自然の力を味方にー睡眠と松こぶ
コラム 漢方・鍼灸
※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。
陰陽のバランスが崩れると夜眠れず、朝起きられない
皆さんは毎日よく眠れていますか? 睡眠は卵子が育つのにとても大きな助けになります。成長ホルモンは23時頃から増加するので、妊娠を希望される方には早く寝た方がよいとお伝えしていますが、「そうはいってもなかなか眠れなくて…」と不眠を訴える方が少なくありません。東洋医学では、不眠は陰陽不和、胃不和、血虚、腎虚と考えます。生活習慣を少し見直すだけでも睡眠を改善することは可能です。
陰陽を一日の流れで見ると、陽は夜の12時からスタートし、朝の6時から陰を上回り、昼の12時にピークとなります。一方、陰は昼の12時にスタートし、夕方の6時に陽を上回って夜の12時にピークになります。陰陽不和、すなわち陰と陽のバランスが崩れると夜に眠ることができず、朝に起きられなくなります。
不妊治療中の患者さんが眠れないのは、陰が不足して相対的に陽があまっているからです。不妊治療ではホルモン剤が使われますが、ホルモン剤を使うと神経が興奮しやすくなります。加えて治療への不安があるとなかなか眠ることができませんが、眠れないとFSH値が上がり、患者さんはいっそう不安を感じます。交感神経の過剰な興奮を抑えることが不妊治療のポイントです。
質の高い睡眠とストレス軽減をサポートする松こぶエキス
不眠の患者さんに、私はよく松節(しょうせつ)という松こぶから作られた漢方を使います。精神安定や痛みを取る松の精油はアロマでもよく用いられます。ポリフェノールが多く含まれる松節にはセロトニンを増加し、ビタミンCやビタミンEより強い抗酸化作用があることがハーバード大学のシュウ博士の研究でわかっています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、セロトニンが増加すると冷え性や生理痛、偏頭痛の軽減が期待できます。睡眠ホルモンのメラトニンも増加するので、睡眠の質も高まります。松節は不安の緩和にも有効です。
不妊治療を受けておられる患者さんは不妊のことで頭がいっぱいになっています。本来なら睡眠でリセットされるのに、眠れないのでずっと脳の興奮状態が続いて悪循環を起こしています。通院をやめたら自然妊娠する人が少なくありませんが、これは脳の興奮がとれたこともあるのではないでしょうか。焦る気持ちはよくわかりますが、自分の好きなことを楽しむのが一番です。大好きなことに夢中になれば緊張から解放され、新たに取り組む意欲が湧いてきます。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
≫ 掲載記事一覧はこちら