子どもを望んでから2年経っても授からない場合は、不妊症といわれています。
不妊治療の専門病院を受診する前に、主治医に相談してみようと思っている方も多いでしょう。
そこで相談する前に知っておきたい、不妊症の検査と治療の基礎知識をホワイトレディースクリニック院長の白須先生にお聞きしました。
不妊症の検査ではどのようなことを行う?
不妊症の原因は女性だけでなく、じつは半数の場合は男性にあります。そこで男性も受けるべき検査があることを知っておきましょう。
夫婦で一緒に受診すれば、検査や治療のことを共有できるメリットはありますが、仕事が忙しかったり、検査に戸惑う男性も多くいらっしゃいます。その場合は女性だけ受診をして、先に検査を行うのでもよいでしょう。
女性の検査では、妊娠にかかわる器官とホルモンの値に問題はないかを調べます。器官の問題としては、大きくは卵巣の異常、卵管の異常、子宮の異常に分けることができます。そこで問診、内診、超音波検査、血液検査などで順次調べていきます(➡コラム)。
男性は、精子に問題はないかを検査します。採取した精液の量、1cc中の精子の数、運動率、奇形率などを調べます。精液の採取方法はクリニックによって異なりますが、自宅採取も可能です。
コラム)おもな女性の検査
●卵巣の異常
排卵があれば基礎体温は高温期と低温期の2相になる➡基礎体温
卵巣から分泌されるホルモンや排卵に必要なホルモンは正常か➡血液検査
●卵管の異常
妊娠を妨げる子宮筋腫や子宮内膜症などの病気はないか➡超音波検査
●ほかに
卵管閉塞や癒着の原因になるクラミジア、その他の性病や細菌に感染していないか➡血液検査、培養、粘膜検査
異常があった場合に行う治療は
女性では、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があって、妊娠を妨げている可能性がある場合には手術をするのも選択肢の一つです。
手術するかどうか判断に迷う場合は、タイミング法(➡コラム)、人工授精、体外受精を行いながら経過観察していきます。
すぐにでも妊娠したい人、年齢的にあまり余裕のない人などは人工授精や体外受精(➡コラム)を積極的におすすめします。
排卵障害がある場合は、漢方薬や内服薬で排卵を助けたりします。それでもうまく排卵しない場合には排卵誘発剤を注射して卵巣内の卵子を育てます。これらはタイミング法や人工授精、体外受精の各治療で使います。
男性の精子が少ない場合には精索静脈瘤といって、精巣の静脈が怒張して精子を作る妨げになる病気が原因となっているケースがあります。この場合泌尿器科で手術を受けることにより改善することがあります。
コラム)不妊治療
タイミング療法➡超音波検査などで排卵日を予測して性交日を指導する治療法。
人工授精(AIH)➡排卵日を予測して、採取した精液を子宮内に注入する治療法。排卵があることと卵管に異常がないことが条件。
体外受精(IVF)➡卵巣から取り出した卵子と、採取した精液を体外で受精させ、その受精卵を子宮に戻す(胚移植)治療。受精の手助けをする顕微授精もある。
原因不明の場合の治療はどうする?
女性、男性ともにはっきりした原因が見つからない「原因不明」の不妊症もあります。また男性は精子に異常があっても、その原因がわからないことも多いのです。
そこで不妊の治療と合わせて、食事や生活の指導を行う場合もあります。ふだんの食事で、必要な栄養素が足りていなかったり、有害ミネラルが身体の中に蓄積されると不妊の原因になると考えられているためです(➡コラム)。
コラム)栄養素の不足と有害ミネラル
●栄養素の不足➡体の中でどの栄養素が足りなくて、どんな障害を起こしているのか血液検査で知ることができる。不足している必要な栄養素を補給する方法もある(分子栄養医学療法)。
●有害ミネラル➡水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、ニッケルなど、食品や水道水などから体内に入る。蓄積されている有害ミネラルの種類は毛髪検査でわかる。
有害ミネラルをとらえるキレート成分を体内に取り入れて、尿や便から排泄する方法がある(デトックス療法)。
早く子どもを望むのでしたら、より高度な不妊治療を行える専門病院を選択するのもよいでしょう。その一方で、体外受精に躊躇する方がいらっしゃるのも実情です。
そこで夫婦の意向をじっくり聞いたうえで医学的な見解を交えてアドバイスし、患者さんが納得のいく治療ができるようサポートします。