精液検査|不妊検査
コラム 不妊治療
不妊症の原因を見つけ、治療につなげるには、まず体の状態を把握することが不可欠です。そのために、初診から約1カ月をかけて、一般的な検査をします。同じ血液検査でも目的が異なる場合もありますから、何のための検査なのかを理解しておくと、治療への理解も深まるでしょう。また、一般的な検査の後、必要があれば精密検査をする場合もあります。
英ウイメンズクリニック 塩谷 雅英先生
島根医科大学卒業。卒業と同時に京都大学産婦人科に入局。体外受精チームに所属し、不妊治療の臨床の傍ら研究を継続する。1994年から神戸市立中央市民病院に勤務し、顕微授精による赤ちゃん誕生に貢献。2000年3月、英ウィメンズクリニックを開院。
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精液検査
男性因子の不妊の多さを考えると必要
結婚後、特別に避妊をしていないにもかかわらず、2年経っても妊娠に至らない場合、不妊症と診断されます。最近は1年間という考えもあります。
WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊症は41%が女性のみ、24%が男性のみに原因があり、11%が原因不明です。つまり、男性側に不妊症の原因が見つかるカップルが、およそ48%となりますので、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが望ましいといえます。
一般的な精液検査は、3~5日間の禁欲の後、マスターベーションで精液を採取します。採取した精液を30分間放置して液化させた後、精液量、色調、粘稠性、精子濃度、運動率、奇形率などを調べます。検査方法には、病院で採取する方法と、自宅で専用ケースに直接採取し、持参していただく方法の2通りがあります。自宅で採取した精液は、女性の手でお持ちいただくと、男性に受診の必要がありません。この検査で問題がなければ、この後の検査をお受けいただく必要はありませんので、まずは精液検査から始めましょう。
精子は精巣の中で約3カ月間育まれて一人前になります。これは過去3カ月の体調が、精子の状態に影響を与えることを意味します。精液は体調や精神状態によりとても変動しやすいことを念頭に、検査は2~3回行うのが望ましいでしょう。
精子の状態でわかる自然妊娠の可能性
一般的な精液検査によってわかるのは、精子減少症、精子無力症、奇形精子症などで、いずれも自然妊娠の可能性が低くなります(下図参照)。精子減少症とは1mL中の精子の数が2000万個以下である状態をいいます。さらに、500万個以下になると、自然妊娠の可能性は極端に低くなります。精子無力症は運動している精子の割合が50%未満の状態、奇形精子症は正常な形をした精子が30%に満たない状態をいいます。
精液SQA検査
精子の直線運動のスピードに着目
男性の初期検査は通常の場合、精液量や運動率を調べる精液検査だけですが、さらに詳しい検査が必要な場合があります。当院では全自動精液解析装置(SQA-V)を導入しており、初めての精液検査の際に
はSQA-Vによる精密検査をおすすめしています。SQA-Vは精子の直線運動のスピードに着目し、精子の受精能力を客観的に数値化することができる装置です。
出典:Hanabusa with Jineko.net