風しん症候群は防げる?赤ちゃんを守ろう!
インタビュー 子育て・教育
風しんが流行すると妊婦さんへの感染が心配されます。生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群にならないためには、すべての人が風しん予防の大切さを知ることが重要です。東峯婦人クリニック院長の松峯 寿美先生にお話を伺いました。
なぜ今大人が、風しんに感染しているのか
風しんは、以前は子供の病気と思われがちでしたが、近年は小児のワクチン接種が進められているため、流行するのはワクチンを接種していない20代以降の大人が中心です。
風しんは、風しんウイルスによって起こる感染症で、くしゃみや咳などで飛び散った鼻水や唾などから飛沫感染します。
潜伏期間は2~3週間で、主な症状として発しん、発熱、リンパ節の腫れなどがみられます。
他の人に感染させてしまう期間は、発しんの出る2、3日前から発しんが出て5日後くらいまで。
感染力が強く、インフルエンザの5倍と言われるほどです。
しかし、一般的にその症状は別名「三日はしか」と言われるほど軽く、数日で回復することがほとんどです。
さらにウイルスに感染しても症状が出ることがない不顕性感染の人も15~30%程度いるようです。
そのため、自覚しないままに周りの人にうつしていることも少なくなく、感染拡大を防ぐためにはワクチンによる予防接種が重要になります。
「先天性風しん症候群」とは
風しんの流行が問題なのは、妊婦さんが感染すると生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群になることがあるからです。
風しん症候群は、主に妊娠20週くらいまでの妊婦さんが風しんにかかった時に、母体でウイルスが増殖し、生育途中の赤ちゃんに悪影響を及ぼすことによって起きる病気です。
風しん症候群になる確率は妊娠が初期であるほど高く、妊娠第5週では実に50%におよぶというデータもあります。
妊娠第5週(妊娠が分かる時期)から妊娠第20週までは、赤ちゃんの器官形成期と呼ばれます。
最初に形成されるのがまず心臓で、そして肝臓や腎臓、脳などがつくられ、妊娠20週くらいまでに耳や目などの感覚器官が完成します。
第20週以降はそのまま大きくなり成熟していくため、器官形成期は、いわば体の基本ができる時期なのです。
ですからこの期間に母体が風しんに感染すると、生まれてくる赤ちゃんに先天性心疾患、白内障、難聴が起こりやすく、そのほかにも先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎など、さまざまな病気になってしまうことがあります。
病気は1つだけのこともあれば、複数の場合もあり、また、病気の程度もさまざまです。
いずれにせよ、風しん症候群が赤ちゃんの人生に大きな影を落とすことに違いはありません。
なかには出産をあきらめなければならなくなるケースもあり、産む産まないの選択を迫られるお母さんの心の傷は測りしれないものがあります。
風しん症候群のリスクを避けるための対策は?
まず大切なのは、女性は妊娠可能な年齢になった時点で抗体検査をして、弱い場合は予防接種を受けておくことです。
結婚前に医療機関で行うブライダルチェックの項目にも、風しんの抗体検査は入っています。
当院では妊娠がわかって来られた方に対して、必ず血液検査をして風しんの抗体があるかを調べています。
なかには抗体がまったくない人もいますし、ちょっと弱いという人もいます。
抗体が弱い妊婦さんには絶対に風しんに感染してほしくないので、妊娠20週を過ぎるまで、なるべく人ごみに出ない、外出する時はマスクをするよう徹底して伝えます。
もちろん家族である夫も同じです。
一番危険なのは夫が感染してウイルスを運んでくることです。
また上のお子さんが感染してうつしてしまうこともあるので、家族内の感染には十分な注意が必要です。
そのため現在、妊娠を希望する女性と妊婦の同居家族を対象として、風しんの免疫のレベルを確認するための抗体検査を無料で受けることのできる事業を多くの自治体で行っています。
さらに、厚生労働省は2019年から21年度末までの約3年間、特に定期予防接種の機会がなかった1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性を対象に、原則無料でワクチンの接種を実施しています。
赤ちゃんを風疹症候群から守るために、ぜひ男性に予防接種を受けてほしいと思います。
●●●まとめ
世の中には原因不明な病気が数多くあり、赤ちゃんが重い病気を背負って生まれてしまうことも決して少なくありません。しかし、風しん症候群は必ず防ぐことができる病気です。抗体が弱い人が予防接種を受けることで、赤ちゃんが風しん症候群になることを食い止めることが可能なのです。女性だけでなく男性もしっかりと意識をもって、風しんが日本からなくなることを目指してほしいと思います。