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【Q&A】子宮筋腫とプラセンタ注射 ー 内出先生

専門医Q&A 女性の健康

【Q&A】子宮筋腫とプラセンタ注射 ー 内出先生

プラセンタ注射を始めて子宮筋腫が大きくなり、不正出血が続いています。セカンドオピニオンすべきか手術すべきか?内出医院の内出一郎先生にお答えいただきました。

2019.9.6

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相談者:いずみさん(47歳)



子宮筋腫とプラセンタ注射
約1年前にプラセンタ注射を受け始める。頻度はひと月に3回程度。注射を受ける前に検査すると2cmの筋腫が1つあるのが判明。プラセンタ注射開始から半年くらい経過後、酷い左側下腹部痛が起きる。婦人科受診するが原因不明。経膣超音波検査で筋腫の大きさは5cmに。それから更に半年後受診すると8cmに成長しているので大きな病院を紹介される(紹介元のクリニックでは手術を勧められる)。そちらで検査。がん検診は異常なし。左卵巣に腫れみられる。筋腫は8cm。手術はどちらでもいいとのこと。筋腫増大の原因はプラセンタと言われる。現在、ひと月ほど不正出血が続いておりセカンドオピニオンすべきか手術すべきか迷っているのでアドバイスをお願いしたい。




プラセンタ注射と子宮筋腫の関係性について




プラセンタ注射が原因で子宮筋腫の増大になったかどうかについては、「因果関係は不明」としか言えません。なぜなら、現在日本で医薬品として認定されているプラセンタ製剤はホルモン製剤には分類されておらず、メーカーの添付文書にも「本剤は、ヒト胎盤由来成分として、多種の微量成分を含有するが、特定の物質を有効成分として表記することは出来ない」と記載されているのみで、ホルモン活性について述べられていないためです。


現在、閉経状態でない状況と思われますので、エストロゲン(女性ホルモン)は普通に分泌されていると思います。子宮筋腫はエストロゲン依存性疾患ですので、エストロゲンが体内に存在する限りは成長し続けることになります。よって、プラセンタ製剤を投与されていなくても、間違いなく増大傾向にはあったことが想定されます。


47歳というご年齢から想像しても、まだ自然閉経に至るには時間がかかると思われます。このまま閉経を待つことで、子宮筋腫の増大がなくなることを期待するには難しい状況と考えます。閉経年齢は、早いと50歳を待たずになることもありますが、長い方ですと60歳ちかくまで閉経しないこともあります。


 


子宮筋腫の種類


子宮筋腫とは、子宮を構成する平滑筋という組織から発生する良性の腫瘍です。女性であれば9割の方が持っている、という報告もあるほど一般的な疾患です。多くは無症状で経過します。症状が出た場合は、さまざまな症状が出てきます。


発生する場所によって、筋層内筋腫、漿膜化筋腫、粘膜下筋腫と分類され、発生頻度は書いた順に高いです。症状は粘膜下筋腫の場合、小さくても出血、過多月経といった症状がでやすく、漿膜化筋腫はそれなりに大きくなると圧迫症状として膀胱圧迫による頻尿、腸の圧迫による便秘、かなりの大きさになるとおなかが膨れて触れる、といった症状になります。筋層内筋腫は、小さいうちはあまり症状がありませんが、大きくなってくるとその両方の症状が出てきます。


 


子宮筋腫の治療法は?


