうではなくて、卵胞刺激や受 精の方法を変えたりしながら何回も根気よく繰り返すうちに、良好胚が得られるケースもあるのです。


-- 現在は完全自然周期での採卵しかされていません。卵胞刺激で良好胚になりますか?


山口先生: 受精は成立しているのですから、 調節卵胞刺激など他の方法を試しながら採卵を繰り返すことで望みはあると思います。 受精方法も通常の体外受精と顕微授精の2つのグループに分けて行うことで、グレー ドの良い胚が得られる可能性があります。

それでもなお、フラグメンテーションの多い胚しかできず、胚盤胞まで育たないのであれば、初期胚移植を試みるべきでしょう。通院されている施設では行っていないということなので難しいのかもしれませんが、初期胚と胚盤胞を二段階で移植してみるのもいいと思います。パピさんは以前に「初期の胚で妊娠できました」とのことですから、一度、初期胚での移植を試みる価値があるのではないでしょうか。そのような 治療のためにも、自然周期やクロミフェンだけでなく、もう少し刺激の強い方法で卵胞刺激を行い、1回の採卵数を増やすことがポイントかと思います。


-- 体内の環境についてはどうでしょうか?


山口先生: 妊娠率を上げるには、チョコレート嚢胞に対するアプローチを考えるべきかもしれませんね。チョコレート嚢胞を除去し、卵巣内での卵胞発育環境が良くなれば、 良好な卵子が採取できる可能性が高まると思います。フラグメンテーションが減るかどうかは試してみないとわからないのですが、術後の妊娠には母体年齢も大きく作用 します。まだ年齢がお若い段階で手術に踏み切って採卵に臨むというのは大変良い選択かと思います。

初期流産というつらい経験も、ご自身が自然に妊娠できる要素をお持ちだということです。マイナスばかりに目を向ける必要はありません。まずは腹腔鏡下手術によって卵管周辺や卵巣周囲の癒着の有無なども確認し、術後に低刺激での卵巣刺激で採卵してみるというのはどうでしょう。採卵時に排卵していたら人工授精を併用するのもいいでしょう。手術療法を試みて、同時に腹腔内の状態を確認することは、妊孕能を改善するうえでも重要なことです。治療の選択肢が大きく広がると思います。



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.25 2015 Spring
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山口 剛史先生


奈良県立医科大学卒業。2007年京都府立医科大学大学院医学研究科統合医科学専攻、同博士課程修了。公立南丹病院、京都府立与謝の海病院産婦人科医長勤務などを経て、2010 年より醍醐渡辺クリニック勤務。O型・天秤座。大学時代はラグビー部に所属されていた先生は、現在も数年ごとにOB戦に出場。「試合後の回復力がどんどん落ちているのがツライ」と苦笑いされながら、日常でもランニングなどで体力維持に余念がありません。




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