生理の量が異常に…これって本当に更年期!?
インタビュー
女性の健康
生理の量が異常に…これって本当に更年期!?
40代に入って生理の量が明らかに増えたら更年期の前兆なのでしょうか。そのほかの病気である可能性も含め、対策を伺いました。
2019.2.5
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40代に入った頃から生理の量が明らかに増えたら、更年期の前兆なのでしょうか。そのほかの病気である可能性も含め、対策を浜松町大門レディースクリニックの池田 貴子先生に伺いました。
40代以降に出血過多=更年期とは限らない
40代に入って今までと生理の状態が違う、出血量が変わったという方は珍しくありません。最近では、ご自身で情報収集をして「40代→生理の量が今までと違う=更年期に入ったかも」と考え、しばらく放置してしまうケースもあるようです。ただ、出血が増えている場合には、更年期以外の理由も十分に考えられるので、医療機関を受診し、検査をするようにしてください。
エコーをはじめ4つの検査を行い、病気が潜んでいないか確認
出血が増えたというケースでは、生理の量が増えた原因などを探るために、医療機関では主に以下の検査を行います。
1)経腟エコーで子宮の状態を確認
生理時の出血量が多くなる原因となる子宮筋腫や子宮内膜症のトラブルがないかエコーで確認していきます。
2)子宮頸がん検査
出血量が増えた理由が、子宮頸がんによる不正出血の可能性もあります。そのため、子宮頸がん検査も行います。
3)ホルモン状態を確認するための血液検査
閉経近くにホルモンの乱れが起こり、出血量が増えることもあるため、閉経が近いかどうかを含めホルモンの状態を確認するために採血をします。
4)貧血検査
過多出血=貧血の可能性もあるので、こちらもあわせてチェックしていきます。
これらの検査結果を見ながら、出血の影に大きなトラブルが隠れていないかを詳しくみていきます。
検査で異常が見られなければ子宮内膜の厚さが原因のことも
上記で述べた検査を行い、出血過多の原因となるものが見当たらなければ、<子宮内膜の厚み>に原因が隠れていることがあります。
女性の生理は、排卵が起こると赤ちゃんとなる受精卵を迎え、育むために子宮の内膜を厚くしていきます。そして迎えるべき受精卵がこないとわかると、その内膜ははがれ落ちて出血していきます。
ところが、子宮内膜がなんらかの理由で今までよりも厚みを増してしまうと、生理過多となります。
40代で今までよりも内膜の厚みが増す理由は主に2つ
子宮内膜が今までよりも厚みを増している理由として考えられるものは、主に2つあります。
1)生理的なホルモンバランスの影響
40代ですと、ホルモンバランスなどの影響で生理の量にばらつきがでることがあります。
わかりやすくいうと、前々周期、前周期の生理の際、子宮内膜がしっかりとはがれ落ちていなく、いつもより生理の量が少なめだったが、今周期の生理の時には前にはがれ落ちずにたまっていた内膜が一気にはがれ落ちたため、生理の量が増えたということも考えられます。
2)子宮体がんや子宮内膜増殖症の可能性/
エストロゲンという女性ホルモンが過剰に分泌されることで、子宮が過剰に厚くなってしまう「子宮内膜増殖症」という病気や子宮体がんを引き起こしている場合には、内膜が異常に厚みを増し、不正出血が見られます。がんかどうかは、子宮体部の細胞組織を採取して調べるとわかります。
受診や今までの検査などから子宮体がんの可能性が考えられる場合は、すみやかに検査を受けるようにしましょう。
治療法は本人の年齢や希望によって選択肢が異なる
今回取り上げた生理過多の場合、治療法は年齢やご本人の希望によってさまざまなものがあります。今回は、当院での治療例を参考にお話しします。
まずは、40代前半で生理的に子宮内膜が厚くなりやすい方への治療法です。
低用量ピル(レップ)を服用してもらい、生理の量や回数を調整しながら、内膜の状態を整えていく治療を行います。
次に40代後半以降の方でご本人が「生理のわずわしさから解放されたい」という場合の治療法をご紹介します。卵巣を刺激するホルモンであるエストロゲンの働きをおさえ、排卵を抑制するGnRH(ゴナドトロピン)注射を毎月1回接種し、徐々に体を閉経する方向にもっていきます。
この治療は徐々に閉経にもっていくため、急にほてりを感じる「ホットフラッシュ」など更年期障害に似た副作用が出る場合がありますが、漢方を飲むことで緩和することができます。
また、骨密度が下がる傾向にあるので、当院では6回注射した後に骨密度のチェックを行い、ケアを行っています。
また、GnRH注射とは逆に、エストロゲンを薬で補充しながらホルモンバランスを整え、生理の量を調整するホルモン補充療法(HRT療法)を40代後半の方に適用することもあります。ただし、こちらは長く服用すると乳がんのリスクを高める可能性があるので、基本的には5年以内に治療を終わらせるように行います。また、家族に乳がんにかかった人がいる方は、NGです。
手術で子宮を摘出するという治療法も
また、手術して子宮を摘出する方法があります。患者さんの年齢や病院の方針によって、子宮だけを摘出するか、子宮と一緒に卵巣も摘出するかの選択は異なってきますので、手術を希望する場合は、自分の希望を明らかにしたうえで医師に相談してみましょう。
ちなみに、子宮を摘出する場合も前もってGnRH注射を一定期間接種することになるので、手術をしようか迷っている場合は、GnRH注射をしてみて悩んでいた症状が改善されるようであれば、いったん手術は保留にするという選択もできます。
このように40代で生理過多の症状だとしても考えられる原因は更年期以外にもさまざまなものがあります。ご自分で勝手に判断して様子を見るのではなく、「いつもと違うな」と感じたら、早めに医療機関を受診することが、トラブルや悩みを最小限にとどめることにつながります。
ただ、こういったトラブルはいつ起こるかわからないものですよね。
そのために、日頃からかかりつけの婦人科医を探しておき、何か起こった時に気軽に受診や相談ができるようにしておくといいでしょう。
池田先生より まとめ
受診する前に症状や希望を整理し、自ら聞くことが大切
同じ症状があらわれていたとしても、患者さんの状態や希望によって提案する治療方法は異なります。
より的確で、患者さんの希望に沿った治療を行うために
受診前に
・いつからどんな症状があるのか
・今回来院した目的
を、ご自身で整理して確認してみてください。忘れてしまいそうな場合は、紙に書き出すのもいいでしょう。また、スマートフォンや手帳にメモをしておいて、それを見ながら問診にお答えいただいてもかまいません。
そうしていただくことで医師は、より患者さんの症状や状況が把握しやすくなり、より的確な診断や希望に近い治療法を提案できま
池田 貴子 先生(浜松町大門レディースクリニック 院長)
東邦大学医学部卒業。東京医療センター外科系研修医を経て、東京大学医学部産婦人科入局。その後、複数の産科・婦人科クリニックにて院長として勤務。2017年6月に浜松町大門レディースクリニックを開院。患者さんの悩みを丁寧にヒアリング。それをもとに今後の治療法などをわかりやすくレクチャーしたり、日常生活についてのアドバイスを行ってくれる。
≫ 浜松町大門レディースクリニック
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