子宮筋腫は良性疾患ですので、基本的に経過観察でも大丈夫とは言えますが、症状によっては健康に影響を及ぼすことがあり得ます。


子宮筋腫に対する治療は、エストロゲン依存性疾患であることと、月経随伴症状があることから、そこに対抗するように戦略をたてます。


エストロゲンを断てば、腫瘍増大はなくなります。よって、これをなくすという治療方法があります。人工的に閉経にもっていく治療方法で、偽閉経療法と言います。月1回の注射か1日2-3回の点鼻薬の使用、または1日1回の内服薬の使用を6カ月やって4カ月休む、を繰り返して本物の閉経が来るのを待つという方法ですが……なかなか閉経まで時間がかかることがあります。また、かなり強くエストロゲンを下げるため、更年期症状が必発であることと、低エストロゲン持続による骨密度の低下などの問題があります。薬剤費がかなり高額であり、月当たり1万円ちかい負担金が必要になります。
偽閉経療法を行えば月経も停止しますので、月経随伴症状も消失することになります。


月経を停止させるという目的だけであれば、ピルを使った月経停止も可能なのですが、年齢的に血栓症リスクがあることなどを考えると積極的には推奨できません。


根本的治療を目指すということでしたら、確実な方法は永久に子宮がなくなることを目指すことになりますので、子宮の摘出、または子宮体部のみ摘出する亜全摘になります。ご年齢的に子宮筋腫だけを取り除く核出術は、再発の問題、今後の子宮からの悪性腫瘍発生のリスクなどを考えるとお勧めできません。


 


子宮筋腫の手術以外の方法は?


手術以外の方法として、子宮動脈塞栓術、MRIガイド下収束超音波法(FUS)というものがあります。筋腫部位によって、施行可否が決まること、多発筋腫にはあまり向かないことなど、適応にかなり制限があり、現在保険診療適応もございません。また、MRIの中に数時間うつぶせで拘束され、動けないという治療でもあります。


子宮動脈塞栓術(UAE)という方法もありますが、大きな筋腫がある場合は適応外となることが多いのと、子宮を体内で「壊死」させる治療方法のため、感染のリスクやかなり痛みが強く出るなどというデメリットもあります。これも保険診療の適応外です。


UAEもFUSいずれも、学術的な観点からも「手術療法を凌駕する治療方法ではない」とされていますので、もしこれらの治療法を選択される際には、かなり慎重な検討が必要と言えます。


 


不正出血について


不正性器出血だけの問題であれば、子宮内膜だけを破壊するマイクロウェーブ子宮内膜破壊術(MEA)という方法もありますが、これは比較的短期間に子宮内膜が再生し症状が再燃しやすいこと、子宮筋腫の治療方法ではないこと、といったことからかなり限定的な治療法と言えます。


 


まとめ


いずれの方法どれをとっても一長一短、どれも正解であり、同時に不本意な結末になれば選択が間違っていたということになりますので、十分に医療機関とお話をして、ご自身で十分納得された方針を選択するのがベスト、ということになります。


簡単に「手術するのとしないのとでは、どちらがいいのか?」という話だけに限定してしまうと、すでに子宮筋腫があることは間違いないので、これを排除するためには手術以外には方法がないので、「手術して子宮摘出する」が正解になってしまいます。


最後に「経過観察」という選択肢は、一見合併症や副作用がないように思われますが、実は何もしていないが故に「病状が進行する、悪化する」という副作用があることを認識していただければと思います。


 



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お話を伺った先生のご紹介

内出一郎 先生(内出医院 院長)



医学博士。東邦大学大学院卒業。東邦大学医学部産科婦人科学講座にて研鑽。東邦大学医療センター大森病院産婦人科、森赤十字病院婦人科、東京腎泌尿器センター大和病院産婦人科部長を経て、平成25年、内出医院の2代目院長を継承。「頑張らない治療」をすすめ、「押しつけの治療をしない」という治療方針で多くの患者さんの診療にあたっている。腹腔鏡手術の黎明期から手術技術の確立をめざし、研究を積んできたキャリアがあり、手術に関しては適格なアドバイスをしてくれる。
子宮内膜症、腹腔鏡手術に関する論文、学会発表は多数。平成16年、カナダ・モントリオールにて開催された第18回世界不妊学会でBest Poster Award受賞。
日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会評議員、日本内視鏡外科学会評議員、等所属。 


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