更年期は出産の次に大切な人生のターニングポイント
よく耳にする「更年期」と「更年期障害」とは何かご存じでしょうか。以前このコラムでも取り上げましたが、中医学では女性の体の変化を7の倍数でとらえます。7の2倍の14歳に初月経がおとずれ、4倍の28歳で身体機能、性機能ともにピークを迎え、5倍の35歳から少しずつ月経と性機能の衰えが始まり、7倍の49歳で閉経という女性の体のリズムは、日本人男女の平均寿命が初めて50歳を超えた1947年から80歳を超えた現在まで変化はないのです。つまり、昔の女性は閉経とほぼ同じ時期に寿命を迎えたのですが、現代はそこから30年以上の時間が女性にはあるのです。
ですから更年期は女性にとって出産の次に大切な人生のターニングポイントだと思います。更年期をうまくケアするか否かで老後の健康レベルは大きく変わり、QOL(quality of life=生活の質)に影響すると言っても過言ではないでしょう。
ここでは数回に渡って更年期、更年期障害について取り上げていきます。
では、冒頭にも書いた「更年期」とは何かから説明していきましょう。
中医学では体の節目をいくつかの「期」として区切っています。
第二次成長期で生殖器が発達する時期。
性ホルモンが旺盛な時期。
卵巣機能低下、月経不規則、不正出血などが起こる時期。いわゆる更年期のこと。
ホルモンバランス崩れて性器の萎縮、骨密度低下などが起こる時期。
ということで更年期は、女性の閉経を基準にした前後5年間、つまり約10年間のことを言います。日本人の閉経の平均年齢は50.5歳ですから、だいたい45~55歳と考えます。もちろん、その方の閉経を基準に考えますので個人差はあります。
この時期、女性の体は大きな変化時期に入りますから、時にさまざまな不調や症状が現れます。更年期の各症状に対する中医学の基本的なスタンスは、西洋医学とは大きく異なります。西洋医学では卵巣機能の衰えは女性ホルモンであるエストロゲンの低下をベースに更年期を考えます。一方、中医学では更年期とは「陰陽」の失調によってホルモンや自律神経のバランスが乱れると考えます。「陰」を例えるとガソリンで「陽」はエネルギーのことです。「陰陽失調」には次の3つのタイプがあります。①陰が不足する、②陽が不足する、③陰陽共に不足する。
そのタイプによって症状や治療法も異なります。さらに、この3つのタイプは連続性があり予防が重要なのです。
この更年期に起こる、頭痛やほてり、気分の落ち込み、月経不順などのさまざまな体や心の不調を更年期症状と言い、その症状が重く辛さが続き、日常生活が普通に送れないため何らかの治療が必要な場合を「更年期障害」言います。
更年期の捉え方が西洋医学と中医学では違うのですから、更年期障害の治療方法も違います。
西洋医学の「不足している女性ホルモンを補充する」という治療法に対して、中医学は陰陽失調のタイプによって治療法も予防法も全く異なります。崩れかけている体全体のバランスを回復し、調和を取りつつ、環境への順応力を高めて、緩やかに老化していけるようにお手伝いをするのです。
次回は中医学の更年期の考え方をさらに掘り下げて説明します。
株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生
株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。
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